労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  静和会 
事件番号  中労委平成25年(不再)第15号 
再審査申立人  医療法人社団静和会労働組合(以下「組合」) 
再審査被申立人  医療法人社団静和会(以下「法人」) 
命令年月日  平成26年5月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 平成22年5月、法人が経営する病院の臨床検査科において、検体検査の際に検体取違え事故が発生した。このため法人は、10月、臨床検査科の検体検査業務の一部の外部委託を含む検査体制の変更(本件体制変更)を図ることとし、主として検体検査を担当していた組合員であるAに対し、雇用の打ち切りと再就職のあっせんを提案した。
2 23年4月18日、法人は、5月2日付けで、検体検査業務を外注化すること(本件外注化)を含む臨床検査科の本件体制変更を行い、Aは同日から新設された採血検査係に配置され、主に採血業務を行うことになった(本件業務任命)。
3 23年4月25日、組合は「検査体制の変更とAらの雇用について」を議題とする団体交渉を申し入れた(本件団交申入れ)が、法人はこれに応じなかった。
4 23年7月25日、組合は、本件業務任命は労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に、本件団交申入れ拒否は同条第2号の不当労働行為に当たるとして、北海道労働委員会へ救済を申し立てた。
5 初審北海道労働委員会は、法人の対応はいずれも不当労働行為に当たらないとして、組合の救済申立てを棄却した。
6 組合は、初審命令を不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  組合の再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件業務任命は労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。
 (1) Aは、臨床検査技師(検査技師)として、臨床検査科で主に検体検査に従事してきたが、本件業務任命発令後は、主として検体検査を目的として採取する採血の業務に従事しており、同発令前に従事していた検査業務自体には従事していないこと、また、同業務任命により、同人の手待ちの時間が大幅に多くなったこと等からすると、同人は、同業務任命発令後は検査技師としての資格・専門的能力を十分に発揮し難い職務に従事しているばかりでなく、同人の職務上の技能向上ないし検査技師としての自負心が著しく損なわれているのであるから、同業務任命は労組法第7条第1号にいう「不利益な取扱い」である。
 (2) しかしながら、臨床検査科における検体取違え事故発生後、① 法人には医療上の安全、信頼の確保の観点から同科に係る業務改善について改革が求められていたこと、② これに対し法人の採った方策(本件体制変更及び本件外注化)が不合理なものとは認められないこと、③ Aは十分な検査技能を習得していなかったこと、④ 同人は組合活動の中心的メンバーとして活動してきたが、本件業務任命当時、法人と組合との間には本件を除き紛争は生じていないこと等からすると、本件業務任命がAが組合員であること又は同人の組合活動の故に行われたものであるとみることは困難であり、労組法第7条第1号の不当労働行為には当たらない。
 また、これが組合を弱体化するなど組合の運営に介入するために行われたものとは認め難く、同条第3号の不当労働行為にも当たらない。
2 本件団交申入れ拒否は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
 (1) 本件団交申入れ前に、本件業務任命に関し、3回の団体交渉が行われたが、これら団体交渉の対応において法人に不誠実なところは認められず、Aの処遇変更の原因となった本件体制変更ないし本件外注化については、既に法人と組合の主張が対立し、議論は平行線となっていた。そして、このことについて組合の新たな提案等が行われたことはうかがわれないのであるから、法人が改めて本件体制の変更ないし本件外注化について団体交渉に応じなければならない事情は存しなかった。
 (2) Aの処遇については、それまでの団体交渉でも具体的な提案や協議等が行われていないのであるから、組合が当該交渉を求めるのであれば、法人はこれに対して誠実に応じる必要があったが、組合は法人のAらの処遇については交渉しないのかとの促しにも応じず、本件団交申入れにおいても、Aの雇用問題に限っての団体交渉は認められないとした。
 (3) そうすると、本件体制変更及び本件外注化については、既に主張が対立し議論は平行線をたどっており、法人が改めて団体交渉に応じなければならない事情もなく、Aの雇用問題のみについての団体交渉は認められないとする組合の対応の状況下にあって、法人が本件団交申入れに応じないことには「正当な理由」があった。
 したがって、 本件団交申入れ拒否は労組法第7条第2号の不当労働行為に当たらない。 
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
平成23年道委不第16号 棄却 平成25年2月22日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約296KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。