労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  天使学園 
事件番号  中労委平成25年(不再)第52号 
再審査申立人  学校法人天使学園(「法人」) 
再審査被申立人  天使大学教職員組合(「組合」) 
命令年月日  平成26年9月3日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、法人が、① 組合員2名(A1及びA2)のハラスメント事案に関して、配置転換を含む労働環境調整を求めた団体交渉に誠実に対応しなかったこと、② 法人のハラスメント規程及び懲戒委員会規程(両規程)の改正を議題とする団体交渉に誠実に対応しなかったこと、③ 法人施設の空き室利用について、組合に他団体より重い要件を課したこと、④ 法人が設置する大学の教務部長の選考に当たり、A3が組合の代表であることを理由として、同人を教務部長に任命することを拒否したことが不当労働行為であると して、 救済申立てがあった事件である。
2 初審の北海道労委は、 上記①及び②が、労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号の不当労働行為に該当するとし、団体交渉応諾及び文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却したところ、法人は、これを不服として再審査を申し立てた。  
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 組合員のハラスメント事案に関する労働環境調整義務の履行要求につき、これを団体交渉事項でないなどとした法人の対応が、団体交渉拒否に該当するか。
 (1) 組合員2名に係るハラスメント事案の発生に伴い、配置転換等の労働環境の調整を求めた議題は組合員の労働条件に関わるものであり、団体交渉事項に当たると認めるのが相当である。
 (2) 法人は、A1についてハラスメントの事実がないこと、配置転換は経営権に関わる問題であること、ハラスメント事案はプライバシーに関わる問題があることを根拠事項として、同議題は団体交渉事項に当たらないと主張していたものである。しかしながら、組合が、ハラスメントの事実があったか否かそれ自体を問題とし、A1のハラスメント事案の詳細について説明を求めているわけではなく、A1について、配置転換等の措置を講じて、労働環境を改善してほしい事態が発生していることから、これを早急に実施してほしいと要望するものであったことは明らかである。 また、A2の事案については、法人自身が、A2に、配置転換等の労働環境の整備を行うと伝えていたのに、これがなかなか実施されなかったことから、組合が、組合員であるA2の労働環境の早期改善を求めて、法人に団体交渉を申し入れたことも明らかである。 
 このように、組合は、組合員の労働条件に係る労働環境を改善するための話合いをするため、A1及びA2の事案を団体交渉の対象事項としていたのであるから、話の内容が個人のプライバシーにわたるものであるか否かが、法人から組合に、どの程度詳しく説明することができるかという点に影響することがあったとしても、そもそも団体交渉事項に当たらないとして、法人が、全く説明しないことを正当化することはできない。
2 両規程の改定要求の議題につき、経営事項であることなどを理由に、団体交渉事項でないとした法人の対応が、団体交渉の拒否に該当するか。
 (1) 両規程は、懲戒に関する取扱いや、ハラスメント等の問題が起きた場合の適切な労働環境について定めるもので、いずれも労働条件に関わるものである以上、法人に雇用される労働者のすべてに適用される労働者の待遇に関わる定めであると認められることからすれば、上記議題は、団体交渉事項に当たる。
 (2) 法人は、団体交渉において、「懲戒委員会規程は、私学法の改正に伴って改正した寄附行為の趣旨に沿って改正したものであり、理事会が意思決定の最終責任を取ることができるように理事の割合を増やしたものである。」という程度の説明はしているが、私学法改正の趣旨からすれば、その説明が理解し難いと組合が考えたのもやむを得ないところであり、また、ハラスメント規程の改正について具体的に説明した状況はうかがわれない。さらに、法人は、団体交渉において、組合に対し、両規程の改正に関する問題は経営権の問題であり団体交渉事項にはならないとの認識を殊更明らかにしていた。
 組合は、両規程がいかなる意味で改正の必要があったのかということや両規程の適切な内容とはどのようなものであるかを団体交渉における話合いの中心としたかったと考えられるが、そのような事項について法人は、当初から説明を拒否していたのであるから、たとえ団体交渉の開催が数時間にわたっていたとしても、実質的にみて、法人が誠実に団体交渉に応じていたものであると評価することはできない。
3 救済方法
 本件において、法人は、義務的団体交渉事項であることが明らかな議題について、そもそも団体交渉事項に当たらないとして、組合からの団体交渉申入れを拒否していたのであるから、憲法第28条において認められている労働者の団結権等を著しく軽視する態度を取り続けていたといわざるを得ない。
 さらに、法人は、本件救済申立てから約2年が経過した後の団体交渉において、資料を持参していないこと等を理由に実質的な議論に入らないなど、依然として、誠実に団体交渉に臨んでいるのか疑問があるといわざるを得ない対応をとり続けている。
 以上からすれば、本件は、法人と組合間の正常な集団的労使関係秩序を回復する必要性の高い事案であり、法人による同種行為の再発を防ぐためには、誠実に団体交渉に応じるよう命じるとともに、法人施設内に出入りする関係者が視認し得る公用掲示板への文書掲示を命じることには理由があるということができる。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
北海道労委平成23年(不)第31号 一部救済 平成25年7月12日
 
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