労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  大阪府労委平成22年(不)第73号、23年(不)第4号・第31号  
事件番号  大阪府労委平成22年(不)第73号、23年(不)第4号・第31号  
申立人  X労働組合  
被申立人  Y株式会社  
命令年月日  平成24年8月27日  
命令区分  全部救済  
重要度   
事件概要   平成22年10月7日、被申立人会社は申立人組合に対し、組合員D及び同Eの賃金減額についての申入書を送付した。翌10月8日、会社の配送先の店舗内でDが米の搬入に用いた台車との接触によって買物客が足指を骨折する事故が発生した。会社は同月14日、Dに対し、同人を当分の間自宅待機とする旨通知した。
 本件は、会社が①組合が22年10月12日に申し入れたD及びEの賃金減額その他の事項を議題とする団交及び同年11月6日に申し入れたDへの自宅待機通知の撤回その他の事項を議題とする団交を正当な理由なく拒否したこと、②Dを上記のとおり自宅待機とし、自宅待機中の賃金支払額を平均賃金の60%としたこと、③23年4月12日、Dに対し解雇する旨通知したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 大阪府労委は会社に対し、1 団交応諾、2 Dに対する自宅待機がなかったものとして取り扱うこと及び賃金差額の支払い、3 Dに対する解雇がなかったものとして取り扱うこと及びバックペイ、4 文書手交 を命じた。  
命令主文  1 被申立人は、申立人が平成22年10月12日付け及び同年11月6日付けで申し入れた団体交渉に応じなければならない。
2 被申立人は、申立人の組合員Dに対し、平成22年10月14日付けで通知した自宅待機がなかったものとして取り扱うとともに、この自宅待機がなければ得られたであろう賃金相当額と既に支払った額との差額を支払わなければならない。
3 被申立人は、申立人の組合員Dに対し、平成23年4月12日付けで通知した解雇がなかったものとして取り扱い、同22年10月14日付けで通知した自宅待機前の原職又はこれに相当する職に復帰させるとともに、解雇の日の翌日から就労させるまでの間、同人が就労していれば得られたであろう賃金相当額を支払わなければならない。
4 被申立人は、申立人に対し、下記の文書を速やかに手交しなければならない。
年 月 日
  X労働組合
   執行委員長 B 様
Y株式会社
代表取締役 C
  当社が行った下記の行為は、大阪府労働委員会において、(1)については労働組合法第7条第2号に、(2)については同条第1号に、(3)については同条第1号及び第3号に、それぞれ該当する不当労働行為であると認められました。今後、このような行為を繰り返さないようにいたします。
  (1) 貴組合が平成22年10月12日付け及び同年11月6日付けで申し入れた団体交渉に応じなかったこと。
  (2) 貴組合D氏に対し、①自宅待機としたこと、②自宅待機中の賃金について、平均賃金の60パーセントを支払ったこと。
  (3) 貴組合員D氏を解雇したこと。  
判断の要旨  1 団交拒否について
(1)平成22年10月12日の団交申入れへの対応
 被申立人会社が申立人組合に対し、22年10月8日に発生した事故の処理に追われているため、団交の延期を求めていたものとみる余地はある。しかし、組合が求めた日時に団交を開催することが困難であったとしても、会社が組合に対し、その後相当の期間内に連絡し、団交の開催に向けて調整を図ることは可能であったというべきであり、また、その義務は消失するものではないところ、会社が何らかの調整を図ったと認めるに足る疎明はない。
(2)22年11月6日の団交申入れへの対応
 会社は組合に対し、上記事故について組合員Dに顛末書・始末書の提出を要求しているが、提出がなく、このような状況のもと団交の日時について約束することができない旨、回答して団交に応じなかったことが認められる。しかし、顛末書・始末書の提出を団交開催の前提条件としたことに合理的理由を認め得ないものであるところ、これを正当化する特段の理由があるともいえない。また、上記団交申入れについては、当該事故の処理とは直接関係しない労働条件に関する議題も含まれているのであるから、Dが顛末書・始末書を提出しないことを団交拒否の正当理由とすることはできない。
(3)結論
 以上のことからすると、本件団交申入れに対する会社の対応は、正当な理由のない団交拒否に当たるものである。
2 Dに対する自宅待機等について
 会社は、Dが上記事故を発生させ、これについて過失があることによって同人がその責任を負うべきである旨主張する。しかし、当該事故の原因等について会社とDとの間に争いがあるところ、事故の責任の全てを同人が負うべきであると認めるに足る疎明はない。
 また、会社が主張するDの自宅待機等の理由については、妥当性に欠けるところがあるといわざるを得ない。他方、22年2月、Dが組合に加入し、組合と会社が同人の休職からの復職の問題等について団交を行っていたところ、当事者間に見解の相違等が生じていたことが認められ、その当時から、労使関係に緊張状態が生じていたとみることができる。
 以上のことからすると、会社がDを自宅待機としたこと等は、会社の組合嫌悪が表れているものといわざるを得ず、不当労働行為意思を推認することができるのであって、同人が組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たるものである。
3 Dの解雇について
 会社は、解雇の理由について、上記事故の責任は安全確認注意義務を怠ったDにあること、同人に反省の念が全くなかったこと、責任を認めようとしない同人の態度は会社としての指導に限界があり、会社の運営等に支障をもたらすものであること等を挙げている。
 しかし、事故の原因が明確であったと認めることは困難であって、Dの会社に対する弁明に責任の回避とみられるところがあったとしても、この事故の責任の全てを同人が負うべきであるとまでみることは到底できない。また、同人の弁明は一見して不当なものであるとは言い難く、また、事故に関して反省する姿勢が全くなかったとみることも困難である。さらに、事故発生後、Dのみならず他の従業員に対しても、業務上の事故を起こさないように具体的な指導がなされたとの疎明もなければ、指導についての検討が行われたと認めるに足る疎明すらない。以上のとおり、会社が就業規則の解雇事由に該当するとする根拠は極めて薄弱である。
 他方、組合は22年11月17日及び23年1月18日に、前記1及び2の問題に関し当委員会に不当労働行為救済申立てを行ったことが認められ、組合と会社との労使関係には緊張状態の高まりが生じていたとみることができる。
 このことも併せて検討するに、会社がDを解雇したことは、会社の組合嫌悪からなされたものといわざるを得ず、不当労働行為意思を推認することができるのであって、同人が組合員であるが故に行われた不利益取扱いに当たる。また、組合の分会長であったDの解雇により分会の運営に支障が生じるものとみられるのであって、組合に対する支配介入にも当たる。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成24年(不再)第48号 棄却 平成25年11月6日
 
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