概要情報
事件名 |
大阪府労委平成24年(不)第78号 |
事件番号 |
大阪府労委平成24年(不)第78号 |
申立人 |
X労働組合 |
被申立人 |
株式会社Y |
命令年月日 |
平成25年12月10日 |
命令区分 |
全部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社(理容室・美容室の経営を業とするもの)が、会社の店舗で「マネージャー」として勤務していた組合員2名に対し、他の店舗で「スタイリスト」として勤務することを命じたことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
大阪府労委は会社に対し、上記組合員2名の人事異動がなかったものとして取り扱うこと及び文書手交を命じた。 |
命令主文 |
1 被申立人は、申立人組合員X2及び同X3に対して行った平成24年9月1日付け人事異動がなかったものとして取り扱わなければならない。
2 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
記
年 月 日
X労働組合
執行委員長 X1 様
株式会社Y
代表取締役 Y1
当社が、貴組合員X2氏及び同X3氏に対して行った平成24年9月1日付け人事異動は、大阪府労働委員会において、労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。 |
判断の要旨 |
1 本件人事異動の不利益性の有無について
認定した事実によれば、両組合員は本件人事異動により、「マネージャー」から2段階の降職を受けた上に、サービス内容及び運営形態等が異なり、個人事業主だけで社員のいない店舗に異動させられているのであり、①「マネージャー」という責任ある地位から降格されたこと、②従前に獲得した指名客を失い、また、今後の指名客獲得の機会を失ったこと、③パーマやカラー等のスキルアップの機会を奪われたこと、④個人事業主だけで社員のいない店舗で働くことに加え、他の従業員と異なる勤務時間を命じられ、意思疎通もままならないこと、などを総合的に勘案すると、様々な有形無形の不利益が生じていたとみるのが相当である。
2 本件人事異動は組合員であること等による取扱いであるか否かについて
平成24年1月以降、申立人組合と被申立人会社との間で未払賃金に関する団交が続けられており、同年7月には両組合員が未払賃金について訴訟を提起したことが認められるのであり、会社と組合との間に対立関係があったものといえる。また、当該訴訟の提起から両組合員に本件人事異動の通知がなされるまでの期間はわずか1か月しかないことが認められる。
会社では、両組合員の他に「マネージャー」から「スタイリスト」になったような例があるとの疎明もないことに加え、24年2月の従業員に対する給与制度変更等についての説明会における会社社長の発言や、会社の部長Y2が本件人事異動の辞令交付を行った際に従業員の前で、「表向きの理由は」と断った上で異動理由を述べたこと等から、会社の組合又は組合員に対する嫌悪感が強く推認できる。
以上のことから、本件人事異動は組合員であること又は組合活動を行ったこと故になされたものといわざるを得ない。
3 本件人事異動の正当性について
会社は、「マネージャー」が会社の利益代表の立場にあり、労働組合員に管理職としての職務を課すことが適当でないため、両組合員の「マネージャー」の職務を免除した旨主張する。しかし、会社においては、人事面でもそれ以外の面でも「マネージャー」が会社の利益を代表する立場にあるとみなすことはできない。また、会社のいう機密情報に接する立場にあって、店舗スタッフの技術評価、フロント評価や、誰がいつ退職するか等の人事情報を一般従業員よりも前に知り得る立場にあったことは認められるが、これらの情報に接することがあっても、労働組合との利益相反を招くことになるとは考えられない。
以上のとおり、「マネージャー」であることと労働組合員であることとが基本的に相反するとはいえず、上記会社の主張は採用できない。
会社は、本件人事異動により両組合員の勤務店舗を変更した理由について、「スタイリスト」の人手が不足している度合いが大きい店舗に配置したもので、合理的な人事であったとも主張する。しかし、この主張は、Y2が辞令交付時に述べた表向きの理由と同旨であると評価でき、会社の企図した本当の理由ではないことが推認できるのであるから、この主張も採用できない。
4 結論
以上を総合すると、本件人事異動は組合員であること又は組合活動を行ったことに対して行われた不利益取扱いであるといえる。同時にこの取扱いは、従業員に対し、組合に加入すれば不利益な取扱いを受けるものと受け止められるものであり、組合加入をためらわせるものということができ、組合に対する支配介入に当たるものといえる。 |
掲載文献 |
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