概要情報
事件名 |
静和会 |
事件番号 |
平成23年道委不第16号 |
申立人 |
医療法人社団静和会労働組合 |
被申立人 |
医療法人社団静和会 |
命令年月日 |
平成25年2月22日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
平成22年5月、被申立人法人が経営するA病院の臨床検査科において検体取違え事故が発生したことを受け、法人は精度管理調査委員会を設置して臨床検査科における医療安全の確保等について検討を行うこととした。その結果、検体検査については外注化することとなり、同年10月、臨床検査技師である組合員X2及び同X3に対して退職と再就職あっせんが打診されるに至った。同年11月、申立人組合は、臨床検査科の体制変更及び検査技師の雇用問題についての団交を申し入れ、23年2月までの間に3回にわたり団交が開催された。
本件は、以上のような経過を経て、法人が①23年4月に組合員X2に対し、新設の採血検査係への配置転換を命じたこと、②この配転等を議題とする団交申入れを拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
北海道労委は、申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 組合員X2に対する配置転換について
X2は、申立人組合の中心的メンバーとして活動してきたことが認められる。また、本件配転後の業務内容は、それまで従事してきた検体検査と比べると臨床検査技師としての専門的能力を発揮しにくいものであり、同人の自負心を著しく損なう面があることは否定しがたい。
法人が検体検査業務の外注化を決定するに至った経緯をみると、ⅰ)検体取り違え事故の前後に、以前から起きていたのと同種のインシデント事故が多発し、改善がみられず、医師の信頼が得られていない状態が続いていたこと、ⅱ)改善策を臨床検査科の検査技師に求めても、既にやっていて当然のような回答しかないなどの理由から、現体制での改善は無理と考えるに至ったこと、ⅲ)以上を前提に、検査業務を検体検査と生理検査に分離し、検体検査業務を外部委託することを決定したことが認められる。そして、X2は、院内で行われなければならない生理検査(7種)の全てを行うことはできなかったため、同業務以外での処遇を検討せざるを得なかった事情を認めることができる。
以上のような経緯からは、臨床検査科の体制変更及びそれに伴うX2の配転が、同人が組合員であること等を理由に又はそのことを考慮した結果、行われたものであると推認することはできない。
もっとも、当該体制変更に至った手続には、臨床検査科職員の勤務状況及び意向等を丁寧に聴取しようとする姿勢に欠けていたことなど不適切な面があったことは否定できないが、このことをもって直ちに、当該体制変更及び本件配転が、X2が組合員であること等を理由に行われたものであると結論づけることはできない。
以上のとおりであるから、本件配転は労組法7条1号の不利益取扱いには該当しない。
2 団交拒否について
組合は、平成23年4月の団交申入れを法人が拒否し、それ以前に行われた3回の団交においても、質問に対して具体的に説明しないなど誠実に交渉を行わなかった旨主張する。
しかし、法人は上記の団交申入れに対し、X2らの労働条件に関しては団交に応じると回答している。また、実施された3回の団交の中で、外注化を行う必要性や組合の提案した代替案が実施できない理由について一通りの説明をしており、双方の主張が平行線をたどっていたことが認められる。そうすると、法人の一連の対応に、団交拒否ないし不誠実な対応があったとまで認定することはできない。 |
掲載文献 |
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