労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  パナソニックプラズマディスプレイ外1社 
事件番号  中労委平成24年(不再)第26号 
再審査申立人  なかまユニオン(以下「組合」) 
再審査被申立人  パナソニックプラズマディスプレイ株式会社(以下「A社」) 
再審査被申立人  パナソニック株式会社(以下「B社」) 
命令年月日  平成25年12月18日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、組合が、組合の組合員(以下「X組合員」)を雇用していたA社及びその親会社であるB社にそれぞれ申し入れた団交に両社がいずれも応じなかったことが不当労働行為に当たるとして、大阪府労委に救済申立てがあった事案である。
2 大阪府労委は、B社に対する救済申立てを、労組法上の使用者に当たらないとして却下し、A社に対する申立てを、不当労働行為に当たらないとして棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  1 初審命令主文中、B社に係る救済申立てを却下した部分の取消し及び同救済申立ての棄却
2 その余の本件再審査申立ての棄却 
判断の要旨  1 A社に対する申立て
 A社が、組合からの団交申入れに応じなかったことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか。
ア 組合は、A社にとって、労組法第7条第2号の「雇用する労働者の代表者」といえるか。
 労組法第7条第2号が必要としている雇用関係は、現に同関係が存続している場合だけでなく、労働者について、その解雇や退職の是非(効力)等が雇用関係の終了に際して争われている場合等も、いまだ雇用関係は確定的に終了していないというべきであるところ、組合が、A社に団交を申し入れた際、両者の間では、雇用関係終了の効力等が訴訟等で正に争われていた状況であったことからすれば、X組合員が所属する組合は、A社にとって、雇用する労働者の代表者に当たり、使用者として団交を義務づけられる相手方であったといえる。
イ 組合が申し入れた団交議題は、義務的団交事項に当たるか。
 本件団交申入れに係る団交申入書には議題が明記されていなかったものの、同申入れ以前に組合とA社の間で交わされていた回答書等の書面の内容からすれば、組合が以前にA社に申し入れた団交議題(①X組合員に対するA社の人権侵害行為、②要請書へのA社の見解、③要請書提出時のA社の対応)が、本件団交申入れの議題となることについては、A社も理解していたものと認められる。
 上記①の議題は、A社との雇用契約期間中のX組合員の労働の内容・環境等に関わる事項であり、労働条件等に関するものであったから、義務的団交事項に当たる。
 しかし、上記②の議題は、B社に対する書面についてA社の見解を求めていたにすぎないと解さざるをえず、これを義務的団交事項に当たると認めることは困難であり、上記③の議題について、組合は抗議の趣旨で見解を求めてきたにすぎないと解し、義務的団交事項に当たらないと考えてA社が団交に応じなかったことにつき、正当な理由なく団交を拒否したものということは困難である。
ウ A社が上記①の議題について団交に応じなかったことは、正当な理由なく団交を拒否したものといえるか。
 上記①の議題に関する組合とA社の話合いが行き詰まっており既に平行線の状態に至っていたのであれば、組合の本件団交申入れに応じる義務がA社にあったとはいえないところ、最後に行われた団交で、X組合員に対する人権侵害行為があったと認めるか否かで、組合とA社の見解は平行線の状態になっていたこと、当時、組合とA社の間では、同じ問題に関する訴訟が係属中であったため、A社が組合の要求を直ちに受け入れなかったとしても不当とはいえない状況であったことなどからすれば、組合とA社の間における上記①の議題に関する話合いは既に行き詰まっていたといわざるを得ない。最後に行われた団交以降の状況の変化や以前の交渉では見逃されていた論点の発見等の事情により、本件団交申入れの時点で、話合いの行き詰まった状態が解消されていたと認められる場合、A社には団交に応じる義務があったというべきであるが、本件では、そのような事情も認められないことからすれば、A社が上記①の議題について団交に応じなかったことをもって、正当な理由なく団交を拒否したものとはいえない。
エ なお、組合は、A社が、X組合員らに対して行った引き抜きあっせん行為についても、本件団交申入れの議題となっており、同議題について団交に応じなかったことは正当な理由なき団交拒否に当たる旨主張するが、本件団交申入れ以前のものを含め、いずれの団交の申入書にも、同行為に関する記載はなく、ほかに同行為が議題となっていたことをうかがわせるような事情も認められないことからすれば、組合の上記主張には理由がない。
2 B社に対する申立て
 B社は、A社の従業員(X組合員)との関係で、労組法第7条の使用者の地位にあるか。
ア 労組法第7条の使用者は、団交を中心とした集団的労使関係の一方当事者としての使用者を意味し、労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者は、その限りにおいて、労組法第7条の使用者と解すべきである。
イ B社は、A社の親会社として、資本関係、人的関係及び取引関係に基づき、A社に対し、一定の影響力を有していたことは推認されるものの、X組合員の賃金、労働時間、休日等の就労の諸条件を管理していたのはA社であったと考えられ、B社が、X組合員の採用、配置、雇用の終了等の一連の雇用の管理に関する決定に関与していたことを認めるに足りる証拠もない上、A社の日常的な業務運営について決定し、これを執行していたのはB社ではなく、A社であったと考えるのが相当である。
ウ B社が、A社の親会社として、A社とX組合員の間の訴訟の高裁判決について上告の方針である旨を報道機関に発表したこと、また、X組合員の健康保険被保険者証の事業所名欄に、A社ではなく、B社と記載されていたことなどは、いずれもA社の社員の基本的な労働条件等をB社が決定していたことを根拠付けるような事情とは認められない。
エ 以上からすれば、B社が、親会社として一定の支配力を有していたものの、X組合員の基本的な労働条件等について、雇用主と同視できるほどに現実的かつ具体的な支配力があったことを推認することはできない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成22年(不)第78号
大阪府労委平成23年(不)第2号
棄却(平成22年(不)第78号事件)
却下(平成23年(不)第2号事件)
平成24年5月14日
 
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