労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  日本郵便[人事異動] 
事件番号  中労委平成25年(不再)第50号 
再審査申立人  X(個人) 
再審査被申立人  日本郵便株式会社(「会社」) 
命令年月日  平成26年12月17日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 日本郵政グループ労働組合(以下「 J P労組」)A支部(以下「支部組合」)に所属するXは、平成22年4月頃から同労組を批判するビラ配布を行っており、 また、 Xらは、平成23年3月初旬頃、 同労組の労使一体という状況を変えることを目的に 「動労千葉を支援する会・全逓横浜」(以下「支援する会・全逓横浜」)を結成した。
 本件は、同年7月15日に、会社が、Xに対し、横浜市内のB1支店からB2支店への人事異動(以下「本件人事異動」) を命じたことが、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、Xが、神奈川県労委に救済を申し立てた事案である。
2 初審神奈川県労委は、 本件人事異動は不当労働行為には当たらないとして、 本件救済申立てを棄却したところ、 Xは、 これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 本件人事異動の目的と相当性
 (1) 会社は、それまでの社員の意識改革を目的とした「人事交流」に替え、平成13年頃から、会社組織の活性化等を目的として、必要に応じて人事異動を行うようになった。本件人事異動も、上記人事異動の目的の範囲内において組織の活性化等を行うことを目的として実施されたものであり、また、その対象者は、在局年数が比較的長い中堅社員とされ、上記目的に沿うものであったと認められる。
 (2) 本件人事異動は、Xにとって不慣れな担当区域への異動であったこと等から、Xが業務上等の負担を実際に被ったことは事実であるが、 Xは、 B 1支店において異動対象者となる中堅社員約80名の中で、在籍期間が35年と最も長かったのであるから、 Xを、会社組織の活性化等の観点から本件人事異動の対象にしたことが、特段不合理ということはできない。
 (3) Xが会社に提出した社員申告書によれば、Xは引き続きB1支店での勤務を希望していたことが認められる。 しかし、 同申告書には、異動を望まない具体的な事情等が記載されておらず、他に人事異動が困難であったことを認めるに足る具体的な事情もうかがわれないことからすると、会社が、本件人事異動に際し、 Xに関して特段考慮すべき事情は見当たらないと考えて、 本件人事異動を命じたとしても、 不当であるとはいえない。
 (4) 他の支店への人事異動にあっては、 異動に伴い異動者に業務上の負担は生じ得るが、 平成23年7月15日付けで実施された人事異動では、X以外にも3名がB1支店から他の支店への人事異動を命じられており、 Xのみがこうした負担を被ったわけではなかった上、Xの業務内容は、 本件人事異動の前後で基本的に変わるところはなかったのであるから、Xの被った負担が特に過大なものであったとは認められない。
 (5) 本件人事異動に伴い、 Xの通勤時間は片道20分程度延びたことは認められる。 しかし、会社は、片道約1時間30分までが通常の通動圏内とみて人事異動を行っており、23年度に実施された人事異動により、その通動時間がXの通動時間以上にかかることになる者もいたことからすれば、 上記程度の通動時間の増加をもって、本件人事異動が特に大きな負担をもたらすものであったとはいえない。
 (6) 本件人事異動後も、 Xは引き続き支部組合に所属しているのであるから、 本件人事異動により、 従来の活動が困難になったとはいえない。
2 Xの活動と会社の対応等
 (1) Xは、平成22年4月頃から動務時間外にB1支店の前で、 J P労組を批判する内容のビラを複数回配布し、会社はこの活動を認識していたから、 Xが J P労組の活動について批判等する活動を行っていたことを認識し得たとはいい得るものの、当該活動に対して、会社が抗議をしたり、介入したりしたことがあったことはうかがわれない。
 (2) Xらは、平成23年3月初旬頃、支援する会・全逓横浜を結成したが、この結成を、会社に通知したり、公表したことはなく、会社が同会の存在ないし活動を認識したのは、 同年7月14日、Xらが、 「動労千葉を支援する全逓横浜の会」 と記載されたビラをB1支店前等で配布したときであり、 同月5日に行った本件人事異動の内示の前には、 Xらが同会の活動をしていることを会社が知っていたとは認められない。
3 結論
 以上からすると、本件人事異動は、 XのJ P労組に対する批判活動及び支援する会・全逓横浜の活動等の故をもって行われたものとみることは困難であるから、本件人事異動は、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たらず、 また、Xらの活動に介入するために行われたものと認めることもできず、 労組法第7条第3号の不当労働行為にも当たらない。 
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川県労委平成23年(不)第26号 棄却 平成25年7月16日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約46KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。