労働委員会命令データベース

(この事件の全文情報は、このページの最後でご覧いただけます。)

[命令一覧に戻る]  [顛末情報]
概要情報
事件名  中ノ郷信用組合 
事件番号  中労委平成24年(不再)第41号 
再審査申立人  中ノ郷信用組合(「信用組合」) 
再審査被申立人  東京管理職ユニオン(「組合」) 
命令年月日  平成25年7月17日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、信用組合が組合の組合員Xに対して行った懲戒処分等を議題とする組合からの団交申入れについて、信用組合がXは二つの労働組合に二重加入しているとして応じなかったことが労組法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、信用組合が、団交申入れに応じなかったことは労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、信用組合に対し、①団交申入れに速やかに応ずること、②これに関する文書交付、③履行報告を命じ、その余の申立ては棄却する旨の初審命令書を交付したところ、信用組合は、組合は使用者の利益代表者である支店次長のXの参加を許す労働組合であり、不当労働行為の救済申立人適格を有しない、また、Xは組合と申立外B職員組合(「職員組合」)に二重加入しているとして団交申入れに応じないことには正当な理由がある等として、初審命令を取り消し、救済申立ての却下又は棄却を求めて、再審査を申し立てたものである。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 組合は不当労働行為の救済申立人適格を有する。(争点①)
ア 支店次長のXは、使用者の利益代表者に該当しない。
(ア) 労組法第2条ただし書第1号で定める「使用者の利益を代表する」に該当するか否かは、労働組合の自主性を確保するという同条の趣旨に照らして、Xの職務上の権限や責任の実態を踏まえる必要がある。
(イ) 支店次長としてのXの役割は、支店長の権限行使を補佐、助言する立場にとどまるのであるから、支店の職員の雇入れ、解雇、昇進及び異動について直接の権限を持つ監督的地位にある労働者に当たらない。
(ウ) Xは、人事考課において最終的な決定権限を有していないこと、Xが行う支店の職員に対する人事考課における評価及び閲覧・管理する労働者名簿等の記載事項は、いずれも信用組合の「人事労務管理の計画や方針の樹立、その施行に関する機密事項」には当たらず、これらの事項に接することが「機密の事務を取扱う」ことに該当しないことから、Xは、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接に抵触する監督的地位にある労働者には当たらない。その他、Xが「使用者の利益を代表する者」として、組合加入を認めることにより、組合の自主性を損なうものとなるような権限や責任を有していたと認めるに足る証拠はない。
イ 信用組合は、組合は組合規約に沿った運用を行っていないにもかかわらず、救済申立人適格を認めた初審命令は、労組法第5条の解釈を誤っていると主張するが、労組法第5条第2項は、「労働組合の規約には、左の各号に掲げる規定を含まなければならない。」と定めており、労働委員会における労働組合の資格審査は、同条同項各号に掲げる事項と労働組合の規約との整合性に関し審査するものであるので、初審命令の判断は結論において相当である。
2 信用組合が、組合からの団交申入れに対し、Xが組合と職員組合に二重加入しているとして応じなかったことには正当な理由がなく、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。(争点②)
ア 労働者が二重加入していることのみを理由として当該労働者の労働条件等に関する一方の労働組合からの団交申入れを拒否することは、正当な理由のある団交拒否ということはできない。
 本件においては、信用組合は、Xが二重加入していることのみを理由として、団交申入れを拒否しているのであるから、正当な理由のある団交拒否でないことは明らかである。
イ 労働者が組織を異にする二つの労働組合に二重加入している場合、使用者が、当該労働者の労働条件等に関する同一の事項について各労働組合から別々に団交が申し入れられたときに、両労働組合の間でまずは調整を求める等を理由に団交を拒否することは認められうる。
 しかし、本件においては、信用組合は、職員組合からXの懲戒処分等を議題とする団交と同様の要求や、Xの労働条件についての団交の申入れも受けていなかったこと、職員組合の執行委員長がXに対し職員組合の組合員資格を認めないと電話で告げるとともに、信用組合の代表理事宛てに「Xを非組合員として対応している」旨の文書を発していることからすると、職員組合は非組合員として対応しているXの懲戒処分ないしは労働条件等を議題として信用組合と団交を行う意思を有していたとは認められないことなどを踏まえると、信用組合は、組合からの団交申入れに対する拒否回答の時点において、Xが組合と職員組合に二重加入の状態であったとしても、職員組合はXの懲戒処分等についての団交を行う意思がないことは容易に認識でき、職員組合から二重の交渉を求められないことも認識していた。
 したがって、信用組合は、組合と職員組合から同一の事項につき別々の団交を申し入れられた事実はなく、加えて二重の交渉を求められないことも認識していたのであるから、信用組合が組合からの団交申入れに応じられない正当な理由があるとは認められない。 
掲載文献   

[先頭に戻る]

顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成23年(不)第82号 一部救済 平成24年7月17日
 
[全文情報] この事件の全文情報は約236KByteあります。 また、PDF形式になっていますので、ご覧になるにはAdobe Reader(無料)のダウンロードが必要です。