労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  樋口商店 
事件番号  中労委平成24年(不再)第25号 
再審査申立人  全日本港湾労働組合関西地方建設支部(「組合」) 
再審査被申立人  株式会社樋口商店(「会社」) 
命令年月日  平成25年12月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、①会社が組合員Xの賃金額を減少させたことは、平成16年11月9日に行われたあっせん(以下「あっせん」)での合意に反するもので、支配介入(労働組合法7条3号)に当たるとして、②Xの賃金額の減少は組合員であるが故の不利益取扱い及び支配介入(同法7条1号・3号)に当たるとして、③賃金額の減少に関し、平成22年5月から同年11月にかけて実施した団交(以下「本件一連の団交」)における会社の対応は不誠実団交(同法7条2号)に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、組合の申立てをいずれも棄却したところ、組合が、これを不服として、再審査を申し立てたものである。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社が営業時間を変更したことにより、Xの残業時間が減少して賃金額が減少したこと(以下「Xの賃金額の減少」)は、あっせんでの合意に反したもので、組合に対する支配介入に当たるか(争点(1))。
ア 残業時間の保障の合意に関しては、あっせんの結果としての重要な労使間の合意の際に、当事者間においても覚書等の書面は作成されていないこと、あっせん直後に会社はそうした合意があったとするには沿わない対応をとっていること等から、あっせんにおいて、組合と会社との間に、Xの残業時間を保障する合意は成立していたとは認められない。
イ あっせん案には「事前」に協議を行う旨の文言がなく、従前の協定において事前協議を要することが合意されていた事情が窺えないことなどから、あっせんにおいて、組合と会社との間に、Xの労働条件の変更について事前協議を要する旨の合意は成立していたとは認められない。
ウ 上記ア・イのとおり、あっせんにおいて、Xの残業時間を保障する合意は成立していたとはいえず、また、Xの労働条件変更について事前協議を要する旨の合意も成立していないことから、Xの賃金額の減少が組合に対するあっせん合意に反した支配介入には当たらない。
2 Xの賃金額の減少は、組合員であるが故の不利益取扱い及び組合に対する支配介入に当たるか(争点(2))。
ア 会社は、売上高が減少し、営業利益も減少傾向にある中、Xの勤務する工場の売上高は朝夕の時間帯が低調であり、採算がとれない時間帯もあったことからすると、会社が朝夕の一部についての営業を取りやめ、営業時間変更を行ったことには合理的な理由があったものといえる。
イ 従業員Bの業務は、営業時間前後の作業が必要であったのに対して、Xの業務は、営業時間外の作業が予定されず、基本的に営業時間内に行うことのできるものであったということができ、会社がBに営業時間外の残業を認めているのは、担当する業務の違いによるもので、Xを殊更不利益に取り扱うものであるということはできない。
ウ 会社は組合との間で少なからず対立があり、労使関係は必ずしも良好であったとは言えないものの、会社において組合嫌悪からXの賃金額の減少を企図するような事情があったとまでは窺えない上、営業時間変更は経営上の必要性から採られた合理的な措置と考えられること、Xだけを狙い撃ちにするようなものともいえないことに照らすと、Xの賃金額の減少は、会社が組合嫌悪から行った不利益取扱いとみることはできず、支配介入とみることもできない。
3 Xの賃金額の減少に関する本件一連の団交における会社の対応は不誠実であったといえるか(争点(3))。
ア 組合は会社が団交担当者として適格性のある者を出席させなかった旨主張するが、本件一連の団交において会社の団交担当者として出席した総務部の係長が、3回目の団交においてあっせん案の内容等を確認する旨回答したのは、手元にあっせん案の書面がないことから、慎重を期して、あっせん案の具体的な文言等が組合の述べるような内容であったかどうか確認した上で、組合に回答しようとしたものであるとする会社主張も首肯できる。また、労使交渉の場面において、人事労務を担当する総務部の係長とそれ以外の部署の係長は同様の権限を有するものではないことなどから、会社が団交担当者として適格性のある者を出席させなかったということはできない。
イ 会社は年1回の公式な決算書類しか作成しておらず、四半期ごとに外部に公表できるような人的余力もない中で、会社は平成19年度から21年度までの売上対比表を手交し、21年度決算内容が未確定であったものの、当期の売上など最終決算の内容を回答していることから、会社のこうした対応をもって、不誠実であったとはいえない。
ウ 会社は、本件一連の団交において、組合に対し、Xの賃金額の減少をもたらす営業時間変更の必要性とその検証データを提示しながら説明しており、実質的な協議に応じようとしなかったとはいえず、不誠実な団交であったとはいえない。
エ また、会社は、Xの基本給には変更ない旨、Xの勤務時間はあっせんでの合意を優先するため変更しなかった旨、あっせんでの合意において、Xの残業時間を保障するという話はなかった旨述べるなど、組合の提案についても会社の考え方を説明している。加えて、会社は、平成22年5月から6回にわたって本件一連の団交を行っており、殊更、組合との団交を回避しようとしていたと認めることもできない。
オ したがって、本件一連の団交における会社の交渉態度が労組法7条2号の誠実交渉義務に違反する不当労働行為である旨の組合の主張は採用できない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成22年(不)第79号 棄却 平成24年5月8日
 
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