概要情報
事件名 |
芳賀通運 |
事件番号 |
中労委平成24年(不再)第50号 |
再審査申立人 |
一般合同労働組合なんぶユニオン(以下「組合」) |
再審査被申立人 |
芳賀通運株式会社(以下「会社」) |
命令年月日 |
平成26年6月18日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
1 本件は、会社が、① 海上コンテナ運転手として勤務していたAに対する転勤指示をめぐって行われた平成21年9月から22年1月までの間の5回の団交(「本件団交」)において不誠実に対応したこと、② 本件団交後になされた4回の団交申入れに応じなかったこと及び③ Aの解雇に係る団交申入れに応じなかったことが、不当労働行為であるとして、救済が申し立てられた事件である。
2 初審東京都労委は、上記1の組合の救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 |
命令主文 |
本件再審査申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 本件団交における会社の対応は、不誠実なものであったか(争点1)
ア 会社の海上コンテナ運転手であったAは、東京都内の自宅から都内のP営業所に通勤していた。Aは、貨物自動車運送事業関係法令により実施が義務づけられた乗務前後の点呼を受けていなかったところ、21年8月、会社から、今後は千葉県内のQ事業所で点呼を受けるよう指示されたが、これを承服せず、勤務しなかった。
イ 本件団交で組合は、Aの原職復帰を求めたのに対し、会社は、法令に則りQ事業所でAの点呼を行う必要性、P営業所は法令に則った貨物自動車運送事業の拠点ではなく点呼を行える場所ではない旨及びP営業所を法令に則った拠点とすることができない事情について述べた。会社は、Aの原職復帰要求に応じられない事情について所要の説明を行っており、かかる対応が不誠実であったとはいえない。
ウ また、会社は、AがQ事業所に転勤する場合の経済的負担の軽減策や、職種変更によりP営業所で勤務する方策を提案しており、これらの対応が不誠実であったとはいえない。さらに、会社は、Aの21年10月分以降の給与について、大型自動車運転手に係る最低保障額を適用して支払っており、同措置は、組合がAの給与補償を求めたことへの一定の配慮として行われたものであったといえる。
エ 他方、組合は、会社がAの採用時にP営業所勤務を約した旨を繰り返し述べ、原職復帰を求め続けた。また、組合は、Aの給与補償を求めながら、会社からの提案(上記ウ)を前提として、給与面等でより有利な条件を求めて交渉を進めようとしたことはうかがわれない。
オ 以上の経緯からすれば、本件団交における会社の対応が不誠実であったとはいえない。
2 会社が、22年1月30日付け団交申入れ以降4回の団交申入れに応じなかったことに正当な理由はあるか(争点2)
本件団交で組合は、上記1の会社の説明や提案にかかわらず、Aの原職復帰を求め続け、交渉は平行線となった。また、本件団交では、複数の組合員が口々に大声で発言して聴取困難となる状況や、組合員が会社側出席者に殴りかかろうとし、会社がそれを問題とする状況があったが、組合に交渉態度を改める姿勢はみられず、会社が、以後正常な交渉は行えないと考えたのも無理からぬところがあった。したがって、会社が、本件団交後の4回の団交申入れに応じなかったことには正当な理由がある。
3 会社が、Aの解雇に関してなされた団交申入れに応じなかったことに正当な理由はあるか(争点3)
会社は本件団交後、上記2のとおり団交を拒否する一方、Aの就労意思の確認のためとして組合と会合をもったが、同会合で労使はもみ合いとなり、会社側出席者が受傷した。その後、Aは出勤拒否及び傷害行為を理由に解雇された。同解雇に係る団交申入れは、会社にとって新たな義務的団交事項となるが、本件団交及び上記会合の経過を考慮すると、会社が、仮にAの解雇に係る団交申入れに応じたとしても正常な交渉は行えないと考えたことは無理からぬところがあり、これに応じなかったことには正当な理由がある。
4 結論
以上のとおり、会社の対応は、いずれも労組法第7条第2号に該当しない。 |
掲載文献 |
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