労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  宇佐見産業 
事件番号  都労委平成22年(不)第57号 
申立人  日本労働評議会 
被申立人  宇佐見産業株式会社 
命令年月日  平成24年2月7日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社の従業員ら8名は、平成22年3月23日、申立人組合の顧問弁護士らとともに会社に赴き、分会の結成を通告し、団交を申し入れた。会社は、その翌日、団交を行う旨回答したものの、その後団交に応じようとせず、組合は会社の対応に抗議して、早出出勤及び休日出勤を拒否する争議行為を行った。本件は、会社が①組合との団交に応じなかったこと、②組合の争議行為終了後も組合員らを早出出勤等に就かせていない又は就かせる業務を減らしていることが不当労働行為に該当するか否かが争われた事案である。
 東京都労委は、会社に対し、①組合員らに対する残業手当等の支払い、②誠実団交応諾、③文書の交付・掲示及び④履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人宇佐美産業株式会社は、申立人日本労働評議会の組合員X2、同X3、同X4、同X5、同X6、同X7、同X8及び同X9に対し、平成22年4月12日以降各組合員が退職する日までの間の各組合員の早出出勤、休日出勤及び深夜業務の取扱いについて、組合が争議を開始する以前である4月5日までと同様であったものとして、残業手当、徹夜作業手当、深夜残業手当及び休日出勤手当を支払わなければならない。
2 被申立人会社は、申立人組合が申し入れた団体交渉について、前項に係る事項を除き、速やかに、かつ、誠実に応じなければならない。
3 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合に交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
年 月 日
  日本労働評議会
  中央執行委員長 X1 殿
宇佐美産業株式会社
代表取締役 Y1
  当社が、(1)貴組合が申し入れた団体交渉に応じなかったこと、(2)貴組合の組合員らが、争議行為により早出出勤、休日出勤及び深夜業務を拒否しているとして、平成22年4月12日以降これら業務に就かせず、経済的困窮に至らしめたことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
  今後、このような行為を繰り返さないよう留意します。
  (注: 年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)

4 被申立人会社は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
5 その余の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 被申立人会社が団交に応じていないことについて
 会社は、申立人組合が法適合組合なのか疑問が生じたので、組合に対し、会社に団交を申し入れることができるとする事実的及び法的根拠について釈明を求めたにもかかわらず、組合からは誠実な回答がなかったと主張する。この点について、組合は、会社と組合員との間に雇用関係があることは「組合結成通知書」により、また、組合については平成22年4月8日付け「通知書」において合同労組などについて説明した時点で明確になっているはずであるとしている。
 本件において、上記のような会社の釈明要求には、組合の回答がなければ団交の開催に支障が生ずるような特段の事情は認められず、また、組合の法適合性に何らかの具体的疑義を有していたのであれば団交を開催した上で質せばよいことである。
 会社はまた、同年3月27日以降、組合員らが連日会社に押しかけ、社長と専務を取り囲み大声で恫喝するなど不当違法な行為を繰り返したため、その度に書面による謝罪等を求めたが、組合はこれに応じず、組合員らの言動によって労使間の信頼関係が破壊された旨主張する。
 しかし、団交が開催されないまま時間が経過するに従い、組合員らがいらだちを深め、言動が激しくなっていった面を否定することはできないものの、少なくとも会社が文書による謝罪等を求めるのはいささか過剰な反応であり、団交を拒否する正当な理由と評価することはできない。
 以上のとおりであるから、会社が団交に応じていないことは正当な理由のない団交拒否に該当する。
2 組合員らを早出出勤、休日出勤及び深夜業務に従事させないことについて
 22年4月12日以降、会社は、組合員らに早出出勤等を行わせることがなくなったが、その分の業務について同業他社への外注や事務所の従業員(非組合員)らに行わせることで対応していたことから、組合員らと事務所の従業員らの収入には相当程度の格差が生じていたとみることができる。
 会社は、組合の「争議終了通知」では、「日曜日、国民の祝日は、(中略)当然休みとする」と記載されており、深夜業務については何の記載もない以上、組合は引き続き休日出勤と深夜業務を拒否していると主張する。しかし、上記の記載は、その日に出勤すれば休日出勤として扱われるべきことを通知したにすぎず、休日出勤を拒否したものではないと認められる。
 会社は、このような文理に外れた解釈をした上、遅くとも4月19日には会社の解釈と組合のそれとが異なっていることを知りながら、それについて組合に質そうともせず、他社への外注が一旦は終了する4月20日を過ぎてもなお、組合員に早出出勤等を命じなかったものといえる。
 次に、会社の組合に対する姿勢についてみると、前記1のとおり、団交に一度も応じていないこと等からみて、組合を殊更に無視、否認し、組合員を嫌悪して差別し、組合員に対して殊更厳しい対応をとる会社の姿勢がうかがわれる。
 以上のことから、会社は組合及び組合員の存在を嫌悪し、組合員に対して経済的な不利益を与えることによって、組合の弱体化を図ったとみることができる。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成24年(不再)第16号 一部変更 平成27年2月18日
 
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