概要情報
事件名 |
中労委平成25年(不再)第84号 |
事件番号 |
中労委平成25年(不再)第84号 |
再審査申立人 |
大阪市(「市」) |
再審査被申立人 |
X労働組合(「X労組」) |
命令年月日 |
平成26年10月1日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、X労組が、平成24年3月12日に手交した団体交渉
申入書により、市に対し、市は、「大阪市の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」 (以下
「本件市条例」 という。)又は
「大阪府の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」(以下「本件府条例」という。)のいずれが適用されるのか明確にすること(要求事項①)、卒業
式等において、起立して国歌斉唱することを非常勤講師・職員等に強制しないこと
(要求事項②)などについて、団体交渉申入れを行ったところ、市がこれら要求事項はいずれも管理運営事項に当たるなどとして団体交渉に応じなかったことが、労組法第7条第
2号の不当労働行為(団体交渉拒否)に当たるとして、救済申立てがあった事案である。
2 初審の大阪府労委は、労働条件に関する要求事項①及び要求事項②の部分に係る市の対応は、労組法第7条第2号の不当労働
行為に当たるとして、団体交渉応諾及び文書手交を命じたところ、市は、これを不服として再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 X労組は、
不当労働行為救済制度の救済申立人適格を有するか。
(1)
労組法に定める労働委員会による不当労働行為救済制度の救済申立人適格を有する団体は、労組法上の労働組合に限られており
(労組法第5条第1項)、労組法上の労働組合とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向
上を図ることを主たる目的として組織する団体」 (同法第2条本文) とされている。
そして、労組法の適用が除外されている一般職の地方公務員も、憲法第28条の「勤労者」であり、かつ、労組法第3条の「労
働者」であって、その職務の性質にかんがみ、例外的に労組法の適用が除外されているにすぎないのであるから、地公法が適用さ
れる地方公務員と労組法が適用される地方公務員等によって組織された、いわゆる混合組合も、
「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体」
であると解するのが相当である。
また、ILO第87号条約は、労働者による労働団体の設立、
加入の自由を要請するだけでなく、設立、加入した労働団体が、いわゆる混合組合であるか否かというその法的性格に関わりなく、当該団体に団結権等を保障することを要請する
ものであると解され、地公法及び労組法も、一般職の地方公務員が労働団体に加入するこ
とを特段制限する規定を置いていないのであるから、いわゆる混合組合も、その存在は、現行法上当然に許容されているものと解される。
(2)
そうすると、憲法第28条の団結権等を実質的に保障するために設けられている上記不当労働行為救済制度において、いわゆる混合組合は、労組法適用構成員に関しては、労組法
上の労働組合として、同法上の労働組合としての権利を行使することができ、当該労働者に関する問題については、不当労働行為
制度の救済申立人適格を有すると解するのが相当である。
2 市が本件団体交渉申入れを拒否したことに正当な理由があるか。
(1)
本件団体交渉申入れの交渉事項は、本件府条例と本件市条例の適用関係等を確認すること(本件要求事項①)及び、違反となる行為の内容や、指導、
服務命令に従わなかった場合の処分の手続、基準等について説明及び団体交渉を求めること(本件要求事項②)であったと認める
のが相当である。
また、本件交渉事項は、いずれも、X労組の労組法適用構成員である組合員の勤務条件その他の待遇に関する事項であって、
市が策定した 「職員団体及び労働組合との交渉等に関するガイドライン」でいう
「交渉事項」に該当するか、少なくとも「管理運営事項の実施に当たって影響を受ける勤務労働条件」に該当し交渉事項となり得るものと認められ、これは、市が処分可能なもの
であるから、 労組法で団体交渉が義務づけられる義務的団体交渉事項であると認められる。
(2)
本件団体交渉申入れの要求事項は、不明確であったとはいえず、市も同申入れの内容を認識し、又は容易に認識し得る状況であったので、本件要求事項①及び本件要求事項②は義
務的団体交渉事項に当たり、市がこれら要求事項に関する団体交渉に応じなかったことには、正当な理由はなく、労組法第7条第
2号の不当労働行為に該当する。 |
掲載文献 |
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