労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  天使学園 
事件番号  平成23年道委不第31号 
申立人  天使大学教職員組合 
被申立人  学校法人天使学園 
命令年月日  平成25年7月12日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人法人が①組合員である助教2名に係るハラスメント事案についての労働環境調整義務の履行を求めて申立人組合が行った団交申入れを拒否したこと、②改定された「ハラスメントの防止と解決に関する規程」及び「懲戒委員会規程」の再改定を求めて組合が行った団交申入れを拒否したこと、③法人の施設内の空き室の利用申請に関し、組合の利用申請についてのみ理事長決裁を要することとし、他の外部団体の場合よりも重い要件を課したこと、④法人が設置する大学の教務部長の選考に当たり、学長が教授会の意見を聞いて推薦した組合の代表X1を任命することを拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 北海道労委は法人に対し、上記①及び②の団交に誠実に応じること及び文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人が申し入れた組合員のハラスメント事案に関する労働環境調整義務の履行及び懲戒委員会規程等の改定を交渉事項とする団体交渉において、それらが団体交渉の対象にはならないとするなど自らの主張に固執することなく、要求事項に対して自らの見解の内容や根拠を具体的かつ明確に示して申立人の納得を得るよう努力して、団体交渉に誠実に応じなければならない。
2 被申立人は、次の内容の文書を縦1メートル、横1.5メートルの白紙にかい書で明瞭に記載して、被申立人の学内公用掲示板に、本命令書写し交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。
   当法人が、貴組合に対して行った次の行為は、北海道労働委員会において、労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であると認定されました。
   今後、このような行為を繰り返さないようにします。
   貴組合から、組合員のハラスメント事案に関する労働環境調整義務の履行及び懲戒委員会規程等の改定を交渉事項として申し入れられた団体交渉において、それらが団体交渉の対象にはならないとするなど自らの主張に固執し、要求事項に対して自らの見解の内容や根拠を具体的かつ明確に示して貴組合の納得を得るよう努力せず、団体交渉において誠実な対応をしなかったこと。
   平成  年  月  日 (掲示する日を記載すること)
   天使学園教職員組合
     代表 X1 様
学校法人天使学園
理事長 Y1

3 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 労働環境調整義務の履行に関する団交を拒否したことについて
 組合員X2の事案については、申立人法人としては、同人の主張する職場環境悪化の具体的な内容を確認するとともに、配置転換など何らかの対応が必要なのかどうか等について団交で申立人組合と協議し、自己の主張を納得してもらうための努力が必要であったと認められるが、法人は、守秘義務やプライバシーの問題及び法人の理事会ハラスメント小委員会でハラスメントに該当する事案でないとの結論が出ていることを理由に労働問題と認めないとの主張に固執した態度に終始したといわざるを得ない。組合員X3の事案については、解決案の早期実施が求められていたといえるところ、法人としてはそれができない事情を十分に説明し、実施の目途を含めて組合の理解を得るための努力が必要であったにもかかわらず、それを行わず、かえって人事の問題を含み経営権にかかわる問題であるから団交の対象にはならないと回答するにとどまった。
 以上のような法人の交渉態度は誠意あるものとは認められず、実質的に団交を拒否したものといわざるを得ない。
2 ハラスメント規程等の改定に関する団交を拒否したことについて
 法人は団交において、規程の改正経過等について一応の説明は行ったものの、組合から、団交事項であるにもかかわらず、組合側に説明のないままに改定されているとの指摘や、規程の見直しを求める要求があったのに対して、経営権への介入というおそれもあるので団交の対象にはならないなどとしてそれ以上の協議に応じず、組合に説明する手続をとらなかった理由、懲戒委員会の委員中の理事の人数などについて法人が検討したとする内容の詳細等を説明したり、組合の要求に応じられない具体的理由を示すなど、組合の理解を得るための努力がなされているとは認められない。このような法人の交渉態度は誠実なものとは認められず、実質的な団交拒否に該当する。
3 組合からの空き室利用許可申請の取扱いについて
 本件においては、組合が実際に利用を申請した事実はなく、申請があった場合の具体的な利用許諾の基準等について他団体と異なった取扱いがなされたなど、法人側の対応が具体的に問題となってはいない。このように法人の具体的な施設管理権の行使の事実が認められない状況の下で、許可申請者の決裁権者が他団体のように事務局長ではなく理事長とされているという事実だけでは、使用者の組合運営に対する干渉又は弱体化行為であるとまでは評価することができないというべきである。
4 組合の代表者X1を教務部長に任命しなかったことについて
 平成24年1月から施行された大学の研究科長等の任期及び選考に関する新たな規程によれば、教務部長は「学長が教授会の意見を聞いて推薦し、理事長は理事会の議に基づき任命する」こととされている。そして、この規定に基づき学長から推薦のあった候補者であるX1について理事会で投票が行われ、賛成4票、反対2票、白票3票という結果になった。投票後、理事会では寄附行為の規定により「出席した理事の過半数で決する」ことが確認されている。
 この結果について組合は、白票は保留であり、意思決定を賛否明らかな投票結果に委ねるという趣旨であると主張するが、理事会でそのように取り扱うと決めた事実はなく、寄附行為の規定からは、表決の際に議場に在って表決権を有する者の数を基礎に、その過半数を要すると解するのが相当であり、組合の主張は認め難い。したがって、X1は投票の結果、出席した理事の過半数の賛成を得ることができなかったと認めるのが相当である。
 その後、理事会での議論により、教務部長については学長と理事長との協議の結果に一任し、その結果を理事会に報告することになった。組合は、理事長はX1については理事会で否決されているとして他の者から人選するという主張に固執し、押し通したが、このように協議となった経緯を無視して人選を行った理事長の態度からは明らかに恣意的にX1を排除しようとする意図が推認できる旨主張する。しかし、前述のとおり、X1については理事会で否決されたと認めるのが相当であることからすると、組合のこの主張は前提を欠き、理事長がそのような意図を有していたと推認することはできない。また、理事長が他の候補者を推した行為がX1が組合員であること、若しくは労働組合の正当な行為をしたことを理由とするものであることが立証されたとは認め難い。
 したがって、本件任命拒否をもって、労組法7条1号の不利益取扱いに該当するということはできない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成25年(不再)第52号 棄却 平成26年9月3日
 
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