労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成22年(不)第62号・23年(不)第6号  
事件番号  大阪府労委平成22年(不)第62号・23年(不)第6号  
申立人  X労働組合  
被申立人  学校法人Y  
命令年月日  平成25年1月29日  
命令区分  一部救済  
重要度   
事件概要   被申立人法人の教職員が申立人組合に加入し、支部を結成して団交を申し入れたところ、法人が①組合の支部長X2に対し、授業担当の職を解き、自宅待機を命じたこと、②組合と協議することなく、組合員X6らに対し業務内容報告書の提出を指示したこと、③上記①及び②についての団交を拒否したこと、④団交における合意事項について、協定書の締結を拒否したこと、⑤組合と協議することなく、組合員X4らに対し履歴書及び業績一覧の提出を求めたこと、並びに上記①から④に関して組合が当委員会に対し不当労働行為救済申立てを行い、また、組合が法人に対しX2の解職の撤回等を求めて同盟罷業を行ったところ、法人が⑥X2に対し、労働契約を解除したこと、⑦組合を揶揄する記事及び声明並びに組合員の名誉を毀損し人権を侵害する記事及び声明をホームページに掲載したこと、⑧組合が平成22年12月27日付けで申し入れた団交に誠実に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は法人に対し、1 上記③の団交に応じること、2 上記④の協定書を締結すること、3 X2に対し、上記⑥の労働契約の解除がなかったものとして取り扱うこと等、4 上記⑧の団交に誠実に応じること、5 文書手交を命じ、その他の申立てを棄却した。  
命令主文  1 被申立人は、申立人が平成22年9月30日に申し入れた組合員に対する授業担当の解職、自宅待機命令及び業務内容報告書の提出指示についての団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人との間において、申立人が平成22年10月4日に申し入れた協定書を締結しなければならない。
3 被申立人は、申立人の組合員X2に対し、平成22年12月22日付けで通知した労働契約の解除がなかったものとして取り扱うとともに、この契約解除がなければ得られたであろう賃金相当額と既に支払った額との差額を支払わなければならない。
4 被申立人は、申立人が平成22年12月27日付けで申し入れた団体交渉に誠実に応じなければならない。
5 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
   X労働組合
    執行委員長 X1 様
学校法人Y
理事長 Y1
   当法人が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、(1)については労働組合法第7条第2号に、(2)については同条第2号及び第3号に、(3)については同条第1号及び第4号に、(4)については同条第2号に、それぞれ該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
(1) 貴組合が平成22年9月30日に申し入れた貴組合員に対する授業担当の解職、自宅待機命令及び業務内容報告書の提出提示についての団体交渉に応じなかったこと。
(2) 貴組合が平成22年10月4日に申し入れた協定書の締結を拒否したこと。
(3) 貴組合員X2氏に対し、労働契約を解除したこと。
(4) 平成23年1月18日に行われた団体交渉において誠実に対応しなかったこと。
6 申立人のその他の申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 被申立人法人が組合の支部長X2に対し、授業担当の職を解いたこと等について
 法人は、X2が組合に加入した旨の通知より前に、同人の授業担当の解職を決定していたとみることができる。また、自宅待機を決定したのは、組合が当該通知をした日の翌日であるが、法人が組合員X3に対し自宅待機を命じたのは同人が組合に加入する前であったことから、法人は、その者が組合に加入しているかどうかとは関係なく、授業担当の職を解かれた者に対し、自宅待機を命じたとみることができる。これらのことからすると、法人の上記行為は、X2が組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるとはいえない。
2 組合員X6らに対し、業務内容報告書の提出を指示したことについて
 組合員の労働条件の変更について、団交事項とされていたとしても、労働条件の変更に係る事前協議約款を定めた労働協約が存するなどの特段の事情がない限り、法人が組合と事前に協議しなければならない義務はなく、また、当該指示は法人がX6らの組合加入を確知する前に行われたものであると認められるから、これが組合の弱体化を企図したものであるとはいえない。よって、当該指示は、組合に対する支配介入に当たるとはいえない。
3 X2の授業担当の解職等についての団交に係る対応について
 X2に対する授業担当の解職及び自宅待機命令並びにX6らに対する業務内容報告書の提出指示はいずれも義務的団交事項に当たるものと考えられるが、法人はこれらは団交事項に当たらない、組合と協議しない旨述べたことが認められ、組合と法人の間で実質的な交渉がなされたとみることはできない。したがって、上記の法人の対応は正当な理由のない団交拒否に当たる。
4 協定書の締結を拒否したことについて
 認定した事実によれば、平成22年9月30日の団交において、組合と法人との間に、組合員の労働条件の変更についての事前協議及び労組法をはじめとする労働諸法令の遵守に関する合意が成立していたといえる。また、法人がこの合意事項についての協定書の締結を拒否したことに合理的な理由があったとみることはできない。したがって、法人が当該協定書の締結を拒否したことは不誠実団交に当たる。
5 組合員X4らに対し、履歴書及び業績一覧の提出を求めたことについて
 前記2で述べたとおり、組合員の労働条件の変更については、特段の事情がない限り、法人が組合と事前に協議しなければならない義務はない。また、X4らに対する履歴書等の提出の求めは、法人が同人らの組合加入を確知する前に行われたものであると認められるから、これが組合の弱体化を企図したものであるとはいえず、組合に対する支配介入には当たらない。
6 X2に対する労働契約の解除について
 法人がX2との労働契約を解除した理由に関し、同人の経歴詐称問題については法人の業務遂行に重大な支障を与えたものか疑問が生じる余地があり、経費等の不正使用及び同棲問題については契約解除の事由として客観的合理性を認めることは困難である。また、解除の手続についても、組合との協議を行っていないことなどから、妥当性に欠けるところがみられる。そして、当該解除を決定した当時、前記1から4までの問題についての不当労働行為救済申立て及び同盟罷業に起因して、組合と法人との労使関係には緊張状態が高まり、対立状態にあったとみられることも併せ考えると、法人が当該労働契約を解除したことは、組合嫌悪及び上記救済申立てに対する報復的意図からなされたものといわざるを得ず、法人の不当労働行為意思を推認することができるのであって、同人が組合の正当な行為をしたが故に行われた不利益取扱いに当たるとともに、上記救済申立てを行ったことを理由として行われた不利益取扱いに当たる。
7 組合を揶揄する記事及び声明等をホームページに掲載したことについて
 法人が掲載した文書の表現について、組合が配布したビラに関する法人の見解やX2らに対する懲戒処分の内容等のほかに威嚇等の強制の要素が含まれていると認めることは困難であり、組合を揶揄するもの、あるいは組合の運営に影響を及ぼすものであるとまで認めることはできない。よって、当該文書の掲載は組合に対する支配介入には当たらない。
8 組合が平成22年12月27日に申し入れた団交に係る対応について
 組合がX2及びX3の解雇の撤回等を要求事項として上記の申入れを行い、23年1月18日に団交が開催されたところ、法人は、X2の契約解除理由の1つとする同棲問題について、契約解除理由になるかは答えられない旨回答したことが認められる。また、法人は、同人の経歴詐称問題に関し、同人から提出された履歴書を確認する旨及び経費等の不正使用に関し、旅行代理店からの請求書を確認する旨述べたことが認められるが、これらについて確認し、組合に回答したと認めるに足る疎明はない。このような法人の対応は誠実交渉義務を果たしたものと認めることはできない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成25年(不再)第8、9号 一部変更 平成26年12月3日
 
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