労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東京コンドルタクシー 
事件番号  中労委平成24年(不再)第75号 
再審査申立人  一般合同労働組合東京北部ユニオン(以下「組合」) 
再審査申立人  同コンドルタクシー分会(以下「分会」、組合と併せて「組合ら」) 
再審査被申立人  東京コンドルタクシー株式会社(以下「会社」) 
命令年月日  平成26年3月19日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①組合の副執行委員長であり、分会の分会長でもあるAに対し、同人が起こした自転車との衝突事故(「本件事故」及び同人が犯した通行禁止違反(「本件違反」)について、22年3月25日付けで出勤停止処分及び自主退職勧告(同処分及び同勧告を併せて「本件措置」という。)をしたことは労組法第7条第3号に、②同年8月15日で期間が満了する同人との再雇用契約(「本件再雇用契約」)を更新しなかったこと(「本件雇止め」)は同条第1号及び第3号に、③組合らが同月2日付け及び同月13日付けで申し入れた本件雇止め等を議題とする団体交渉(「団交」)に応じなかったことは同条第2号にそれぞれ該当する不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、会社に対して上記③に係る文書交付及び掲示を命じ、その余の組合の救済申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社がAに対してした本件措置が、労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるか。
(1) 本件措置の直前まで会社と組合らとが対立関係にあったことを考慮し、本件措置は、会社が、組合ら及びAの組合活動を嫌悪し、本件事故・違反を奇貨としてなされたものと推認するには、以下のア~ウにより合理的な疑いが残る。
ア 仮に、組合らからの団交申入れに対する会社の対応が、組合らあるいはAの組合活動に対する嫌悪の情によるものであれば、Aの起こした交通事故等に対し、会社が何らかの処分等をすることも考えられるところ、同人に処分等が行われたことはない。
イ 仮に、会社が、組合らによるストライキ等により、組合ら及びAを嫌悪していたとすれば、Aを再雇用しなかったとしてもおかしくはないが、実際には、Aの再雇用の決定に当たり会社は審査委員会を開催し、最終的には社長の判断による特段の措置として、交通事故等起こした場合は、厳しい措置を課す旨等の特記事項を付してAの再雇用を決定した。
 この点について、組合は、審査委員会を開催し、特記事項を付すなどの異例の手続をとったのは、Aや組合らに対する嫌悪の現れである旨主張するが、Aを再雇用すれば同人が再び交通事故等を起こすおそれがある一方で、再雇用しなければ労使間対立を助長するおそれがあったため、会社は、慎重に判断すべく審査委員会を開催したものとみることができ、また、再雇用に反対する意見に配慮して特記事項を付したものとみることができる。
ウ さらに、Aは、会社が組合掲示板の利用を妨げている状態が継続するなどしていた時期に本件事故を起こしているが、仮に、会社の同対応が組合らあるいはAの組合活動を嫌悪していたためであるとすれば、本件事故を奇貨として本件措置をしてもおかしくはないが、会社が本件措置をしたのは、本件違反後である。
 この点、本件措置の前日に提出された春闘要求書が引き金となって会社が本件措置をしたとも考えられるが、春闘要求は過去にも行われているため、特段の事情もなく、春闘要求書の提出が引き金となったとみるのは、不自然である。
(2) かえって、以下のア~ウによれば、会社が本件事故・違反を理由として本件措置をした可能性も、十分あり得るものということができる。
ア 本件事故・違反は、いずれも懲戒処分の対象行為に該当する。
イ Aの再雇用前の事故歴等や再雇用に当たって、交通事故・違反等を起こした場合は厳しい措置を課す旨等の特記事項が付されていた状況下で本件事故・違反に至ったという経緯、本件事故・違反の態様、結果等に加え、乗客を目的地まで安全に運送することを第一とするタクシー会社にとって、交通事故や交通違反は、会社の社会的信用を失わせるものであり、会社が、これらを重くみて、Aに対して本件措置をしたとしても、不自然であるとはいえない。
ウ また、本件措置の内容は、2乗務の出勤停止処分と自主退職勧告であるところ、これは会社等における他の事例と比べても格別重いものであると断ずることはできない。
(3) これに対し、組合は、本件事故は、行政上の責任評価としては軽微な物損事故として取り扱われていることから、行政上の評価を経てから処分を行うべきであったなどと主張するが、本件事故の態様等に照らせば、会社が行政上の評価を勘案せずに本件措置をしたことが不当であるともいえず、組合の主張は、採用することができない。
(4) 以上のとおり、会社がAの組合活動を嫌悪し、本件事故・違反を奇貨として、本件措置をしたとみるには合理的な疑いが残る一方で、多数の事故歴等があるにもかかわらず再雇用された後に本件事故・違反を犯すに至ったという経緯等に鑑みれば、本件事故・違反を理由として本件措置をしたものとみる余地も十分あり得、本件措置が労組法第7条第3号の不当労働行為に当たるものと認めることはできない。
2 会社がAに対して本件雇止めをしたことは、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるか。
(1) 本件雇止めは、Aを会社が嫌悪し、同人を排除するため、本件事故・違反を口実として行われたものとみるには、以下のア~ウにより、合理的な疑いが残るといわざるを得ない。
ア 本件措置後の労使関係事情としては、組合らが春闘要求に係る団交を申し入れ、会社が応じない状況にあったことが認められるが、春闘要求は過去にも行われているため、特段の事情もなく、春闘要求に係る団交申入れを理由に会社が本件雇止めをしたとみるのは、不自然である。
イ また、Aは、再雇用に当たって、特記事項が付されているにもかかわらず、本件事故・違反を犯しており、乗務員として問題があると会社が評価してもやむを得ない。そして、会社は、本件事故の直後には再雇用契約を更新しないことを決定していた可能性も否定できない。
ウ さらに、組合は、再雇用契約の更新は従来形式的であった旨等主張するが、就業規則上、再雇用契約は1年毎に行うとされていることなどからすると、組合の主張は採用できない。
(2) 以上のとおり、会社が、組合らやAの組合活動を嫌悪し、本件事故・違反を奇貨として、Aの再雇用契約を更新しなかったとみるには合理的な疑いがある一方で、Aが本件事故を起こすに至った経緯等に鑑みれば、本件事故を理由としてAの再雇用契約を更新しないことしたとみる余地も十分あり得ることから、Aの再雇用契約を更新しなかったことが不利益な取扱いであったか否かを判断するまでもなく、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に該当するということはできない。
 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
都労委平成22年(不)第37号・第84号 一部救済 平成24年11月20日
 
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