労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  岐阜県労委平成24年(不)第2号・第4号、平成25年(不)第1号 
事件番号  岐阜県労委平成24年(不)第2号・第4号、平成25年(不)第1号 
申立人  X労働組合 
被申立人  Y株式会社 
命令年月日  平成26年2月18日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社が①団交で具体的な回答を行わなかったこと等、②社内報で、申立人組合を脱退すれば得をするなどと慫慂したこと、③団交で夏季一時金の支給額の根拠及び支給基準を明らかにしなかったこと、④年末一時金の支給に際して組合の役員4名に対し、源泉徴収義務に基づく税務手続を行わなかったこと、⑤年末一時金に関する団交において、各種手当に関する事項等とセットでなければ妥結しないと固執したこと等は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 岐阜県労委は会社に対し、上記②の社内報等の文書の配布による組合の運営に対する支配介入の禁止を命じ、その余の申立てを棄却した。 
命令主文  1 被申立人は、申立人の組合員が労働組合から脱退することを慫慂するなどの申立人の組織化に影響を及ぼす記事を掲載した日幸ほっと通信その他の文書を配布するなどして、申立人の運営に支配介入してはならない。
2 申立人のその余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 団交で具体的な回答を行わなかったこと等について
 申立人組合は、平成24年7月17日に組合役員が被申立人会社の代表者らと面会した時に要求内容を説明したにもかかわらず、会社が第1回団交において具体的要求に回答せず、要求内容の再度の説明を求めたことは回答の引き延ばしに当たると主張する。
 しかし、7月17日の面会時には組合が要求事項を読み上げたのみであるから、十分な説明がなされたとまではいえない。また、組合の突然の来訪という当時の状況に照らせば、会社は要求事項について質問ができる状況にもなかったと解するのが相当である。したがって、会社が第1回団交で改めて組合に要求内容の説明を求めたことは正当な要求であったといえる。
 組合はまた、会社が第2回団交において、労働条件に関する要求については全従業員の声を聞いて判断するため、回答が数か月後になるとしたことは不誠実であると主張する。
 しかし、組合の要求する労働条件の改善を全て実施するには多額に資金を要することが見込まれ、組合はその要求の内容、根拠について会社に説明すべき立場にあったが、事実上それをしていないと推認される。その意味において、会社が組合の要求事項は全従業員に関連することとして意見を聴取し、その上で回答しようとしたことには一定の理由があるとも考えられ、当該対応が直ちに不当労働行為に当たるとまではいえない。
2 社内報で、申立人組合を脱退すれば得をするなどと慫慂したことについて
 平成24年8月21日に発行された社内報第3号についてみると、「知って得する その3」の「○○(注:会社名)はオープンショップ制にあたるため、労働組合に加入するか否かは自由であり、脱退も自由である」との内容については、組合結成後間もない時期に組合からの脱退は自由であるとの記事を社内報にあえて掲載し、全従業員宅に送付してまで知らしめる必要性は認められない。また、「知って得する その4」として掲載された日本の労働組合の組織実態に関する記事については、特定の団体と組合とを関連付けようとした意図が推認され、また、そのことをその時期に社内報に掲載する必要性も認められない。以上に社内報第3号の発行時期、発行方法も併せて判断すると、結成後間もなく、組合員の獲得に腐心もしていたと推測される組合にとって少なからぬ痛手となった可能性を否定することができない。したがって、これらの記事は労組法7条3号の不当労働行為に該当するといわざるを得ない。
3 団交で夏季一時金の支給額の根拠及び支給基準を明らかにしなかったことについて
 会社は、正社員各人の夏季一時金の支給額は人事考課によって決まること、評価は8ランクに分かれていることを第3回団交で明らかにしたが、組合が質問した評価基準については同団交後、開示しない旨を回答した。また、第4回団交では、夏季一時金の算出方法を説明するとともに、評価ランクごとの人数分布や評価の項目、評価方法等について回答した。このような状況からみると、会社は団交が可能となる資料を開示はしているものと解され、有意な団交が可能となる程度の資料開示がなされているかに関しては、組合の欲する資料の開示がないからといって、会社が開示した資料によっても有意な団交が可能であることから、会社が不誠実であったとまで断ずることはできないと解される。
4 年末一時金の支給に際して組合の役員4名に対し、源泉徴収義務に基づく税務手続を行わなかったことについて
 後記5に述べるとおり、年末一時金交渉について、会社が時間給労働者の賃上げ等とセットでの妥結を求めたこと自体は不合理とまではいえず、その結果として、年末一時金の支給が遅れ、組合役員らに係る年末調整事務が年内に行えなかったことは、やむを得なかったものと認められる。そして、翌年2月の給与支払時に会社が自ら組合役員らの年末調整の修正処理を行った事実をも考慮すれば、会社の対応がことさら組合嫌悪や反組合的意思ないし動機をもって行われたものと認めることはできない。
5 年末一時金に関する団交において、各種手当に関する事項等とセットでなければ妥結しないと固執したこと等について
 組合は、会社は年末一時金について時間給労働者の賃上げや各種手当とセットでなければ妥結しないと第7回団交で回答したが、これは同団交で初めて具体的に回答したものであり、組合に十分な検討の機会を与えておらず、組合が直ちに合意できないことが明らかであり、今後の団交の放棄を求めるものであると主張する。
 しかし、会社はそれまでの組合との一連の交渉を経て回答していること、第7回団交の後、近接した期間内に第8回、第9回の団交を開催し、合意に向け継続して交渉に応じたこと、正社員に対する年末一時金及びフルタイム従業員(非正社員)に対する寸志について、セット妥結に至っていないにもかかわらず、組合が合意を表明した額を支給したことなど一連の経過等を含めて評価すれば、セット妥結という主張は必ずしも頑ななものではなく、会社が組合に団交の放棄を求めているとまではいえない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成26年(不再)第11号 一部変更 平成27年11月18日
 
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