労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  江戸川学園 
事件番号  中労委平成24年(不再)第27号 
再審査申立人  東京私立学校教職員組合連合(「東京私教連」) 
再審査申立人  江戸川大学総合福祉専門学校教職員組合(「組合」) 
再審査申立人  個人3名(「X1」、「X2」、「X3」) 
再審査被申立人  学校法人江戸川学園(「学園」) 
命令年月日  平成27年1月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 学園が経営していた専門学校において、① 役職定年制の導入によるX1の役職解任と他科への異動、② 組合員Aの雇止め、③ 養成科通学課程の廃止、④ 役職定年制の実施及びAの雇用終了を議題とする団体交渉における学園の対応、⑤ X2の雇止め、⑥ X2の雇用継続問題を議題とする団体交渉における学園の対応、⑦ X1に対する実質的な校務分掌外し、⑧ X3の他科への異動、⑨ X1の大学における担当科目の閉講、⑩ X1及びX3に係る校務分掌等を議題とする団体交渉における学園の対応、がそれぞれ不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件。
2 初審東京都労働委員会は、上記②については労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に、 同④のうちA組合員の出席する団体交渉を拒否した部分については同条第2号及び第3号の不当労働行為に、同⑥及び同⑩については同条第2号の不当労働行為にそれぞれ該当するものの、その余についてはいずれも不当労働行為に該当しない旨判断して命令書を交付したところ、組合らは、これを不服として再審査を申し立てた。
3 なお、学園は、本件初審命令に対して再審査を申し立てなかったため、再審査の対象は、上記①、③、⑤及び⑦から⑨までの各事実である。  
命令主文  本件各再審査申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 X1の役職解任及び人事異動の実施について
 (1) 専門学校の19年度の帰属収支差額が前年度に比べて約2億円もマイナスとなり、人件費の改善が急務であったという当時の状況に鑑みると、若手の登用と教員体制の刷新、人件費の削減を図るための改革の一環として、学園が21年度の役職定年制の実施を急いだとしても、やむを得なかったものとみるのが相当であり、 専門学校の収支が悪化したことは口実であるなどと認めることはできない。そして、役職定年制の実施により、役職を解かれた非組合員も複数いること、 21年度には組合員が主任となっていること等を考慮すると、X1の役職解任は、組合員を狙い撃ちしたものとは認められず、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為には当たらない。
 (2) また、20年11月に学園の教員らが、校長に、X1からパワーハラスメントを受けている旨等を訴えた事実、 21年1月、新規課程設置をめぐって、X1と同制度導入に反対する教員との間で意見が対立し、険悪な雰囲気となった事実は認められ、そのことは、X1本人も自認している。そうすると、学園が、X1の職場での協調性の欠如や、当時X1の所属していた養成科内における教員同士のあつれき、 対立の解消を理由に、役職定年制の実施に伴いX1を社会福祉科へ異動させたとみる余地は十分あり得、そうすると、X1の異動は、組合の中心人物である同人の影響力を減殺し、組合活動を萎縮させることを理由とするものであると認めることができる証拠はないから、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為には当たらない。
2 養成科通学課程の廃止について(争点②)
 養成科通学課程の廃止は、専門学校の経営状態悪化を受け、23年度からの同課程の学生募集停止の検討等を内容とする21年2月の事業計画案について、 20年度帰属収支差額の大幅な赤字という事態に基づき、学園の経営会議において、養成科通学課程の学生募集停止を22年度からとすることを決定し、本件救済申立後である21年7月1日に全教職員に周知し、同年9月9日に正式に決定したものである。 廃止決定の時期等を鑑みれば、やや性急な感があるものの、養成科通学課程の廃止決定がこの時期となったのは、20年度の赤字決算が確定し、21年度についても赤字予算が組まれたからであって、これを受けて、経営会議、 理事会等の手続が履まれていることも考慮すると、学園による同課程の廃止決定が不合理なものということはできず、救済申立てに対する報復であるとか、X1に対する不当労働行為意思や組合に対する支配介入意思に基づくものとは認められないから、労組法第7条第1号、第3号及び第4号の不当労働行為には当たらない。
3 X2の雇止めについて(争点③)
 X2の雇止めは、「定年後再雇用者の基準に関する労使協定」に基づくものであり、非組合員もX2と同時に雇止めとされており、再雇用年齢を超えて雇用された者がいないこと等からすると、継続して雇用等されることについて合理的期待があったと認めることはできず、専門学校の経営状態悪化を受けた教員若返りや人件費削減等の一連の改革の一環で行われたものとみるのが相当であるから、労組法第7条第1号、 第3号及び第4号の不当労働行為には当たらない。
4 X1に対する校務分掌数の削減及びX3の人事異動の実施について(争点④)
 X1の22年度校務分掌数の削減は、同人と他教員らの対立状態の解消や職場秩序の維持を目的としたものと解する余地が十分にあり、X3の人事異動は、同人が法定専任教員の資格を有さなかったことから、教員配置の適正化を目的に行われたものであり、X3に通常を超える経済上・職務上の不利益が生じたとまで認められず、いずれも組合活動等を理由として行われたものとは認められないから、それぞれ、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為には当たらない。
5 X1の担当科目の閉講について(争点⑤)
 X1の大学における担当科目の閉講が、十分な手続きを経ていないとか、合理的理由がないなどと認めることはできず、したがって、学園の不当労働行為意思や支配介入意思を認めることはできないから、閉講は労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為には当たらない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成21年(不)第41号[第1事件]
東京都労委平成21年(不)第110号[第2事件]
東京都労委平成22年(不)第52号[第3事件]
棄却 平成24年4月17日
 
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