労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  清浄心院 
事件番号  中労委平成24年(不再)第63号 
再審査申立人  管理職ユニオン・関西(以下「組合」) 
再審査被申立人  清浄心院(以下「法人」) 
命令年月日  平成26年7月16日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、法人が、① 法人の代表役員を兼任していた住職を含む5名をして、平成22年5月29日に、寺院内において、組合員の机等を開け、書類のコピーや写真撮影等を行ったこと(以下「5.29行為」)、② 22年8月30日及び同年11月22日の法人の全財産の返却問題等を議題とする団体交渉(以下、それぞれ「8.30団交」及び「11.22団交」)において、不誠実な対応をしたこと、③ 上記②の団交開催後の組合からの団交申入れ(以下「本件団交申入れ」)に対し、組合が11.22団交を一方的に中止したなどとして応じなかったことが、①につき労組法第7条第3号、②及び③につき同法同条第2号の不当労働行為に該当するとして、救済申立てが行われた事案である。
2 初審の大阪府労委は、法人の対応はいずれも不当労働行為に当たらないとして、組合の救済申立てを棄却したところ、組合は、初審命令を不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 5.29行為は、労組法第7条第3号の支配介入に当たるか(争点1)。
(1) 5.29行為に至る経緯等についてみると、法人は、A組合員及び分会員らとの間で寺院の業務運営を巡り厳しい対立関係にあり、これによって寺院の職員の就労状況、会計等の業務実態を正確に把握できない事態が続いていたことから、寺院の業務運営を正常化するべく、このような事態の法的解決を図って、訴訟を提起したものと推認される。よって、法人は、その訴訟の遂行に必要な証拠資料を収集するために、5.29行為によって清浄心院の占有状況や会計帳簿等の確認、収集を行ったものとみるのが相当である。
(2) 5.29行為の方法・態様については、寺務所を封鎖して行われたものではなく、平穏に行われたものとみることができ、その方法等において相当性を欠くものとはいえない。
(3) 5.29行為の対象となった場所については、寺院の業務運営のための事務作業等を行うための場所(寺院の受付の部屋及び寺務所)に限られていたといえる。分会員らが寺務所を組合活動のために使用していたとしても、それを法人が認めた労働協約等は存在せず、寺務所を捜索の対象としたことをもって、法人が組合活動を調査する目的を有していたなどということはできない。また、対象となった物件は寺院の占有状況を示す資料と会計帳簿等の書類であったことから、いずれの点においても上記(1)の目的に照らして合目的的である。
(4) 以上のとおりであるから、5.29行為は、当時の労使事情を含むその経緯、方法・態様、対象場所・物件等を総合的に考慮すれば、組合運営に支配介入したものとはいえず、また、支配介入を企図したものともいえない。よって、5.29行為は労組法第7条第3号の支配介入には当たらない。
2 8.30団交及び11.22団交における法人の対応は、労組法第7条第2号の不誠実団交に当たるか(争点2)。
 組合が団交で問題としたのは主として、① 5.29行為、② 法人財産の使途・保管問題についてであって、5.29行為については、寺院の占有状況を示す資料と会計帳簿等の確認、収集が行われたものであったことからして、職員の机を開けることもこの目的を達成するのに必要な行為であったということができ、法人の回答は、このことを前提にしたもので、不十分な点はないから、これをもって不誠実な対応とはいえない。
 また、法人財産の使途・保管問題については、分会員らが自ら管理する寺院の収入でもって賃金の改定を行っていた本件の事実関係に照らすと、分会員らの賃金などの労働条件に影響を及ぼすものとは解されず、義務的団交事項に当たらない。このように義務的団交事項に当たらない議題について、法人は、組合から質問があった法人の預金に関する資料であるとして、提供可能な範囲で預金の残額を証明したのに対し、組合は預金通帳の開示に固執したもので、法人としては必要な説明資料を示したものといえるから、預金通帳を開示しなかった法人の行為が不誠実であるという組合の主張は失当である。
 以上のとおりであるから、8.30団交及び11.22団交における法人の対応は労組法第7条第2号の不誠実団交には当たらない。
3 法人が、本件団交申入れに対し、組合が11.22団交を一方的に中止したなどとして応じなかったことは、労組法第7条第2号の団交拒否に当たるか(争点3)。
 11.22団交において、法人は、法人の預金の使途・保管問題以外の他の議題についての協議に応じる姿勢を示していたのに対して、組合は、同問題を他の議題に先行させる方針を採用し、かつ義務的団交事項ではない同問題について代理人抜きでの協議に固執して、11.22団交を自ら打ち切ったものということができる。そして、組合が上記の交渉方針を変更して、他の議題の交渉を先行させる旨を法人に伝えた事実を認めることはできない。したがって、かかる事実関係の下においては、本件団交申入れに応じなかった法人の対応は労組法第7条第2号の団交拒否には該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成23年(不)第15号 棄却 平成24年11月19日
 
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