労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日東興産 
事件番号  神労委平成24年(不)第35号 
申立人  神奈川県自動車教習所労働組合鎌倉自動車学校支部、神奈川県自動車教習所労働組合、X2(個人) 
被申立人  日東興産株式会社 
命令年月日  平成27年1月14日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①同社の教習指導員である組合員X2に対し、同僚へのいじめについての事情聴取を行った上、退職を強要したこと、②同人が上記の事情聴取後、適応障害等を発病し、休職していた際、申立人組合(支部)が平成23年12月24日から復職させる旨伝えた後においても、24年2月16日まで復職させなかったこと、③復職後、同人を監視下に置いた上、同年6月末まで教習指導員の業務を行わせなかったこと等、及び④同人に対する退職強要に係る団交において、決定権限を持つ会社の代表取締役が欠席し、その後、出席した時にそれまでの交渉内容を一方的に破棄したこと、⑤会社が団交で合意に至った事項を書面にすると約束しておきながら、後日、当該事項を内容とする労働協約の締結を拒否したこと等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 神奈川県労委は会社に対し、団交において協議の内容を一方的に破棄したり、団交における約束を反故にしたりすることなく誠実に団交に応じること及び文書手交を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、団体交渉において協議の内容を一方的に破棄したり、団体交渉における約束を反故にしたりすることなく、誠実に団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、本命令受領後、速やかに下記の文書を申立人神奈川県自動車教習所労働組合鎌倉自動車学校支部に手交しなければならない。
記(省略)
3 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合員X2に対する事情聴取について
 認定した事実によれば、平成23年10月20日、被申立人会社の管理者Y2がX2に対して3時間程度にわたり事情聴取を行い、その中でX2が会社を退職する旨述べているが、この事情聴取は同人の過去の素行を踏まえ、会社の指導員AがX2によるいじめが原因で退職したのではないかとの疑いの下に行われたものとみることが相当である。また、その翌日、会社の社長Y1らがX2に対して事情聴取を行ったが、これは過去において同人に問題のある行動がみられたことから、上記の退職の申し出について意思確認をしたものとみることが相当である。そして、これらの事情聴取は、その中でX2に対する退職強要があったか否かにかかわらず、その目的からして同人が組合員であることを嫌悪する趣旨の下になされたとまで認定することはできない。
 以上のとおり、X2が退職を申し出るに当たり、会社の同人への対応について組合員であることを嫌悪する趣旨の対応があったとまではいえないことから、不当労働行為は成立しない。
2 休職後、完治したX2の復職を認めなかったことについて
 X2は、平成23年12月21日付けの医師の診断書ではまだ復帰できない状態とされ、その後も復職可能である旨の診断書が発行され、会社に提出されることはなかった。しかし、会社は24年1月24日の団交でX2の復職を認め、同年2月16日に復職させている。
 以上のとおり、会社はX2の復職について相応の対応をしており、組合員であることを理由に復職を引き延ばしたとはいえず、会社の取扱いは不当労働行為に該当しない。
3 X2の復職後も一定の期間、技能教習の業務をさせなかったこと等について
 会社がX2の復職後も同人の体調やストレスを考慮し、まず教習指導員と比べて教習生と直接かかわることの少ない事務を行わせ、次いで学科教習を行わせ、その後技能教習を行わせたことや、平成24年5月頃まで時間外勤務を行わせなかったことには相当の理由があるといえる。したがって、復職後も一定の期間、技能教習をさせなかったことは不当労働行為に該当しない。
 また、X2が休職後、教習指導員として技能教習に従事するまでの間、乗車手当等が支払われていないが、これは同人が組合員であることを理由とする不利益取扱いとはいえないから、不当労働行為に該当しない。
4 Y1が団交において、従前の交渉内容を一方的に破棄したことについて
 平成24年6月5日の団交においてY1は、それまで組合らと会社代理人弁護士との間で調整を重ねてきた合意書案の1項目に異を唱える発言をした上、合意文書の取り交わしを拒否した。X2の処遇等について組合らとの合意を目指して団交への対応や合意文書の調整等を会社代理人に委ねたはずのY1がそれまで協議が重ねられてきた合意文書の取り交わしを組合らの抗議を無視して拒否したことは、会社として組合らとの協議の内容を一方的に破棄したものといえ、団交について極めて不誠実な対応であったといわざるを得ない。
5 団交での合意事項を内容とする労働協約の締結を拒否したことについて
 会社は、平成24年12月19日の団交において組合の要求書のうち一部の項目について合意内容を文書とすることに合意したが、25年3月19日の団交では文書とすることはできないと明言している。そして、組合らが会社の懸念を踏まえて対案を提示し、文書として取り交わした際の利点を説明しているにもかかわらず、会社代理人弁護士が、文書を残すこと自体に問題がある、労働協約ということになると困る旨の回答を繰り返すばかりでは、合意内容を文書として取り交わすことを拒否する理由に乏しいといわざるを得ない。このような会社代理人弁護士の対応は、合意内容を文書で締結するとの約束を一方的に反故にしたものであって、団交における会社の対応として極めて不誠実であったといえる。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成27年(不再)第5号 棄却 平成29年7月5日
 
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