労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  金本運送 
事件番号  中労委平成24年(不再)第48号 
再審査申立人  金本運送株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  全日本建設交運一般労働組合大阪府本部(「組合」) 
命令年月日  平成25年11月6日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、①組合員の賃金減額に係る労働条件の変更撤回を議題とする22年10月12日付け団交申入れ(「10.12団交申入れ」)及び組合員Xに対する自宅待機の撤回等を議題とする同年11月6日付け団交申入れ(「11.6団交申入れ」といい、併せて「本件団交申入れ」という。)について、同年10月8日、Xの配送先店舗内で業務中に発生した買物客の負傷事故(「本件事故」)の処理を理由に拒否したこと、②Xを自宅待機とさせ、その間平均賃金の60%しか支給しなかったこと、③その後Xを解雇したこと(「本件解雇」)、が不当労働行為に当たるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審大阪府労委は、会社に対し、①団交応諾、②Xに対する自宅待機がなかったものとしての取扱い及び賃金相当額と既支払額との差額支払、③本件解雇がなかったものとしての取扱い、原職相当職への復帰及びバックペイ、④①ないし③に係る文書手交を命じ、会社はこれを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件団交申入れに対する会社の対応は、労組法第7条第2号の団交拒否に当たる。
ア 会社は、10.12団交申入れに、Xが起こした本件事故の処理に追われる状況にあり、団交日時等については約束できる状況ではないので後日連絡したい旨、11.6団交申入れに、本件事故の処理が終わっておらず、Xから顛末書及び始末書の提出がない状況の下では団交日時は約束できない旨回答し、本件団交申入れに対応しなかった。
イ 本件事故の翌営業日の10.12団交申入れに、会社が、翌日付けで現状を説明し、団交日時は後日連絡する旨回答し、組合に団交開催の猶予を求めたこと自体は、直ちに不合理ということはできないが、組合が救済申立てを行うまでの間に、団交が可能な日時を組合に連絡するなどの対応を行うことが可能であったというべきである。
 また、Xは、本件事故当日に事故報告書を、22年11月12日付けで顛末書等を提出したが、会社は、Xに顛末書等の提出を求めたのみで、Xや負傷者から本件事故の具体的な状況を聴取した事実は認められない。これらから、Xが「事故の事実確認をしようとしない」とはいえず、また、会社自ら事実確認を積極的に行っていたともいえないのであるから、11.6団交申入れに、事故の事実確認を団交開催の前提条件とする会社の姿勢は合理的なものということはできない。
 以上から、本件団交申入れに対し会社が正当な理由なく団交を拒否したものといわざるを得ない。
2 ①Xを自宅待機とさせ、約6か月にわたって継続したこと、②この間平均賃金の60%しか支給しなかったことは、労組法第7条第1号の不利益取扱いに当たる。
ア 労災休業中のXの職場復帰を強く求め、会社の治癒証明提出の要求に従わず、復帰後にはXの休業補償及び未払時間外手当を請求するほか、労働基準監督署に申告するなどした組合及びXに、会社は少なからぬ嫌悪の情を抱いていたことが推認される。Xの自宅待機は、こうした労使関係の中、本件事故からわずか2営業日後にXに弁明の機会を与えることなく決定された。
イ 会社は、自宅待機の理由として、事故調査とXの反省の程度を見極める必要があった旨等を主張するが、Xや負傷者から本件事故の状況を聴取しておらず、他にどのような調査をしたのかも不明である。また、Xは、会社の要求に応じて顛末書等を提出し、その内容から反省がみられるのに対し、会社は「一般的な顛末書及び始末書と異なる」として重ねて提出要求をした。これらから、会社が、本件事故の調査結果に基づきXに反省を促すために自宅待機としたと認めることはできない。
 さらに、会社が本件事故の調査を行った事実は認められないことから、本件事故の責任がXにあるとは断言できず、本件事故の責任がXにあることが平均賃金の60%を支払う旨決定した理由であるとする会社の主張は合理的であるとはいい難い。
ウ 以上に加え、会社は、継続的に本件事故の対応に追われる状況になく、本件事故の調査を行ったとは認められないにもかかわらず、解雇に至るまで自宅待機を継続したことからすると、組合及びXとの対立関係が進展する中、本件事故を奇貨として、組合及びXへの嫌悪の念に基づき、Xを自宅待機とし、約6か月間継続するとともに、平均賃金の60%を支給するに留めたものと認められる。
3 本件解雇は、労組法第7条第1号の不利益取扱い及び同条第3号の支配介入に当たる。
ア 会社は、解雇の理由として、①本件事故の責任はXにあり、Xに反省は見られない旨主張し、②事故防止等はその都度指導し、賞罰委員会は規定により開催した旨主張するが、会社は、①の理由でXを解雇するのであれば当然考慮したであろう事項を考慮せずに本件解雇を行っており、真に①の理由で本件解雇を決定したといえるかは疑わしい。また、会社には安全確保のマニュアルや口頭指導の事実を認めるに足りる証拠はないほか、就業規則に賞罰委員会の定めはなく、これまで賞罰委員会が開催されたことはなかった。以上から、本件解雇が相当な理由に基づきなされたとは認められない。
イ 本件解雇は、Xが組合員であること等の故をもって行われた長期間の自宅待機に引き続き行われたものである。また、本件事故後も、Xの自宅待機中の賃金や本件救済申立てなどをめぐり、会社と組合及びXは一層対立関係を深めていったものと認められる。そして、Xの押す台車が負傷者に接触したかは明らかでないにもかかわらず、会社は、Xが会社の望む顛末書等を提出しないことや、賞罰委員会での発言をとらえて反省がないものと評価し、その翌日には本件解雇を決定しており、賞罰委員会開催の時点には既にXを解雇する方針を確定していたものと疑われる。
ウ 本件解雇に至る経緯、本件解雇が相当な理由に基づきなされたとはいえないこと、組合及び分会長であるXと会社との対立状態が深まっていった中で本件解雇がなされたことに鑑みれば、本件解雇は、Xの組合所属や組合活動を嫌悪していた会社が、本件事故を奇貨としてXを社外に放逐し、それにより組合との関係を断ち切ることを企図して行われたものと認められる。 
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成22年(不)第73号
大阪府労委平成23年(不)第4号
大阪府労委平成23年(不)第31号
全部救済 平成24年8月27日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約268KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。