労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  リオン 
事件番号  都労委平成22年不第53号 
申立人  全日本金属情報機器労働組合、同東京地方本部、同リオン支部 
被申立人  リオン株式会社 
命令年月日  平成25年11月19日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社は、平成19年9月、全社員に対し、家族手当の削減及び地域手当の廃止等を伴う新人事制度を20年4月から導入すると通知した。申立人組合(支部)と会社とは、団交、労使協議会及び事務折衝などで同制度について協議を重ねたが、合意には至らず、同年10月1日、会社は同制度を導入した。その後も、同制度に関する団交は継続されたが、合意に至らなかった。
 本件は、①新人事制度を議題とする団交における会社の一連の対応、②会社が同制度の導入に際して家族手当の削減及び地域手当の廃止を実施したこと、③会社が、全社員に配付している「人事ニュース」及び「労働ニュース」に、ストライキ、団交及び組合らを批判する内容の記事を掲載したこと、④会社が団交において、「時短(休日増加)に関する協定」及び「労使協議会に関する協定」を「破棄する」などと発言したことは不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
 東京都労委は会社に対し、1 上記③の行為による、組合らの運営に対する支配介入の禁止、2 文書の交付・掲示、3 履行報告を命じ、その余の申立てを却下又は棄却した。 
命令主文  1 被申立人リオン株式会社は、「人事ニュース」及び「労働ニュース」に、申立人全日本金属情報機器労働組合、同全日本金属情報機器労働組合東京地方本部及び同全日本金属情報機器労働組合東京地方本部リオン支部の内部運営や組織形態を問題視する記事を掲載するなどして、申立人組合らの運営に支配介入してはならない。
2 被申立人会社は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記内容の文書を申立人組合らに交付するとともに、同内容の文書を55センチメートル×80センチメートル(新聞紙2頁大)の白紙に楷書で明瞭に墨書して、被申立人会社の本社内の社員の見やすい場所に10日間掲示しなければならない。
(記 省略)

3 被申立人会社は、前項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 新人事制度導入に伴う家族手当の削減及び地域手当の廃止、並びに平成21年5月10日より前の、新賃金制度についての団体交渉、「人事ニュース」及び「労働ニュース」の記載に係る申立てを却下する。
5 その余の申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 新人事制度についての団交等について
 本件審査の対象は、申立ての1年前である平成21年5月10日以降の行為であるから、同年6月2日以降の団交における被申立人会社の対応について、以下検討する。
 申立人組合らは、会社が新人事制度導入後も、組合らの問題点の指摘や説明の要求に対し、何ら具体的な回答や資料の提示を行わず、自らの一方的な主張を繰り返す態度に終始したと主張する。
 認定した事実によれば、確かに会社の一連の対応は一方的な主張を繰り返す態度と評価される余地がないわけではない。しかし、組合(支部)は新人事制度の導入に際し、会社の説明及び提示した資料に基づき、同制度に関する資料を3種類作成して組合員に配付し、また、その作成した資料を用いて組合員に対する全体説明会や職場討議を行った事実が認められる。こうした事実は、同制度導入に際し、会社が同制度の概要について組合(支部)の理解を得るべく説明及び資料の提示を行っていたことを裏付けるに足りるものであり、同制度の導入を二度にわたって延期して妥結の方途を探っていた事実を併せ考慮すれば、会社が組合(支部)を無視して同制度の導入を強行したとみるのは相当でない。
 また、新人事制度導入後、21年6月2日の団交での組合(支部)の質問に対する会社の回答は合理性に欠けるものとまではいえないし、同年12月15日付文書での組合(支部)の質問は同制度導入以降の経緯を踏まえた具体的な質問とはいい難く、会社の回答が抽象的な内容にとどまったのもやむを得ないというべきである。さらに、組合らが会社に対し、更なる具体的回答を求める要求や質問を行った事実を認めるに足りる疎明もない。
 したがって、会社が組合らに対し、自らの一方的な主張を繰り返す態度に終始したとまではいえない。また、会社は、子育て支援策の新設や、労使合意を前提とする年齢給増額等の譲歩提案を行うなど、合意を得るべく努めていたとみることができる。
 以上を総合考慮すれば、21年6月2日以降の団交における会社の対応は、不誠実な団交には当たらないというべきである。
2 家族手当の削減及び地域手当の廃止について
 これらの実施時期は20年10月1日であるから、これらに係る申立ては申立期間を徒過しており、却下を免れない。
3 会社発行の「人事ニュース」及び「労働ニュース」について
 本件申立ての1年前である21年5月10日より前の「人事ニュース」及び「労働ニュース」に係る申立てについては、却下を免れない。
 21年12月10日付「人事ニュースNO 085」の「当社を良く知らない外部の人を含む団体交渉は、交渉を複雑化させ、解決に向かう良い方向とは考えにくい」及び12月28日付「労働ニュースNO 659」の「社外の本部主導か?」などの記載は、本来、労働組合が自主的に決定すべき組合の内部運営や組織形態に言及し、組合(支部)が全日本金属情報機器労働組合の下部組織として行動していることを問題視しているものであるから、組合らの運営に対する支配介入に当たる。
 その他の「人事ニュース」等の記載は支配介入に当たらない。
4 一連の協定を破棄する旨の発言及び提案について
 「時短(休日増加)に関する協定」(組合定期大会日は、正午まで就業し、午後1時以降退出できることなどを定めたもの)については、会社が経営上及び業務上の観点から、支部大会についての便宜供与を問題視していたことは窺えるが、20年11月4日の団交での「回答書」の補足(賃金保障の見直しが必要であるとするもの)を同月11日の団交で取り下げた後は、同協定を含む便宜供与のあり方を見直す旨繰り返し表明していたにすぎず、このこと自体が組合活動の規制や組合の弱体化を意図したものとまでは認められない。
 「労使協議会に関する見直し案の提示」については、同見直し案は事前協議事項や諮問事項を削除した大幅な変更を伴っており、組合らが、労働組合の交渉権や組合(支部)との労使関係を大幅に後退させる内容であると認識するのは無理からぬことである。しかし、会社は今後検討していくことを示唆しているにすぎず、見直し案を提示したこと自体が直ちに組合活動に対する規制や組合の弱体化を意図したものであるとまで評価することはできない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成26年(不再)第4・5号
リオン不当労働行為再審査事件
棄却 平成28年5月11日
 
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