概要情報
事件名 |
東京コンドルタクシー
|
事件番号 |
都労委平成22年(不)第37号・第84号
|
申立人 |
一般合同労働組合東京北部ユニオン
|
被申立人 |
東京コンドルタクシー株式会社
|
命令年月日 |
平成24年11月20日
|
命令区分 |
一部救済
|
重要度 |
|
事件概要 |
被申立人会社が、①定年後再雇用によりタクシー乗務員として勤務していた申立人組合の分会長X2に対し、懲戒処分を行うとともに、退職を勧告したこと、②同人との再雇用契約を更新しなかったこと、③当該再雇用契約の終了についての団交に応じなかったことは、不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
東京都労委は会社に対し、文書の交付・掲示及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。
|
命令主文 |
1 被申立人東京コンドルタクシー株式会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人一般合同労働組合東京北部ユニオンに交付するとともに、同一内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に、楷書で明瞭に墨書して、会社内の従業員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
記
年 月 日
一般合同労働組合東京北部ユニオン
委員長 X1 殿
東京コンドルタクシー株式会社
代表取締役 Y1
当社が、貴組合が申し入れた貴組合の組合員X2の再雇用契約の終了についての団体交渉に、その契約期間終了前に応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないように留意します。
(注:年月日は文書を交付又は掲示した日を記載すること。)
2 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
3 その余の申立てを棄却する。
|
判断の要旨 |
1 申立人組合の分会長X2に対する懲戒処分及び退職勧告について
組合が申し立てた前件事件(平成21年不第47号)については、平成21年9月、当委員会において和解が成立したが、認定した事実によれば、被申立人会社がその後も、組合及び分会長として活発に活動していたX2を強く嫌悪していたこと、また、組合の勢力拡大を警戒し、その活動を牽制していたことは否定し難い。
X2に対する本件懲戒処分及び退職勧告は、同人の22年2月の事故及び同年3月の交通違反を理由として行われたものであるが、同人が起こした過去の事故や違反に対する会社の対応と独立に比較すれば、厳しい措置であったとの評価もあり得ないではない。しかし、X2が1か月の間に2件連続して事故及び違反に及んだことに鑑みれば、明らかに不必要な処分等を行ったものともいえないし、他の事故及び違反事例における組合員以外の乗務員に対する措置と比較して必ずしも過重であったということはできない。したがって、前記のとおり、会社が組合を嫌悪していた事情を考慮しても、会社のかかる措置が組合の運営に対する支配介入であるということはできない。
2 X2の再雇用契約を更新しなかったことについて
X2の起こした本件事故及び違反は、会社が他に自主退職を勧告した事例及び解雇通告した類似の事例と比較して必ずしも軽微ということはできず、また、これらの乗務員は全て自主退職している。これらの事例との均衡を考慮すれば、X2が本件事故及び違反に及んでもなお、当然に再雇用契約を更新されてしかるべきであったということはできず、会社が最初の再雇用契約期間満了をもって同人との雇用関係を終了したことにも相応の理由があったといえるし、また、同人のみがこれら組合員ではない乗務員と比較してより不利益な取扱いを受けたともいえない。
したがって、会社がX2との再雇用契約を更新しなかったことは、同人の組合活動又は同人が組合員であることの故をもって行われた不利益取扱いであるとまでいうことはできないし、また、組合の運営に対する支配介入であるということもできない。
3 団交拒否について
組合及び分会は、平成22年8月2日、会社に対し、契約期間が同月15日までとされていたX2の再雇用契約の終了等について、同月13日までに団交を行うよう申し入れた。8月15日までに団交が行われなければ、そのまま契約が終了する状況にあったのであるから、会社はこの日までに団交を行えないというのであれば、それ相応の事情を示して組合の納得を得る努力をすべきであったといえる。しかし、会社の8月4日付けの回答の内容から、8月13日までに団交を行うことができないとの具体的な事情までをみてとることは困難である。そして、会社が、X2に対する解雇などは行っていないので、解雇問題は議題にしない旨述べ、あたかも再雇用契約の終了を巡る問題自体が存在しないかのごとき態度を示していることも踏まえれば、会社は意図的に8月15日の同人の再雇用契約の終了まで団交を避けようとしたものと判断せざるを得ない。
したがって、会社がX2の再雇用契約の終了についての団交に、その契約の終了までに応じなかったことは、正当な理由のない団交の拒否に当たる。
|
掲載文献 |
|