労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  橫浜自動車学校 
事件番号  中労委平成24年(不再)第42号 
再審査申立人  株式会社橫浜自動車学校(「会社」) 
再審査被申立人  神奈川県自動車教習所労働組合橫浜自動車学校支部(「組合」) 
命令年月日  平成26年11月19日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①組合がスト通告を行ったところ、従業員宛て「春闘について」及び教習生宛て「教習生の皆様へ」を掲示したこと、②組合がスト回避を通知したところ、スト予定日の前日に行われた団体交渉で、ストの前日回避は認められず、就労を認めないとの対応に終始したこと、③スト予定日の組合員の就労を認めず、賃金を控除したこと、④夏季一時金の内容について会社回答に同意した従業員に一時金を支給する旨の全従業員宛て「2010年夏季賞与について」 を掲示したこと、⑤組合が申請したあっせんにおける解決金と同額を非組合員に支給したこと、がそれぞれ不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審神奈川県労委は、会社に対して、上記①の文書の掲示による支配介入の禁止、就労拒否の撤回及び控除した賃金相当額の支払い、組合員に個別に一時金支給額の同意を求めることの禁止、並びに、文書手交を命ずる全部救済命令を発し、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。
 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 「春闘について」 の掲示が労組法7条3号の不当労働行為に当たるか (争点①)。
 「春闘について」 が掲示されるに至った経緯やその記載内容に照らせば、掲示は、会社の経営施策の障害であり、業務を阻害するものとして、組合のストを強く問題視し、それを抑止したいと考えていた会社が、組合が理不尽な要求を行っており、組合のストに合理性がないことを組合員を含む従業員に印象付けるとともに、組合がストを実施した場合には、地主兼株主でもある経営陣の判断で会社の解散もあり得ることをちらつかせることによって、従業員の会社解散に対する不安や組合に対する反感、組合員のスト権行使への不安を醸成し、スト権の行使という組合が自主的に決定すべき組合の運営ないし活動に介入して、ストを抑止し、更には組合を萎縮させることを目的として行ったものとみることができるから、支配介入に当たる。
2 「教習生の皆様へ」 の掲示が労組法7条3号の不当労働行為に当たるか (争点②)。
 教習生に対してストの影響等を告知するだけであれば、その旨のみを記載すれば足りるにもかかわらず、教習生とは直接関係のない事項をあえて記載していること、「春闘について」 の掲示の翌日で、会社が教習予約のキャンセル作業を開始したのとほぼ同時に掲示していること等を併せ考えると、掲示は、教習生に対する告知の機会を利用して、ストを構える組合やこれを指揮するなどの活動を行う支部長を教習生からの批判ないし非難にさらすことによって、組合を牽制し、 ストを抑止すること、更には組合を萎縮させることを目的として行ったものとみることができるから、支配介入に当たる。
3 第9回団体交渉における会社の対応が労組法7条2号の不当労働行為に当たるか(争点③)。
 第9回団体交渉においては、実質的にはスト回避後の組合員の就労も議題として交渉されていたものと認められる。 同団体交渉において、会社は、 ストについての組合の対応がどのようなものであっても、組合員の就労を認めず、 この点に関する合意達成の可能性を最初から否定する姿勢であったというほかない。 就労させる条件として会社が提案した条件は、労働関係における主張の不一致の解決のために提案したのではなく、むしろ、組合が受け入れないことを見越し、 これを意図して提案したものと認められる。 したがって、同団体交渉における会社の対応は誠実なものとはいえず、労組法7条2号の不当労働行為に当たる。
4 スト前日にストを回避した組合員のスト予定日の就労を認めず、同日の賃金を控除したことが労組法7条1号、3号の不当労働行為に当たるか(争点④)。
 会社は、組合がストを構えたことを理由に、団体交渉の結果により組合がストを回避してもこれを認めず、組合員を就労させないことを遅くとも団体交渉の前の時点で決定し、組合員を就労させないことにより組合に打撃を与えることを企図していたとみることができる。 その結果、会社は、現実に、スト回避を受け入れないとして、スト予定日の組合員の就労を拒絶し、同日分の賃金を控除したのであるから、この会社の行為は、スト予告を理由として労務提供を拒否して、就労の機会を奪い、さらに、賃金を控除したものであり、そのことによって、組合員の動揺を誘い、組合弱体化を図ったものと推認され、労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たる。
5 団体交渉及びあっせん係属中に夏季一時金の支給に関する文書を掲示して組合員を含む全従業員に個別に支給額の同意を求めたことが労組法7条3号の不当労働行為に当たるか(争点⑤)
 上記1ないし4のような経緯のなかで会社が掲示した文書は、一時金の支給遅れがあたかも組合の責めであるかのように述べるとともに、一時金の額について会社の回答及び計算方法によることを承諾する従業員に一時金を支払うとしたものである。 これは、一時金に関する団体交渉が継続中で、かつ、あっせん事件も係属中に、直接組合員との間で一時金の額をその内訳まで含めて事実上決定してしまおうとするものであって、組合員の労働条件を団結して集団的に決定するという組合の基本的活動に介入するものであるとともに、組合員の動揺、不安を誘い、組合に対する不信感を醸成して執行部と組合員間の離間を図り、組合を弱体化させようとしたものとみざるをえず、労組法7条3号の不当労働行為に当たる。
6 非組合員に対してあっせん事件における解決金と同額を支給したことが労組法7条3号の不当労働行為に当たるか(争点⑥)。
 会社があっせん事件における解決金と同額を非組合員に支給したことは、組合にとっては一時金をめぐって会社との間で行った組合活動の成果ともいうべき解決金と同額を非組合員に格別の根拠もなく支給することによって、組合がその活動によって得た利益を実質的に非組合員に保障する姿勢を示すことにより、組合活動の効果を実質的に減殺するとともに、組合員に、組合に所属していることに対する動揺、不満や組合に対する不信を醸成し、組合の団結を揺るがせる効果を持ち得るものであり、支給に至る経緯等に照らせば、会社は、このような効果が生ずるのを意図して支給したと推認することができるから、労組法7条3号の不当労働行為に当たる。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
神奈川県労委平成22年(不)第32号 全部救済 平成24年8月8日
 
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