労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成22年(不)第79号 
事件番号  大阪府労委平成22年(不)第79号 
申立人  X労働組合 
被申立人  株式会社Y 
命令年月日  平成24年5月8日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   平成16年11月、大阪府労委において組合員Fの配置転換をめぐる問題についてのあっせんが成立し、組合と会社は、同人をA工場に配置転換することに合意すること、同人の日給の額は1万円であること、同人の労働条件の変更については労使協議を尊重して解決を図ること等が記載されたあっせん案を受諾した。その後、会社は22年5月から同工場の営業時間を1時間30分短縮したが、その結果、Fを含む従業員の残業時間及び賃金が減少することとなった。
 本件は、会社が①上記のあっせん合意に反してFの賃金を引き下げたこと、②この賃金引下げを議題とする団交において実質的な交渉を行わなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は、申立てを棄却した。  
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。  
判断の要旨  1 団交における被申立人会社の対応について
 申立人組合は、会社が組合員Fの賃金に係る組合からの提案についての協議に応じようとしなかった旨主張する。しかし、認定した事実によれば、会社は、A工場の時間帯別売上額表を示して採算のとれていない時間帯のコストを削減するために同工場の営業時間を短縮せざるを得ないこと、Fの賃金減少は残業時間が減った結果として生じたものであり、残業時間の決定は会社の裁量の範囲内であること、Fの所定労働時間については平成16年11月のあっせん合意を優先するため変更しなかったことなどを説明していることが認められる。
 組合はまた、会社が交渉事項の決定権限を持つ者を団交に出席させなかった旨主張するが、本件一連の団交において組合は、団交に出席していた会社のG係長らの交渉権限を問題視してはいなかったとみられ、その他団交の進行に特段の支障があったと認めるに足る事実の疎明はない。
 以上のとおり、会社は組合からの提案についての協議に応じようとしなかったとも、交渉権限を持つ者を団交に出席させなかったともいえないのであるから、一連の団交における会社の対応が不誠実であったとはいえない。
2 組合員Fの賃金減少について
(1)支配介入に当たるか
 組合は、会社が平成22年5月から一方的にA工場の営業時間を変更し、Fの賃金を引き下げたことは、上記あっせん合意の1日2時間の残業保障に反する支配介入である旨主張する。
 しかし、あっせん案にFの残業保障についての記載がないことは明らかであり、また、あっせん案受諾の際、あっせん員Nが残業時間の保障については文書化しないがその趣旨は生かしてほしい旨述べたことが認められるものの、それは当事者双方に対する要請にとどまるとみるのが相当である。
 組合はまた、会社が組合との事前協議を行うことなくFの労働条件を変更したことは上記あっせん合意の事前協議条項に違反する旨主張するが、「Fの労働条件の変更については労使協議を尊重して解決を図る」旨を定めたあっせん案第3項が事前協議条項であるということはできない。
 以上のとおりであるから、Fの賃金減少は組合とのあっせん合意に反したものであり、組合に対する支配介入に当たるとはいえない。
(2)不利益取扱いに当たるか
 組合は、本件営業時間の変更によるFの賃金減少は会社が組合を嫌悪してなされたものであり、組合員に対する不利益取扱いに当たる旨主張する。
 確かに、組合の主張する事実によれば、組合と会社との間の労使関係は必ずしも良好であったとはいえない。しかし、Fの賃金減少は、平成19年以降、会社の経営状況が悪化していたこと、A工場で人件費すら賄えない時間帯があったこと及び会社全体で問題となっていた著しい過重労働を改善する必要があったことを理由として同工場の営業時間を短縮したことに伴うものであるとする会社の主張は不合理とはいえない。
 そして、会社は当該営業時間の変更を事前に従業員全員に通知し理由を説明していること及び賃金面でFだけが殊更不利益に取り扱われたとはいえないことが認められる。これらを併せ考えると、本件賃金減少は会社がFに対して不利益取扱いをしたものと評価することはできない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成24年(不再)第25号 棄却 平成25年12月18日
 
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