労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  高島市 
事件番号  中労委平成24年(不再)第9号 
再審査申立人  滋賀自治体一般ユニオン高島市臨時嘱託職員支部(「組合」) 
再審査被申立人  高島市(「市」) 
命令年月日  平成25年10月16日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、市による次の(1)及び(2)の行為があり、それぞれ不当労働行為に当たるとして、組合が滋賀県労委に救済申立てを行った事件である。なお、臨時的任用職員については、地方公務員法上、任用期間の上限が1年とされているため、市では、従来、1日から数日の空白期間を設け、新規の任用として翌年度も任用してきた。平成20年3月、労働基準監督署から、このような任用の取扱いは、労働基準法上、継続勤務に当たるとして、年次有給休暇を加算するよう是正勧告がなされたところ、市は、1年を超えて再任用しないという方針(以下「新任用方針」)を決定し、平成22年3月31日に、臨時的任用職員全員に対する一斉の雇止め(以下「本件一斉雇止め」)を行った。
(1) X組合員を、組合活動を理由として、平成22年3月31日をもって雇止めとし、同年4月1日以降再任用しなかったこと。
(2) 組合から平成20年4月10日ないし平成22年4月14日に申入れのあった、①臨時的任用職員の再任用の継続(以下「交渉事項①」)、②身分を嘱託職員に変更するなどの方法によるX組合員の雇用の維持(以下「交渉事項②」)、③嘱託職員の任用期間の上限の撤廃(以下「交渉事項③」)、④失業者に対する就職支援(以下「交渉事項④」)、⑤臨時的任用職員の年次有給休暇、通勤手当及び夏休み期間中の休業補償(以下「交渉事項⑤」)を交渉事項(以下「本件交渉事項」)とする団体交渉に、誠実に応じなかったこと。
2 滋賀県労委は、組合の救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  1 初審命令主文中、団体交渉に係る救済申立てを棄却した部分の取消し
2 団体交渉に誠実に応じなかったことに関する文書手交
3 その余の本件再審査申立ての棄却 
判断の要旨  1 X組合員を再任用しなかったことについて
 市が、X組合員が労働基準監督署へ申告したことに対する意趣返しとして、臨時的任用職員全員に対する本件一斉雇止めを行ったとは考えられず、むしろ、臨時的任用職員にX組合員が含まれていなかったとしても、本件一斉雇止めは行われたと考えられるから、X組合員の雇止めについて、市の不当労働行為意思を認めることはできない。したがって、市が、X組合員を、平成22年3月31日をもって雇止めとし、同年4月1日以降再任用しなかったことは、労組法第7条第1号の不当労働行為には当たらない。
2 本件交渉事項は、団体交渉の対象となるかについて
ア 交渉事項①及び②について
 交渉事項①及び②は、臨時的任用職員の雇用の継続に関わる問題であり、重要な労働条件・待遇に当たる事項であると認めるのが相当であり、かつ、市には、一般的に再任用を行う裁量があり、また、嘱託職員等への切替えを行う裁量もあるのであるから、これらの交渉事項は、組合と市の間において、団体交渉の対象となる事項であると解される。
イ 交渉事項③について
 交渉事項③は、嘱託職員にとって重要な労働条件に当たる事項であるといえ、また、臨時的任用職員が嘱託職員に身分変更された後にどれだけ雇用が維持されるかという観点からすれば、臨時的任用職員にとっても、重要な労働条件・待遇に当たる事項であるといえる。そして、嘱託職員の任用期間については市に裁量があると認められるのであるから、交渉事項③は、団体交渉の対象事項であると認めるのが相当である。
ウ 交渉事項④について
 交渉事項④は、雇止めとなる臨時的任用職員の重要な待遇に関わる事項であり、かつ、市としても処理可能な事項であることが明らかであるから、団体交渉の対象事項であると認められる。
3 本件団体交渉における市の交渉態度は、不誠実なものであったかについて
ア 交渉事項①及び②について
 新任用方針の採用は、多くの臨時的任用職員の失職をもたらし、また、毎年、多くの臨時的任用職員の入替えを余儀なくするもので、臨時的任用職員の労働条件に深刻な影響を与えるものであったにもかかわらず、市は、新任用方針に関し、抽象的な説明を繰り返すにとどまり、組合の疑問、主張にも答えようとせず、一方的に新任用方針の見直しは行わない旨述べた。また、市は、臨時的任用職員を嘱託職員として任用することについて、免許又は資格が必要であるなどと述べるにとどまり、具体的にどのような任用基準に基づき、必要な免許又は資格が定められているのかについて説明することもなかった。さらに、組合が、X組合員の中型免許や過去の実績等を配慮して嘱託職員として任用すること等を提案したのに対し、市は、中型免許は特殊な技能に当たらない旨答えるのみで、それ以上に具体的な説明を行っていない。このような市の対応からは、組合に十分な説明を行い、その納得を得ようとする姿勢は見られず、組合の要求、提案を真摯に検討した形跡もうかがわれないところであって、市の同対応が誠実であったとは評価できない。
 以上の次第であるから、交渉事項①及び同②に係る市の団体交渉における対応は、不誠実であったといわざるを得ず、労組法第7条第2号に違反する。
イ 交渉事項③について
 交渉事項③に関しては、実質的な交渉はなされていなかったが、組合も、この問題について、それ以上追及していないことからすると、交渉事項③について、上記市の対応が不誠実であったとまでは認め難い。
ウ 交渉事項④について
 市は、組合からの要望を、そのまま受け入れてはいないものの、代替案を示すなどの対応はしていること、また、組合も、新たな団体交渉の申入れは行っていないことからすると、市の上記対応をもって、不誠実であったとまではいえない。
エ 交渉事項⑤について
 市は、労働基準監督署の是正勧告の内容を一切説明せず、かつ、同是正勧告に係る市と同署の協議状況等について、組合が何度尋ねても、具体的に説明しようとせず、市には、年次有給休暇に関し、組合の疑問を解消し、組合との協議を進めようとする姿勢はうかがえないのであって、市が誠実に交渉していたとはいい難く、市の同対応は、労組法第7条第2号に違反する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
滋賀県労委平成22年(不)第5号 棄却 平成24年2月2日
 
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