概要情報
事件名 |
大阪府労委平成23年(不)第15号
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事件番号 |
大阪府労委平成23年(不)第15号
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申立人 |
X労働組合
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被申立人 |
宗教法人Y
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命令年月日 |
平成24年11月19日
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命令区分 |
棄却
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重要度 |
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事件概要 |
被申立人法人の代表役員Bは同法人の寺院Sの住職を兼務していたが、平成16年8月頃から、Sの徒弟である組合員GらがSの預金通帳や会計帳簿等を所持するようになり、Gは、Sの住職の選定には疑義があり、自分が住職に就任すべきであるとして関係宗教法人に対し請願書と題する文書を送付するなどした。21年8月、Bは、Gを相手方として、Sの本堂等の建物に立ち入らないことを求めて訴訟を提起し、22年7月、この訴訟の請求内容をSの本堂等の建物から退去し明け渡すこと及びSの印鑑、預金通帳等を引き渡すことに変更した。そして、この間の同年5月29日、B及び法人の代理人らがSを訪問し、組合員である職員の机を開けて書類のコピーを取ったり、写真を撮影するなどした。
本件は、法人の①上記5月29日の行為及び②申立人組合との団交における対応、並びに③法人が、組合との間で2回の団交が開催された後、団交に応じないことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は、申立てを棄却した。
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命令主文 |
本件申立てをいずれも棄却する。
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判断の要旨 |
1 被申立人法人の平成22年5月29日の行為について
法人と組合員Gとの間の訴訟の経緯からすると、5月29日の行為は、Gによる寺院の建物の占有状況及び会計帳簿など経理書類の確認をする目的で、住職Bが経営上不可欠な作業として行ったとする法人の主張は首肯できる。また、行為の対象となったのは、受付の部屋及び寺務所であって組合活動や申立人組合の分会員が個人的に使用するための場所は含まれていないとみるのが相当である。さらに、行為の遂行状況をみると、暴力や脅迫等の手段を用いたものではなく、平穏に行われたとみることができる。
以上のとおりであるから、当該行為が支配介入に当たるということはできない。
2 団交における法人の対応について
平成22年8月30日の団交の議題は、上記1の同年5月29日の行為と寺院Sの財産の返却問題(Bが裁判の判決により銀行からSの預金全額の払戻しを受けたことに関し、組合がその払戻金の保管方法や使途を明らかにするよう求めている問題)であったとみるのが相当である。5月29日の行為についてのやりとりをみると、法人は当該行為についての自らの見解を示して、返答していたとみるのが相当であって、かかる対応を不誠実とみることはできない。
寺院Sの財産の返却問題については、一般に使用者の資産状況については労働者の労働条件や雇用に影響し得る範囲内で義務的団交事項になり得るというべきであるが、本件においては、分会員の賃金の原資となり得るSの収入については分会員又は組合が管理しており、法人はこれを直接、把握できない状況にあるとみられること等から、Bが管理するSの資産の状況は分会員の賃金等の労働条件に影響を及ぼすものとは解されず、この問題は義務的団交事項に当たらないというべきである。したがって、払戻金の保管方法や使い道の開示という組合の要求に対し、法人が法的に再検討した上で連絡する旨返答したことを不誠実ということはできない。
3 法人が2回の団交の後、団交に応じていないことについて
組合は、法人側の代理人抜きで、Bが管理する資産の状況についての協議継続を求めて、第2回団交の後も団交を申し入れたと解するのが相当である。しかし、Bが管理する資産の状況は、上記2の判断のとおり、義務的団交事項には当たらないと判断されるものである。また、第2回団交において、法人が組合に対し、この問題についての協議の継続を約束したとは解されないし、以後、協議を再開しなければならないような新たな事情が生じたと認めるに足る疎明もない。団交に法人側の代理人が同席することにも問題があるとはいえない。さらに、第2回団交では専ら資産問題が取り上げられている上、組合がそれに先行して他の議題を協議しようとしたとする疎明もないのであるから、法人が組合からの未協議の議題についての協議申入れに応じなかったというのは適切ではない。
以上のとおりであるから、第2回団交の後、法人が団交申入れに応じていないことには理由があるというべきであり、不当労働行為には該当しない。
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掲載文献 |
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