労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪産業大学 
事件番号  中労委平成25年(不再)第8、9号 
再審査申立人  [第8号]:使用者側:学校法人大阪産業大学(法人) 
再審査申立人  [第9号]:労働者側:大阪教育合同労働組合(組合) 
命令年月日  平成26年12月3日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、① 法人が、客員准教授であった組合大阪産業大学支部のA1支部長(「A1支部長」)に、同人が担当することとなっていた後期授業を行わせないとし、同人に、自宅で待機するよう命じたこと、② 法人が、A1支部長との有期雇用契約を解除したこと等が不当労働行為であるとして、大阪府労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、上記②については不利益取扱い及び報復的不利益取扱いに当たるなどとして、法人に対し、A1支部長の有期雇用契約の解除がなかったものとして取り扱うとともに、この契約解除がなければ得られたであろう賃金相当額と既に支払った額との差額を支払うこと及び文書手交等を命じ、その余の申立ては棄却する旨の初審命令書を交付したところ、法人と組合は、これを不服として、それぞれ再審査を申し立てたものである。  
命令主文  1 初審命令主文を、次のとおり変更する。
 (1) 学校法人大阪産業大学は、大阪教育合同労働組合が同大学に所属する組合員の労働条件ないし待遇に関する団体交渉を申し入れた場合、その議題は組合員の労働条件ないし待遇に関するものには当たらないとして拒否してはならず、また、当該議題について適切に対応することができる者を出席させなければならない。
 (2) 学校法人大阪産業大学は、大阪教育合同労働組合に下記の文書を速やかに手交しなければならない。

大阪教育合同労働組合
執行委員長A様
学校法人大阪産業大学
理事長B  印 

 当法人が行った下記の行為は、中央労働委員会において労働組合法第7条第2号の不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
① 貴組合員に平成22年度の後期授業を行わせず、自宅待機を命じ、業務内容報告書の提出を指示したことに関して、貴組合が平成22年9月30日に申し入れた団体交渉に応じなかったこと。
② 平成23年1月18日に行われた団体交渉において誠実に対応しなかったこと。
 (3) その余の本件救済申立てを棄却する。
2 その余の本件各再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 法人が、A1支部長に、後期授業を行わせないこととし、自宅待機を命じたことは、同人が組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるか、また、組合の運営に対する支配介入に当たるか。
 (1) 法人は、A1支部長の組合加入の3か月以上前から、同人に係る「経歴詐称」に疑念を抱き、それがさらに深まって、引き続き懲戒委員会や調査委員会が設置・開催されたことに鑑みると、法人は、少なくとも、平成22年7月中旬以降、A1支部長の「経歴詐称」について重大な間題として取り扱ってきており、これらの委員会の設置・開催、経営学部教授会での後期授業を行わせないこととする旨の決議との手順を踏み、慎重を期して対応を検討していたころがうかがえる。これらの経過は、A1支部長の組合加入・支部結成の動きと関わりなく進められてきたものである。
 (2) 法人がA1支部長に自宅待機を命じたのは、A1支部長が、組合加入等の事実を法人に通知した翌日の平成22年9月16日のことであったが、① A1支部長に後期授業を行わせないこととし、 自宅待機を命ずることが実質的に決定されたのは、 同月14日に開催された第5回経営学部教授会の場であり、その翌日の同月15日に組合がA1支部長の組合加入を通知していること、② 同月14日の経営学部教授会において、A1支部長及びA2組合員に後期授業を行わせない旨が決議され、同月17日、法人は、A1支部長と同時に、当時いまだ非組合員であったA2組合員も自宅待機を命ぜられていること、③ 法人が、A1支部長が組合に加入又は支部を結成することを事前に察知していたことをうかがわせるような事情は認められないことからすると、法人が、A1支部長に自宅待機命令を行った経過に不自然なところはなく、同自宅待機命令は、A1支部長の組合加入及び支部結成を契機として行われたものではないと認められる。
 (3) したがって、法人のこれらの行為は、同人が組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たらず、また、組合の運営に対する支配介入に当たらないと判断する。
2 法人がA1支部長との有期雇用契約を解除したことは、同人が労働組合の正当な行為をしたことを理由として行われた不利益取扱いに当たるか。 また、大阪府労委に不当労働行為救済申立てを行ったことを理由として行われた不利益取扱いに当たるか。
 (1) A1支部長の採用には、当時経営学部長であったA2組合員が相当関与していたことが認められ、法人は、A1支部長の組合加入の通知がある3か月以上も前から同人に係る「経歴詐称」について深い疑念を抱き、重大な間題として取り扱っており、懲戒委員会や調査委員会の設置・開催、経営学部教授会での後期授業を行わせないとする踏み込んだ決議を行うなど、A1支部長の組合への加入の動きより以前にこれとは関わりなく、慎重に手続きを踏みながら検討を進めていたことがうかがえる。
 (2) 法人の対応に比してA1支部長は、同人作成の「履歴書」中の「C大学卒業」 との記載に、法人が相当の疑義を抱いていたことは十分に承知していたはずであるのに、この疑義を晴らすべく、同大学の卒業証明書を提出するなどの積極的な対応を一切していない。
 高等教育を行う大学の教員においては、その学識、指導能力を推し量る要素としての学歴、経歴が重要視されることはもとより、本件においても、A1支部長が卒業したとするC大学(インターナショナルマーケティング専攻) とアパレル産業コースとの間には、経営等に関する知見などについて関連性がみられ、同大学を卒業したか否かは法人がA1支部長を採用したり、 その雇用を継続したりする判断においてすこぶる重要な事項であったことがうかがわれる。
 それにもかかわらず、A1支部長が、上記疑義を積極的に晴らそうとはせず、法人からの再三の呼びかけに応じて弁明することも一切なかったため、「C大学卒業」 との記載の正しさを最終的に確認することができなかったのであるから、法人が、同人に経歴詐称があったと判断し、その有期雇用契約の期間満了を待たずに解除するという判断をしたのは、無理ならぬ選択であったと考えられ、これが不相当であったとはいい難い。
 また、報道機関が、平成22年11月3日付けで、A2組合員と教員との確執について報じる状況の中、入学試験等を間近に控えた法人としては、受験生に与える影響や学生等大学関係者に生じる混乱を未然に回避するための緊急の対応を迫られていたと考えられる。
 (3) 以上のとおりであるから、法人が、同人に係る有期雇用契約の解除という重大な措置をとるに至ったことも不自然ではなく、組合のストライキ等の活動が影響したものであったとは認められない。
 したがって、法人がA1支部長に係る有期雇用契約を解除したことは不相当な判断であったとはいえず、これが、同人が労働組合の正当な行為をしたが故に行われた不利益取扱いに当たると認めることはできない。 また、これが、大阪府労委に不当労働行為救済申立てを行ったことを理由として行われた不利益取扱いに当たると認めることもできない。
 よって、この点について、初審命令が不当労働行為に当たると判断し、有期雇用契約の解除がなかったものとして取り扱うことなどを命じた点については、取り消すこととする。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成22年(不)第62号・23年(不)第6号 一救 平成25年1月29日
 
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