労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成24年(不)第6号 
事件番号  大阪府労委平成24年(不)第6号 
申立人  X労働組合連合会、X2労働組合、X3労働組合、X4労働組合 
被申立人  Y市 
命令年月日  平成25年3月25日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人市が職員に対し、業務命令として、正確な回答がなされていない場合は処分対象となる旨明記した上で、労働組合活動への参加等に関する事項を含む内容のアンケート調査を実施したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は市に対し、文書手交を命じた。 
命令主文   被申立人は、申立人X労働組合連合会、同X2労働組合、同X3労働組合及び同X4労働組合に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月  日
  X労働組合連合会
   執行委員長 B 様
  X2労働組合
   執行委員長 B 様
  X3労働組合
   執行委員長 D 様
  X4労働組合
   執行委員長 E 様
Y市
Y市長 G
Y市公営企業管理者 Y市交通局長 H
Y市公営企業管理者 Y市水道局長 J

  当市が、平成24年2月9日付け「労使関係に関する職員アンケート調査」を実施したことは、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。    

 
判断の要旨  1 本件アンケート調査の実施主体について
 被申立人市は、アンケート調査の実施主体は市ではなく、日弁連ガイドラインに基づいて組織され、市から独立した第三者である調査チームであって、市にはアンケート調査の実施及び内容項目について帰責性がない旨主張する。
 しかし、当該調査チームの構成員である特別顧問及び特別参与は全員が市の特別顧問等設置要綱に基づき市から委嘱された者であること、同要綱中に特別顧問及び特別参与について市からの独立性を保証するような条項は定められていなかったことなどからみて、当該調査チームは日弁連ガイドラインに則って組織される第三者委員会のような委員会とは異なり、市の影響の下、市の枠組みの中に置かれていたといわざるを得ない。
 また、市職員に配布された、調査の趣旨を説明したメッセージには、「市長(又は、交通局長、水道局長)の業務命令として、全職員に、回答していただくことを求めます」等の記載があること、市長名(又は、交通局長名、水道局長名)の署名がなされていたことなどからすると、アンケート調査を行うのは上記調査チームであるというよりも、むしろ、市であったといわざるを得ない。
 以上のことからすれば、アンケート調査の実施主体を本件調査チームとみることは困難であって、調査は市によって行われ、その実施が不当労働行為に該当する場合には、その責任は市が負うべきものとみるのが相当である。
2 本件アンケート調査の実施が不当労働行為に該当するか否かについて
 (1)調査の質問項目等について
 アンケート調査の質問項目及び回答選択肢の中には、本件調査チームによる調査報告書に記載されている「違法ないし不適正行為」(実質的ヤミ専従及び勤務時間内組合活動など)とは直接の関係がなく、むしろ、組合活動そのものについて質問するものであったり、アンケート作成者側が組合及び組合活動について否定的な評価を有しているとの印象を回答者である職員に与えるような項目であったりするものが少なからず存在する。一方、市長がこれまでの市職員の組合活動について否定的な見解を強く表明している状況下で強制力を背景とし、かつ記名式で行われた調査であったことも考慮すれば、その余の項目について検討するまでもなく、本件アンケート調査を実施したこと自体が組合活動に対する支配介入であったといわざるを得ない。
 (2)不当労働行為成立阻却事由について
 市は、市に不健全な労使関係が露呈した状況が不当労働行為成立阻却事由に該当するものである旨主張する。
 確かに、市において、「実質的ヤミ専従」等の不適切な事象を前提として勤務時間内の組合活動について何らかの方法で調査を行う必要性があったことは否定できない。
 しかし、労働団体の実態を解明する必要があったとしても、まず、それぞれの事象に即して調査が行われるべきであり、また、市の主張するような必要性に基づきアンケート調査という手法がとられるとしても、これによって本件アンケート調査が正当化されるものでもない。
 そもそも不当労働行為成立阻却事由という考えが認められるか否かについては議論があるところであるが、仮にそのような考え方が認められるとしても、上記のような手順を踏むことなく、市の全職員を一律に対象とし、市長等の業務命令により行われた本件アンケート調査について、不当労働行為の成立を阻却するまでの特段の事情を認めることはできない。
 以上のとおりであるから、本件アンケート調査は、市が主体となって行ったものであり、かつ、支配介入であると認められるものであるところ、調査が行われた事情を勘案したとしても、不当労働行為の成立を妨げる特段の事情を認めることはできず、本件アンケート調査の実施は市による組合に対する支配介入に当たり、労組法7条3号に該当する不当労働行為であると認めるのが相当である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成25年(不再)第22、23、24号 棄却 平成26年6月4日
 
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