労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  高島市 
事件番号  滋労委平成22年(不)第5号 
申立人  滋賀自治体一般ユニオン高島市臨時嘱託職員支部 
被申立人  高島市 
命令年月日  平成24年2月2日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要   組合員X2は、平成17年9月に被申立人市の臨時的任用職員(給食配送車運転手)として採用された後、6月ごとに任用を更新されて、継続的に勤務していた。20年3月、大津労働基準監督署は、臨時的任用職員について短期の任用を繰り返すことは実質的な雇用の継続であるとして年次有給休暇の付与日数を加算するよう市に対して勧告した。市は、この勧告により上記のような形式での任用が地方公務員法22条2項の期間制限に抵触することが明白になったとして、臨時的任用職員の任用を繰り返す扱いを改めることとし、同年4月、職員に対してその旨通知した。その後、申立人組合と市との間で団交が行われたが、交渉は進展せず、22年3月末日をもってX2を含む多数の臨時的任用職員が雇止めとなった。
 本件は、市が行ったX2の雇止め及び団交における市の交渉態度は不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 滋賀県労委は、申立てを棄却した。  
命令主文  本件申立を棄却する。  
判断の要旨  1 組合員X2の再任用の拒否は、労組の正当な行為をしたことを理由とする解雇に当たるか。
 申立人組合は、“市は、組合が臨時的任用職員の年次有給休暇の加算問題を取り上げたことが原因で雇用が継続されなくなったという効果を作出することにより、組合活動の妨害を企図した。X2の雇止めは、組合活動の妨害の一環であり、労組法7条1号に該当する不当労働行為である”旨主張する。しかし、本件再任用の拒否は、1年の上限期間を超えて任用されていた臨時的任用職員の全てを一律に再任用しなかったものであって、組合員を狙って行われたものではない。また、組合が年休の加算問題を取り上げ、労働基準監督署に申告したことは、X2が再任用をされない結果となったことの遠因に過ぎず、組合が年休の加算問題を取り上げたことの結果として同人を解雇したものと評価することはできない。したがって、組合の主張には理由がない。
2 団交における市の交渉態度は、誠実なものであったか。
(1) 組合が希望した期限内に団交の機会を設定しなかったとの主張について
 団交申入れから実施までの期間が特に長いものについては、時間を要した一応の理由が認められる。市の対応にはいささか迅速さを欠くところはあるが、さりとて、団交をこの程度引き延ばすことで、交渉上有利に作用するような事情はなく、また、意図的に引き延ばしを図ったと評価できるような事情も認められない。したがって、団交の実施が遅れたことをもって、直ちに交渉態度が不誠実であったとは認められない。
(2) 交渉時間を制限したとの主張について
 一連の団交が概ね1時間程度の時間で実施されており、これは市の希望に沿ったものであったことが認められる。しかし、本件団交において市が予定時間の経過を理由に交渉を打ち切ったことは一度もない。また、十分な協議ができなかったことを理由に、組合がその場で次回の団交を早期に実施するよう求めたときは、引き続き団交が設定されている。組合が市に送付した、団交の持ち方についての抗議の内容を含む書面には、交渉時間が短すぎるとの指摘はない。団交申入書についても、1通を除き、交渉時間の希望が記載されているものはない。そうすると、労使間で交渉時間が特に問題とされてきた経緯があるものとは認められない。
 よって、市が交渉時間を短く設定して、不誠実な団交を行ったとは認められない。
(3) 交渉権限を有する適切な地位にある者が出席しなかったとの主張について
 組合は、Y2主監とY3課長だけでは団交事項についての交渉権限がなく、交渉権限がない者だけが出席しての団交は誠実性を欠くと主張する。
 しかし、本件団交においては、交渉担当者が即断できなかった問題を持ち帰り、上位者の判断を仰ぐ間にいたずらに時間を空費し、実質的に交渉の実が上がらないような事態が生じた事実も認められず、団交に上記2名だけが出席していたとの事実をもって誠実性を欠くものとは認められない。
(4) 市が争点をはぐらかした姿勢で交渉に臨んだとの主張について
 一連の団交で組合が最も強く要求していたのは、臨時的任用職員の雇止め方針の撤回であるが、これは管理運営事項であり、団交の対象にならない。確かに団交におけるY2主監の発言は、全体として要領を得ないところが多く、組合が苦言を呈するのも理解できないわけではないが、その多くは義務的団交事項についての交渉の中でのやりとりに関するものではない。
 また、同人の発言が分かりにくいものであったとしても、議論を混乱させようという意図に出たものとは認められないから、これをもって市の交渉態度が不誠実であったとはいえない。
(5) 市が総務省通知の解釈を誤り、誤った解釈を正そうとしなかったとの主張について
 確かに総務省通知の解釈をめぐって市が混乱した事実は明らかである。また、平成22年3月12日の議員の質問に対する市長の答弁も、地方公務員法と労働基準法の関係について正しく表現したものとはいえない。これらのことが臨時的任用職員の雇止めという結果を招いた一因となっている可能性は否定できないが、これも結局は臨時的任用職員の任用方針をどのようなものにするかという管理運営事項に関する問題であり、上記通知の解釈に正確性を欠いていたことをもって団交の誠実性を問題にすることはできない。
(6) 管理運営事項に当たらない事項についての団交の誠実性
 X2の雇用の確保のためにその身分を嘱託職員に変更するという組合の要望に対して、市が真摯に対応していなかったのではないかとの疑念は禁じ得ない。しかし、組合も、嘱託職員の任用については免許や資格の有無だけで割り切るべきではないとの立場にこだわり、その結果、嘱託職員の任用方針という管理運営事項の議論の枠を出ることがなかったこと等を考慮すると、この問題が十分に議論し尽くされなかったとしても、それが一方的に市の責任であるとはいいがたい。
 また、年休等に関する交渉事項について、ほとんど議論が深まることがなかったのは、市の交渉態度が不誠実であったことが原因ではなく、組合の獲得目標が臨時的任用職員の雇止め方針の撤回にあり、議論の中心がそちらにあったことが原因と考えられる。
 したがって、管理運営事項に該当しないその他の交渉事項についても、被申立人の交渉態度が不誠実であったとは認められない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成24年(不再)第9号 一部変更 平成25年10月16日
 
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