事件名 |
大阪府労委平成24年(不)第17号 |
事件番号 |
大阪府労委平成24年(不)第17号 |
申立人 |
X労働組合、C(個人)、D(個人) |
被申立人 |
大阪市 |
命令年月日 |
平成25年11月7日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
申立人組合が「卒業式及び入学式において、非常勤講師・職員等に
『君が代』の起立強制及び斉唱の強制を行わないこと」等を要求事項とする団交を申し入れたのに対し、被申立人市が要求事項は
管理運営事項に当たるなどとして団交に応じないことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は、申立人C及びDによる申立てを却下するとともに、市に対し、要求事項の一部についての誠実団交応諾及び文書
手交を命じた。 |
命令主文 |
1 平成24年3月9日付け団体交渉申入れに対する被申立人の対応
に係る申立人C及び同Dの申立てを却下する。
2 被申立人は、申立人X労働組合が平成24年3月9日付けで申し入れた団体交渉について、教育活動支援員及び特別支援教育
補助員に係る要求事項(1)及び(2)のうち、労働条件に関わる事項について誠実に団体交渉に応じなければならない。
3 被申立人は、申立人X労働組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X労働組合
執行委員長 B
大阪市
市長 E
当市が、貴組合が平成24年3月9日付けで申し入れた団体交渉のうち、教育活動支援員及び特別支援教育補助員に係る下
記事項のうち労働条件に関わる事項に応じなかったことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当
労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
記
(1)大阪市では、「大阪市の施設における国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」と「大阪府の施設におけ
る国旗の掲揚及び教職員による国歌の斉唱に関する条例」のいずれが適用されるのか明確にされたい。
(2)卒業式及び入学式において、非常勤講師・職員等に、「君が代」の起立強制及び斉唱の強制を行わないこ
と。 |
判断の要旨 |
1 申立人組合の申立人適格の有無について
被申立人市は、①申立人組合はいわゆる混合組合であるが、労働組合部分と職員団体部分との差異が不明瞭にすぎるという実態
に鑑みれば、少なくとも本件においては混合組合に二面的性格を認めるべきではなく、量的割合・質的要素からいずれか一方の性
格のみ有するものと判断されるべきである、②組合は、この点についての度重なる市による釈明の求めにも応じず、その構成に関
する資料を一切提出しなかったのであり、当委員会において提出させるべきであるが、そうしないのであれば、組合の上記対応に
鑑み、組合の中核が職員団体によって構成されたものと認定すべきである、③以上により、本件では組合は職員団体であって、不
当労働行為救済申立適格が認められない旨主張する。
しかし、労組法適用者の問題に関する混合組合の活動は、原則として労組法上の労働組合としての活動とみるべきである。そし
て、組合は本件団交申入書によって労組法適用者である教育活動支援員及び特別支援教育補助員にかかわる要求について団交を申
し入れているとみるのが相当である。したがって、組合は、労組法適用者の問題に関して不当労働行為救済申立てを行ったとみる
のが相当であり、この点においては申立人適格を有すると解するのが相当である。ただし、労組法7条2号に違反する不当労働行
為について救済利益を有するのは労働組合であって、組合員2名個人には申立人適格があるとはいえない。
2 団交申入れに対する市の対応について
市教委は、組合に対し、要求事項(1)及び(2)については条例の適用の問題である、あるいは管理運営事項に当たるとして
団交に応じられない旨回答したことが認められる。当該要求事項をみると、市条例の改廃そのものを求める要求を含んでいるとも
解され、その場合は、当該改廃そのものは団交の対象とすることはできないが、労働条件に影響の及ぶ範囲の事項については義務
的団交事項と解するのが相当である。
この点に関し、本件市条例第5条に「市長及び教育委員会は、前2条の規定による国旗の掲揚及び国家の斉唱について、適切に
行われるための必要な措置を講じなければならない」との規定があること、市教委教育長から各校園長への通知には教員が起立し
て国歌を斉唱するよう指導し、指導に従わない場合には職務命令を行う旨記載されていることなどが認められる。これらのことか
らすると、少なくとも組合が、教育活動支援員等が卒業式等において職務遂行中に国歌を起立により斉唱できなかった場合等の市
教委の対応について、関心を抱き、交渉における検討対象としていたことが予想される。そして、その場合の対応として、市教委
が教育活動支援員等の労働条件の変更を伴う服務上の措置を講じることは可能性として否定できないのであるから、上記の市教委
の対応は組合員の労働条件に関する事項といえる。したがって、要求事項(1)及び(2)については、義務的団交事項である組
合員の労働条件の問題を含めて交渉を求めたものと認めることができる状況であるので、市が団交に応じなかったことについて正
当な理由があるとみることはできない。
要求事項(3)は、非常勤講師・職員等がY市会に提案される『職員基本条例』案に規定する職務命令に違反したことをもって
雇止め、解雇などの不当な報復を行わないよう求めるものであるところ、市教委は、同条例案は非常勤職員には適用されないの
で、前提条件が崩れており、応じられない旨回答したことが認められる。
この点に関しては、同条例案第2条によれば教育活動支援員等には同条例案が適用されないことは明らかであり、また、団交で
のやりとりを通じ組合もそのことを認識していたとみることができる。そうすると、市が上記のような理由で団交に応じないとし
たことは、正当な理由のない団交拒否に当たるとまではいえない。、 |
掲載文献 |
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