労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪市 
事件番号  中労委平成25年(不再)第22、23、24号 
再審査申立人  大阪市 
再審査申立人  大阪市交通局 
再審査申立人  大阪市水道局 
再審査被申立人  大阪市労働組合連合会(以下「市労連」) 
再審査被申立人  大阪市従業員労働組合(以下「市従」) 
再審査被申立人  大阪交通労働組合(以下「大交」) 
再審査被申立人  大阪市水道労働組合(以下「水労」) 
命令年月日  平成26年6月4日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、市労連並びに市労連の構成団体である市従、大交及び水労の各組合員を含む市の職員に対し、組合加入の有無やその活動状況等を尋ねるアンケート調査を実施したこと(以下「本件アンケート調査」)が、市による労組法第7条第3号の不当労働行為(支配介入)であったとして、救済申立てが行われた事案である。
2 初審の大阪府労委は、本件アンケート調査は市による労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるとして、市に文書手交を命じたところ、市は、これを不服として再審査を申立てた。 
命令主文  本件各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 市労連は申立人適格を有するか。
 労組法第7条の不当労働行為救済制度の申立人適格を有する労働団体は、労組法上の労働組合に限られているところ(労組法5条1項)、労組法上の労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体のことであり(同法2条)、同条において、連合団体は、申立人適格を当然に認められている。
 労組法の適用が除外されている一般職の地方公務員も、憲法第28条の勤労者かつ労組法第3条の労働者であって、その職務の性質に鑑み、例外的に労組法の適用が除外されているにすぎないのであるから、連合団体が、そのような地方公務員により組織された職員団体が加入している、いわゆる混合連合団体であったとしても、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的としている点で、その他の連合団体との間に違いはない。
 さらに、わが国が批准しているILO第87号条約は、労働者による労働団体の設立、加入の自由及び労働団体による連合団体の設立、加入の自由を要請するだけでなく、こうして設立、加入した労働団体、連合団体が、いわゆる混合組合や混合連合団体であるか否かというその法的性格に関わりなく、団結権等を保障することを要請するものであると解され、地方公務員法及び労組法も、労組法の適用が除外されている職員団体が連合団体に加入することを特段制限する規定を置いていないのであるから、混合連合団体も、憲法第28条の団結権等を固有の権利として有しており、その存在は、現行法上当然に許容されているものと解すべきである。
 そうすると、憲法第28条の団結権等を実効的に保障するために設けられている労組法第7条の不当労働行為救済制度において、混合連合団体が、救済の対象から除外されており、同制度の申立人適格すら認められないと解することはできない。
 したがって、混合連合団体であっても、不当労働行為救済制度の申立人適格を有していると解するのが相当であり、本件においては、混合連合団体である市労連に申立人適格を認めるのが相当である。
2 本件アンケート調査は、市による組合に対する労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか。
(1) 本件アンケート調査の実施主体
 市が、懲戒処分を伴う業務命令により、本件アンケート調査への回答を命じていること、市は、本件アンケート調査チームと一体のものとして認識していたこと、アンケートの内容には市の意向が反映されていたことなどからすれば、本件アンケート調査は、市が、実施主体として実施したものであったと認めるのが相当である。
(2) 本件アンケート調査は支配介入に当たるか。
 市は、内部告発等によって不適切な組合活動が行われている疑いがあったことなどから、市が考えるところの「労使関係の適正化」を図ることを目的として本件アンケート調査を実施したものと考えられるが、実施方法が、懲戒処分を伴う業務命令として早期回答を一方的に強制するものであり、質問内容も、組合活動全般にわたる無限定なものや組合内部の問題にわたっており、当時の労使関係に鑑みても、組合を弱体化する意図をもって実施されたものであったことなどからすれば、使用者が行う組合の実態調査としては、全体として行き過ぎた調査であったといわざるを得ない。
 したがって、本件アンケート調査は、単なる情報収集を超えた組合活動に対する干渉行為に当たり、組合の組合員に動揺を与え、組合活動を萎縮させることにより、その団結を弱体化させる不相当なものであったことから、市によって行われた組合に対する労組法第7条第3号の不当労働行為であったと認めるのが相当である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成24年(不)第6号 全救 平成25年3月25日
 
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