概要情報
事件名 |
中ノ郷信用組合 |
事件番号 |
都労委平成23年(不)第82号 |
申立人 |
東京管理職ユニオン |
被申立人 |
中ノ郷信用組合 |
命令年月日 |
平成24年7月17日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人信用組合が、組合員X2の懲戒処分等を議題とする団交に、同人が申立人組合と別組合に二重加入していることを理由に応じなかったことが不当労働行為に当たるか否かが争われた事案である。
東京都労委は、信用組合に対し、団交応諾、文書交付及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却した。
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命令主文 |
1 被申立人中ノ郷信用組合は、申立人東京管理職ユニオンが平成23年7月2日付けで申し入れた組合員X2に対する懲戒処分等を議題とする団体交渉に、速やかに応じなければならない。
2 被申立人信用組合は、本命令書受領の日から1週間以内に、下記の内容の文書を申立人組合に交付しなければならない。
記
年 月 日
東京管理職ユニオン
執行委員長 X1 殿
中ノ郷信用組合
代表理事 Y1
当信用組合が、貴組合から平成23年7月2日付けで申入れのあった組合員X2氏に対する懲戒処分等を議題とする団体交渉に応じなかったことは、東京都労働委員会において不当労働行為であると認定されました。
今後、このような行為を繰り返さないように留意します。
(注:年月日は文書を交付した日を記載すること。)
3 被申立人信用組合は、前各項を履行したときは、速やかに当委員会に文書で報告しなければならない。
4 その余の申立てを棄却する。
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判断の要旨 |
1 申立人組合の申立人適格について
被申立人信用組合は、A支店の次長である組合員X2は「人事、労働関係に関する秘密情報に接する地位にある者」又は「人事、労働関係についての機密の事務を取り扱う者」に該当し、労組法2条但書1号にいう「使用者の利益を代表する者」であり、したがって、組合は使用者の利益代表者の参加を許す労働組合であるから、労組法上の労働組合ではなく、本件申立ての適格を有しない旨主張する。
しかし、認定した事実によれば、X2が職員の雇入れ及び解雇や昇進、異動に関して直接の権限を有していたとは認められない。また、人事や労務に関する機密性のある事項に一部接していたとはいえるが、労働関係の計画と方針に関するような機密性のある事項に接していたとまではいえない。以上のとおり、X2が組合員としての誠意と責任に直接抵触する監督的地位に立っているとの事実は見出しがたい。
したがって、X2は、その権限や責任において信用組合の利益を代表する地位になく、その参加を認めたとしても組合の自主独立性を損なうものとはいえず、労組法2条但書1号で定める「使用者の利益を代表する者」に該当せず、信用組合の上記主張は、採用することができない。
2 団交拒否について
労組法は、労働者が労働組合に二重に加入することを否定しておらず、重複して加入している場合であっても、二重交渉の可能性があるなどの事情がない限り、使用者は、当該労働者が労働組合に重複加入していることのみをもって団交を拒否することはできないというべきである。
本件についてみると、組合はX2の懲戒処分等を議題とする団交を平成23年6月3日に申し入れているが、その直後の同月6日に、同人は申立外職員組合の次期執行委員長選挙に立候補したい旨を職員組合に届け出たことが認められる。そうすると、信用組合がこのことを知り、X2が組合と職員組合の両方の組合員であると認識して、同人の懲戒処分等の問題について二重交渉の可能性があると判断したとしても無理からぬところがある。
しかし、信用組合は、職員組合からX2の懲戒処分等についての要求や団交の申入れを受けてはいなかった。
また、6月27日にX2は職員組合の執行委員長から、同月15日付けで同執行委員長が信用組合の代表理事宛に発した、X2を非組合員として対応している旨が記載された文書の写しを受領しているのであるから、信用組合は遅くとも同月27日には、職員組合がX2の懲戒処分等について団交を行う意思がないことを確定的に了知していたというべきである。
したがって、少なくとも6月27日以降は、X2の懲戒処分等の問題について二重交渉の可能性があるといった事情は認められないのであるから、組合が7月2日付けで申し入れた団交に信用組合が応じていないことは正当な理由のない団交拒否に当たる。
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掲載文献 |
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