労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  野村證券 
事件番号  中労委平成25年(不再)第37号 
再審査申立人  東京管理職ユニオン(以下「組合」) 
再審査被申立人  野村證券株式会社(以下「会社」) 
命令年月日  平成26年5月21日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合が、① 組合と会社との間で、平成23年6月22日から同年8月18日までの間に、会社の従業員であるA組合員(以下「A」)に係る22年度期末評価、Aに対する賞与の不支給、「降格」等を議題として行った3回の団体交渉(以下「本件各団交」)において、会社が誠実に対応しなかったこと、② 第3回団交終了時に、組合が次回団交を申し入れたこと(以下「本件団交申入れ」)に対し、会社が回答日に具体的な団交日時を提案しなかったことが、いずれも労組法第7条第2号の不当労働行為に当たると主張して、救済を申し立てた事件である。
2 初審東京都労委は、本件申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件各団交における会社の対応が不誠実であったといえるか。
 (1) 使用者には、自己の出張を労働組合が理解し、納得することを目指して誠意をもって団体交渉に当たらなければならず、労働組合の要求や主張の具体性の程度に応じて的確な回答や主張をし、必要に応じて自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示したりするなど、見解の対立を可能な限り解消させる努力をすべき義務があり、これに反して使用者が、不誠実な態度をとった場合も、団交拒否として不当労働に当たると解される。
 (2) ア 組合が申し入れた協議事項の内容は、事実関係に関する主張ないし意見が記載されているのみであるなど漠然としたもので、組合は、会社から協議事項を具体化するよう依頼されてもこれに応じなかったが、結局、会社は、協議事項の具体化に固執せず、本件各団交に応じている。そして、本件各団交において、会社は、
 ① Aの期末評価については、会社が調査をした結果等を基に、用いられた評価方法の位置付けやAの評価が低かった理由等を説明し、
 ② Aに対する年度末評価については、人事評価や評価面談の意義・方法、評価面談を複数名で行った理由等を説明し、
 ③ Aに対する賞与の不支給については、就業規則の該当条文を示すなどしながら、会社の賞与決定の方法やAの賞与が不支給であった理由等を説明し、
 ④ Aに対する「降格」については、会社における「降格」の意義やコーポレートタイトルの位置付け、Aの役割変更の理由等を説明し、
 その他の事項についても、会社の主張、見解の根拠を具体的に説明していたものと評価することができ、その内容に不合理な点は見当たらない。
 他方で、組合は、会社の具体的な説明を踏まえた質問や、建設的な要求・主張を行うことなく、自己の見解に固執した主張等を繰り返し、大声で発言し、会社の説明を遮るなどといった場面も見られ、その結果、正常な団交の実施に支障が生じていたものと認められる。
 こうした本件各団交に至る経緯、組合の主張の具体性や追求の仕方、これに応じた会社側の説明の程度・態度等に照らせば、本件各団交において、会社は、見解の対立を可能な限り解消させる努力をしていたものというべきである。
 また、会社の交渉担当者が交渉権限を有していたことは明らかである。
イ 以上によれば、本件各団交における会社の対応は、使用者の誠実交渉義務に違反する不誠実な対応であるとは認められないから、労組法第7条第2号の不当労働行為には当たらない。
2 会社が、本件団交申入れに対し、具体的な団体交渉日時を提案しなかったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか。
 会社は、団交日時の回答期限日に、組合に電話をかけ、次回団交を開催するにあたり、威圧的な罵声をやめること等を要望したものであるところ、その内容や本件各団交の経緯に照らせば、その趣旨・目的は、要望の受諾等を前提条件としたものではなく、団交の円滑な実施を図るための「事前折衝」として提案したものと考えられ、不合理なものということはできない。
 これに対し、組合は、縷々述べて電話を切り、話し合う姿勢を見せなかったというのであり、こうした経緯に照らせば、会社は、組合が電話を切ってしまったことから、団交日時等を回答することができなかったものと見るのが相当であり、その直後に、組合が会社に対し新たな団交申入れをしていることも考慮すれば、上記期限日に会社が具体的な団交日時を回答しなかったことをもって団体交渉を拒否したものと認めることはできない。
3 結論
 以上のとおり、本件各団交における会社の対応が不誠実であったとは認められず、また、本件団交申入れに対する会社の対応が正当な理由のない団交拒否に当たるとも認められないことから、本件再審査申立ては理由がない。 
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成23年(不)第90号 棄却 平成25年5月7日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約288KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。