労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  東北石けん佐藤工場 
事件番号  宮城労委平成21年(不)第2号 
申立人  東北石けん労働組合 
被申立人  有限会社東北石けん佐藤工場、株式会社畑惣商店 
命令年月日  平成25年10月10日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   平成19年11月、被申立人会社Yと同Zとの間で、20年12月を目途にYの株式全部をZに売却し、Yの経営権をZに譲渡する旨の本契約を締結すること等を内容とする基本合意契約が締結された。これに基づき、Zの代表取締役Z1がYの代表取締役に就任し、新工場建設など本契約締結のための準備活動等を行っていたところ、Yと申立人組合との間で労働条件等について紛議が生じ、20年12月、Zからの申入れにより上記基本合意契約が合意解約されることとなった。その後、Yは新工場及び石けん製造に必要な設備等をZに個別に売却して解散するとともに、会社解散に伴い、21年2月、組合員3名及びそれ以前に組合を脱退していた従業員2名から成る従業員全員を解雇した。
 本件は、Yが組合員3名を上記のとおり解雇したことは偽装解散であり、不当労働行為に該当するとして、救済申立てがあった事件である。
 宮城県労委は申立てを棄却した。 
命令主文   本件申立てをいずれも棄却する。 
判断の要旨  1 偽装解散の法理について
 一般に、偽装解散の法理は、第1に、ある会社の解散とその従業員の解雇、そしてその事業の別企業への承継が、解散会社の労働組合を排除する意図に出ていること、第2に、解散会社と事業承継会社の実質的同一性(ないし一体性)という二つの要件が満たされるならば、解散・解雇・事業承継・組合員の不採用全体が「偽装解散」と称される一連の不当労働行為となる、という法理である。
2 被申立人会社Yの解散等が申立人組合を排除する意図に出ているか否かについて
 組合は、Yと被申立人会社Zとの間で本件基本合意契約が締結された後、Yの代表取締役Y1が組合員らに対し、平成20年7月1日に経営譲渡を正式に調印する、新工場への移転に当たり全員にいったん会社を辞めてもらうなどと述べたこと等から、同人が不当労働行為意思を有していたことが認められる旨主張する。しかし、この時Y1は、本件基本合意においては労働契約は当然に承継されるということを認識せずにこのような発言を行ったものと認められる。したがって、上記発言は同人が認識している範囲で今後の経過を説明したにとどまり、解雇等の法的効果が発生する意思表示とは考えられないし、このような発言をしたことから、同人が組合を嫌悪し排除する等の意思を有していたと認めることはできない。
 組合は、20年11月28日、Y1とZ1が事業承継の方法を組合員の雇用継続を含む株式売買方式から、組合の排除が可能となる個別売買方式へと変更する協議を行った旨主張するが、この時のZ1の発言から、同人が組合を排除ないし壊滅する意思や組合員を不利益に取り扱う意思を有していたと認めることはできない。また、Y1はその翌日、組合員らに対し、Yを廃業すること及びそれに伴い従業員を解雇することを伝えるとともに、新工場へ行けば幹部待遇を受けられるだろうという趣旨の発言をしたことが認められるが、これも従業員(組合員5名)が新工場で就労できるとの認識で、行けば優遇されるとの見通しを述べたものにすぎないと解するのが相当である。
 組合は、YとZが20年12月、本件基本合意を合意解約し、その後、事業承継のスキームを変更したことも、組合を嫌悪し、排除する意思をもってなされた不当労働行為である旨主張する。しかし、組合員は本件基本合意によって従前Yと締結していた労働契約の内容に何らの変更を生じるものではないから、合意解約されても従業員の地位を失ったり、労働環境等の面で直接不利益を被ったりするものでもないし、組合の存立や運営に悪影響を生じるものでもない。したがって、本件基本合意の合意解約自体は組合に対する不利益処分や支配介入に当たるものではない。
 また、スキームの変更については、ZからYに申し込まれたものと認めるのが相当であるところ、Z1が最終的に当該変更を決定した主な理由は同人が本件基本合意に基づく事業承継は組合の協力が得られず続行が困難と考え、同年11月26日以降には組合に対して不信感を有していたからであると考えられる。しかし、Yは、ZがYの債務を肩代わりし、新工場の用地・建物、Yが所有する石けん製造の機械設備、商標等の資産を個別的に取得し、新工場において石けん製造事業を行うというZの申入れを承諾したものと認めるのが相当である。その結果、Yは事業継続が不可能になることから、真に会社を廃止する意思に基づき会社を解散し、清算手続を行ったものであり、解散理由が存在していたと認められる。そして、会社の解散を理由とする本件解雇は、原則として客観的及び合理的な理由があり、さらに従業員に対する退職金も支払われており、その他手続的な瑕疵も認められないから、社会通念上相当なものと認められる場合に当たるというべきである。このほか、Yが本件解雇を行うについて、Z1からY1に対し、組合員を排除するために解雇手続を依頼し、Y1が承諾してYの意思として解雇を行った旨の事情を認めることはできないし、その他Yが本件スキームの変更についてZ1と意思を通じて不当労働行為意思を有するに至った旨の事情も認められない。
 以上によれば、Yは本件解雇について不当労働行為意思を有していたものとは認められず、ほかにこれを認めるに足りる事情についての主張立証はない。
3 YとZの実質的同一性について
 YとZは、事業譲渡前にも事業譲渡後においても、組織、役員構成、目的、設立経過、営業形態等において別個の会社であり、解散したYが人的・物的関係において企業そのものの実態が変更されることなくZに承継され、Zの経営等に対して事実上の支配力を及ぼし得ると評価できるような事情は認められないから、YとZの間に実質的同一性を認めることはできない。
4 結論
 以上のとおりであるから、Yの解散は偽装解散とは認められず、その他、Yが不当労働行為意思に基づいて本件解雇を行った旨の事情を認めるに足りる証拠もない。よって、本件解雇は、組合員であることを理由とする不利益取扱いに該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成25年(不再)第82号 棄却 平成28年7月20日
 
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