労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  立花商事 
事件番号  福岡労委平成25年(不)第4号 
申立人  連合福岡ユニオン 
被申立人  株式会社立花商事 
命令年月日  平成25年11月22日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   申立人組合が書面及び団交で就業規則の改定部分の写しの交付を要求したのに対し、被申立人会社がこれを拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 福岡県労委は会社に対し、改定した就業規則の写しの交付・誠実団交応諾と文書掲示を命じた。 
命令主文  1 被申立人株式会社立花商事は、改定した就業規則の写しを申立人連合福岡ユニオンに交付した上で、誠実に団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人株式会社立花商事は、本命令書写しの交付の日から10日以内に、A1判の大きさの白紙(縦約84センチメートル、横約60センチメートル)全面に下記内容を明瞭に記載し、被申立人株式会社立花商事本社会議室兼休憩室内の見やすい場所に14日間掲示しなければならない。
平成 年 月 日
  連合福岡ユニオン
   代表執行委員長 X1 殿
株式会社立花商事
代表取締役 Y1
   当社が、貴組合との団体交渉において貴組合の要求する就業規則の改定部分の写しの交付を拒否したことは、福岡県労働委員会によって労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為と認定されました。
   今後、このようなことを行わないよう留意します。 
判断の要旨  1 申立人組合が就業規則の写しの交付を求める理由について
 組合は、改定された就業規則の内容等について被申立人会社と団交をするため、その前提として、改定された就業規則の写しの交付を要求したのであり、そのような要求をしたことについては、団交を遂行する上で相当の理由と必要性があったとみるべきである。
2 会社が就業規則の写しを交付しない理由等について
(1) 組合に就業規則の写しを交付する法令上の義務は負わないとの主張について
 会社は、改定された就業規則について全従業員に対する説明会や組合員である従業員5名を対象とした説明会を行ったこと、また、当該就業規則は会社の会議室兼休憩室に常備されており、従業員が閲覧可能であることから、これを超えて組合に写しを交付する法令上の義務を負わないと主張する。
 しかし、組合は就業規則の改定により変更された労働条件全般を協議事項とすることを意図して写しの交付を求めているものであり、このような場合において、誠実交渉義務を負っている会社が交付要求に応じるべきは当然であって、交付義務を定めた法令上の規定がないことを理由に交付要求を拒否することは認められないというべきである。
(2) 組合は組合員を通じて就業規則の内容を把握することが可能であるとの主張について
 会社は、全従業員に対して就業規則の書写しを許可しているから、組合は組合員を通じて就業規則の内容を把握できる旨主張する。
 しかし、改定された就業規則は条文にして260条を超える大部のものであったことからすれば、これを書き写すことは実際上困難であるといわざるを得ない。
(3) 就業規則を一部開示しており団交に支障はないとの主張について
 会社は、組合と協議すべき事案が生じた際には就業規則の該当箇所を示して説明するなどの対応を行っているので、問題はない旨主張する。
 しかし、組合は就業規則の改定の必要性及び内容の合理性に関して協議することを会社に要求していたことからすれば、たとえその一部の開示がなされたとしても、会社は組合の要求に応えたことにはならないというべきである。
(4) 就業規則の写しの交付によって会社に不利益が生じるおそれがあるとの主張について
 会社は、就業規則には会社内部の情報が盛り込まれているから、組合が入手したならば、社内情報の漏洩や悪用の危険がある旨主張する。
 しかし、就業規則に企業秘密情報が含まれていること及び社内情報の漏洩や悪用の危険があることを認めるに足る疎明はなく、会社の主張は採用できない。
(5) 就業規則の写しの交付を求める具体的必要性が存在しないとの主張について
 会社は、組合員らは改定された就業規則の内容に関心を有しておらず、また、組合も会社が団交で示した組合員の懲戒処分の根拠条文について不合理であると主張していないことから、組合が写しの交付を求める具体的必要性はなかったと主張する。
 しかし、組合員らが改定された就業規則の内容に異を唱えていたことは明らかであって、就業規則の内容に関心を有していなかったとはいえない。また、就業規則の改定そのものが協議事項とされていなかった団交において、組合が開示された就業規則の一部に関して特段の意見を述べなかったからといって、改定された就業規則の合理性に疑問を有していなかったと判断するのは論理的に飛躍があるというべきである。
3 結論
 以上のとおり、組合が改定された就業規則の写しを交付するよう要求したことには相当の理由と必要性が認められる一方、会社がこの要求を拒否する根拠として主張する理由はいずれも妥当性を欠くというべきである。したがって、会社が組合の上記要求を拒否したことは、団交遂行上の必要に基づく組合からの要求に対し誠実に対応するものであったとは認められないのであって、労組法7条2号の不当労働行為に該当する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福岡地裁平成25年(行ウ)84号 棄却 平成26年9月10日
 
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