労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  宇佐見産業 
事件番号  中労委平成24年(不再)第16号 
再審査申立人  宇佐見産業株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  日本労働評議会(「組合」) 
命令年月日  平成27年2月18日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、① 未払割増賃金の支払要求等に関する第1回団交申入れ、今後の早出出勤に伴う労働時間の取扱い等に関する第2回団交申入れ及び冬期一時金に関する第3回団交申入れ (以上併せて「本件団交申入れ」)に応じなかったこと、② 組合の早出・休日出勤拒否行動終了後の平成22年4月12日以降、組合員8名に対して早出・休日出勤及び深夜業務をさせず又は減らしたこと(以下「本件早出出勤等外し」)、③ 組合員9名に対して上記①の未払割増賃金を支払わなかったこと、④ 退職した組合員1名に対して退職金を支払わなかったことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、① 本件団交応諾(下記②に係る議題を除く。)、② 組合員8名に対する本件早出出勤等外しがなかったものとしての取扱い及びバックペイ、 ③ 上記①及び②に係る文書交付及び掲示を命じ、その余の申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令の概要  1 主文の要旨
初審命令主文を次のとおり変更する。
 (1) 本件救済申立てのうち、組合員Aに対する本件早出出勤等外しに係
   る申立てを却下する。
 (2) 組合員7名に対する本件早出出勤等外しがなかったものとしての取
   扱い及びバックペイ。
 (3) 本件団交申入れの拒否及び前記(2)に係る文書手交。
 (4) その余の本件救済申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 会社が本件団交申入れに応じなかったことは、労組法7条2号の不当労働行為に当たるか。
 (1) 本件団交申入れは、組合の組合員の労働条件その他の待遇に関する事項を議題とするものであることは明らかであるから、 会社は、 これに対して誠実に交渉すべき義務を負う。
 しかるに、会社は、組合が会社に対し当該要求を行い、団体交渉を申し入れることができるとする事実的及び法的根拠を明らかにするよう求めるのみで、結局、組合との間で団体交渉を全く開催していない。この点、会社は、本件団交申入れは、組合東京都本部(以下「組合都本部」)及び同宇佐見産業分会(以下 「分会」。 組合都本部と併せて 「組合都本部ら」)からなされたものであるところ、 組合都本部らは、 労働組合としての実体をもたず労組法上の労働組合とはいえないから、会社には本件団交申入れに応ずる義務はないなどと主張する。組合都本部らは、それ自体独立性を有せず、組合の内部組織にすぎないものであり、本件団交申入れにあっては、組合自体が、その地区担当の内部組織である組合都本部らを通じて申し入れたものであるとみるのが相当であり、組合は労組法上の労働組合としての実体を有していることが認められるから、会社の上記主張は失当である。
 (2) 会社は、本件団交申入れを拒否した理由として、会社が組合都本部らの法適合性に疑義を抱いたことに対して、組合都本部らが誠実かつ的確に釈明しなかったことや、組合の組合員の言動が労働組合活動としての正当な範囲を逸脱していたことを挙げる。
  しかし、組合は、本件団交申入れに際して、分会所属の組合員の氏名及び分会役職を明らかにした上で、同組合員は組合に加入しており、会社と組合の組合員との間に雇用関係があることは明らかであることを説明し、また、いわゆる合同労組のことや、組合と組合都本部らとの関係等組合の実体についても説明しており、さらに会社が組合に対して釈明を求めることの理由は乏しい。また、本社前や社長宅玄関前での組合の情宣活動等において、組合員の言動の中にはおよそ行き過ぎがなかったとまではいえないとしても、これらの言動は、会社が、組合員に対して、後記2のとおり本件早出出勤等外しを行うようになった後の言動であり、 会社による団交拒否等の対応に誘発された行為であるということができる。このような言動に至る経緯や内容、態様等に照らせば、当該言動をもって、直ちに団交が開催できないほどのものであったとは認められない。
 (3) 以上のことから、会社が本件団交申入れに応じなかったことには正当な理由がなく、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。
2 組合員7名に対する本件早出出勤等外しは、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるか。
 (1) 組合は、当審において、組合員8名に対する本件早出出勤等外しに係る救済申立てのうち、 組合員Aに係る部分を維持する意思を放棄した。 よって、同部分に係る救済申立ては、労働委員会規則33条1項7号に基づき却下する。
 (2) 会社は、組合を殊更に無視し、理由のいかんを問わず、組合の求める本件団交申入れに係る団体交渉を一切拒んだ。 そして、会社が本件第1回団交申入れに応じないことに対し、組合は、抗議行動として平成22年4月6日から早出・休日出勤拒否行動を開始したものであるところ、 同拒否行動によっても、団交の実現には至らず、同月11日をもって同拒否行動を終了させると、会社は、同月12日以降組合員7名の退職時まで(ただし、早出出勤は同年7月4日まで)の間、従前の取扱いとは一転して同7名に対して、早出・休日出勤及び深夜業務をどれも命じなくなった。
 会社は、汚水雑排水処理等を業とし、その業務を早朝、深夜及び休日に多く行っていたところ、作業員であった同7名は、早出・休日出勤及び深夜業務を命じられなくなり、休日出勤手当や徹夜作業手当等が支給されないという経済上の不利益を被ったほか、その間に、社内で待機させられたり車輌の清掃等本来の現場作業とは異なる業務を命じられたりすることもあったというのであるから、従前どおりの業務に従事できないという精神上の不利益も被ったものと認められる。
 上述した本件団交申入れの拒否から本件早出出勤等外しに至る一連の会社の対応、及び会社が同7名に対して早出・休日出勤及び深夜業務を命じなかったことに合理的な理由が認められないことからすると、会社は、組合の存在を嫌い、労働条件の改善等を求める組合及び同7名の組合活動を嫌悪し、同7名に不利益を与えることを企図して、本件早出出勤等外しを行ったものと認めるのが相当であり、かかる行為は、労組法7条1号の不当労働行為に該当する。
 このように会社が組合の組合員に対して不利益な取扱いをすることは、他の従業員に対しても、組合に加入することにより不利益な取扱いがなされるおそれを感じさせ、 組合への加入を抑制することになり、また、同組合員に対しては、同組合員であることないし同組合員の組合活動を抑制ないしけん制するものとなることは明らかである。したがって、本件早出出勤等外しは、組合の運営に対する支配介入であると認められ、労組法7条3号の不当労働行為にも該当する。
3 救済方法
本件団交申入れに係る議題のうち、未払割増賃金の支払要求については、本件再審査結審後、組合員9名による同未払割増賃金請求訴訟で和解が成立し、団交応諾を命じる必要性はないが、現在、会社には組合の組合員である従業員は存在しないものの、今後、会社従業員が組合に加入する可能性を否定できないから、これに対する救済方法としては、文書手交を命じるのが相当である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成22年(不)第57号 一部救済 平成24年2月7日
 
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