労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  北光金属 
事件番号  福労委平成24年(不)第2号 
申立人  全日本金属情報機器労働組合福島地域支部 
被申立人  北光金属株式会社 
命令年月日  平成25年7月29日 
命令区分  全部救済 
重要度   
事件概要   被申立人会社で勤務していたX2は、勤務態度が就業規則に定める懲戒解雇事由に該当することを理由に解雇され、その後、申立人組合に加入した。本件は、組合がX2の解雇撤回、復職までの休業補償及び安全配慮義務違反に基づく損害賠償の3点を要求事項とする団交の開催を申し入れたのに対し、会社がこれを拒否したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 福島県労委は会社に対し、誠実団交応諾を命じた。 
命令主文   被申立人北光金属株式会社は、申立人全日本金属情報機器労働組合福島地域支部が平成24年7月17日付けで申し入れた団体交渉に、誠実に応じなければならない。 
判断の要旨  1 申立人組合の申立資格について
 被申立人会社は、組合の設立時の組合員中の非労働者(「年金により生活している者」)の数が労働者のそれを上回っており、現在でも組合三役の要職が非労働者によって占められているなど、組合は結成時において労働者が構成員の主要部分を占めていたとはいえず、また、現在でも労働者が組合の運営・活動をしているともいえないので、主体性を欠いた団体であり、労組法2条本文の要件を欠いているため、同法の保護を受ける労働組合とはいえず、本件申立ては却下されるべきであると主張する。
 しかし、同法3条の「賃金、給料その他これに準ずる収入によって生活する者」については、賃金などを主な収入源として生活する者に限定するのは妥当ではなく、賃金が生活費の一部分をなすに過ぎない者も広く含む趣旨であると解される。この点を踏まえ、当委員会が資格審査を行った結果、組合の執行委員長及び他の役員1名が相談員の労働の対価として収入を得ていることが確認され、同法上の労働者性に関する諸要素に照らし、この両名は労働者であるとの判断がなされた。よって、組合は「労働者が主体となって」組織した労働組合であり、申立資格を有するものと認められる。
2 団体交渉要求事項について
 会社は、X2は解雇された後に独立行政法人勤労者退職金共済機構からの退職金を受け取っており、また、会社から振り込まれた解雇予告手当について返還も供託もせずに費消している。よって、同人は解雇を追認したと推認するのが相当であり、同人の解雇撤回及び復職までの休業補償については団交事項から除外されるべきであると主張する。
 しかし、X2は本件解雇後に会社に対し、解雇の理由に納得できない旨伝え、解雇は無効であるとして撤回を求めていることが認められる。また、解雇予告手当と退職金は生活のためにやむを得ず費消したものであり、復職した際には返還する意思がある旨を主張している。したがって、解雇撤回及び復職までの休業補償を団交事項から外すことは妥当とはいえない。
 会社はまた、X2が重量物の運搬をしたのは会社の業務命令、指示、指導に背いて行ったものであるから、安全配慮義務違反に基づく損害賠償は団交事項から除外すべきである旨主張する。
 しかし、X2は、重い物を持つ作業についても会社から与えられた作業であると解釈した旨を主張しており、会社からの指導について安全配慮義務が尽くされたと納得してはいないと解される。このように会社とX2の認識が一致していない状態においては、会社はこの安全配慮義務に関する事項を議題とする団交を求められた場合には、たとえ自らが安全配慮義務を尽くしたと考えているとしても、団交の場で、安全配慮義務違反の有無及び損害賠償義務の有無に関する説明を行わなければならないと解される。
 したがって、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求を団交事項から外すことは妥当とはいえない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
福島地裁平成25年(行ウ)第5号 棄却 平成26年7月8日
 
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