労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本電気硝子 
事件番号  中労委平成22年(不再)第67号 
再審査申立人  日本電気硝子株式会社(「会社」) 
再審査被申立人  滋賀県労連・滋賀一般労働組合(「組合」) 
命令年月日  平成25年7月3日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 会社は、会社工場のガラス製造業務の一部をA社に請け負わせ、A社は、その一部を更にB社等の孫請会社に請け負わせていた。組合員は、B社に雇用され、会社工場でB社がA社から請け負った業務に従事していた。
 本件は、組合が申し入れた①組合員の直接雇用、②B社が従業員に対し協定・協約なく長時間残業をさせていたことの責任とその是正、③B社等請負会社における雇用保険等未加入の責任とその是正等を議題とする団交に会社が組合員の使用者ではないとして拒否したことが不当労働行為に当たるとして、組合から滋賀県労委に救済申立てがあった事件である。
2 初審滋賀県労委は、上記1の申立事実のうち、①組合員の直接雇用(本件団交事項)、②会社が組合員に対し協定・協約なく長時間残業をさせていたことの責任とその是正に係る団交に応じなかったことが労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるとして、会社に対し上記各事項に係る団交応諾を命じ、その余の救済申立てを棄却したところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てた。
 なお、組合は、再審査の調査において、上記②に関する救済申立てにつき、救済利益を放棄する旨申し述べた。 
命令主文  初審命令主文第1項を取り消し、同項中、協定・協約なく長時間残業をさせていたことの責任問題を交渉事項とする団交に係る救済申立てを却下し、その余の救済申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社と組合員との間に黙示の労働契約が成立するか
ア 組合は、会社と組合員との間に黙示の労働契約が成立していた旨主張する。
イ しかしながら、組合員の採用、配置、労働時間の管理、服務上の規律、解雇等の人事労務管理を行っていたのはB社であり、会社がこれらに関与していたと認めるに足りる証拠はないこと、組合員に給与等を支払っていたのもB社で、会社が給与等の額を事実上決定していたと認めるに足りる証拠もないことに加え、組合員自身が会社に雇用されたとは認識していなかったことなど本件における事実関係の下においては、会社と組合員との間に黙示の労働契約が成立していたものと認めることはできない。
2 会社は、組合員の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配力を有しているといえるか
ア 会社の事業場において就労している組合員の直接雇用という採用、配置、雇用の終了等の一連の雇用管理に関する決定に関わる事項が団交事項となっている本件において、会社が労組法第7条の使用者に当たるといえるためには、会社が、就労の諸条件にとどまらず、上記一連の雇用の管理に関する決定について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有していることが必要である。
イ 本件においては、組合員の採用、配置、解雇等の人事労務管理や給与等の支払を行っていたのはB社であって、これら一連の雇用の管理に関する決定について、会社が雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な関与等をしたことを認めるに足りる証拠はない。
3 会社は、組合員との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者といえるか
ア 組合の主張を前提とすると、いわゆる二重派遣に当たり得る本件においては、労働者派遣法第40条の4の適用に当たり、会社とB社との間に実質的に労働者派遣契約に相当する関係が存在すると認めるに足りる特段の事情のない限り、会社は派遣先に当たらないと解されるところ、本件においては上記特段の事情を認めるに足りる証拠はないから、会社は派遣先に当たらず、そもそも労働者派遣法第40条の4は適用されない。
イ また、組合は、様々な事情を挙げて、会社が組合員を含むB社の従業員を直接指揮命令していた旨主張するが、組合の主張する諸事情をもってしては、会社がB社の従業員を直接指揮命令していたと認めることはできず、この点からしても、会社は派遣先に当たらないから、労働者派遣法第40条の4は適用されない。
ウ さらに、本件においては、B社から会社に対して労働者派遣法第40条の4が定める通知がされたことを認めるに足りる証拠はないから、会社が同条に基づく直接雇用申込義務を負うものと認めることはできない。
エ なお、本件においては、会社に対して組合員の直接雇用に関する行政指導又は行政勧告が行われてはいないのであるから、いずれにしても、会社と組合員との間に、近い将来において雇用関係の成立する可能性が現実的かつ具体的に存していたものと認めることはできない。
4 A社の法人格は否認されるか。
ア 組合は、労組法第7条の使用者に該当するA社と会社にはいわゆる法人格否認の法理が適用され、会社は本件団交事項に関して同条の使用者に該当する旨主張する。
イ しかしながら、A社が会社の100%出資の連結子会社であり、役員や従業員の相当数が会社からの出向者であることなど、A社は会社と密接な関係にあると認められるが、それを超えて、A社の法人格が全く形骸化しているとか、会社がA社の法人格を労働力の中間搾取のために濫用していると認めることはできない。
5 結論
以上のとおり、会社は、本件団交事項に関して、労組法第7条の使用者に当たらない。
6 なお、前記「 事案の概要」1の②については、組合が救済申立てを維持する意思を放棄したものと認められるから、労働委員会規則第33条1項第7号により、同申立てを却下する。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
滋賀県労委平成21年(不)第1号 一部救済 平成22年12月6日
 
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