労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  日本電気硝子 
事件番号  滋労委平成21年(不)第1号 
申立人  滋賀県労連・滋賀一般労組 
被申立人  日本電気硝子株式会社 
命令年月日  平成22年12月6日 
命令区分  一部救済 
重要度   
事件概要    申立人組合の組合員X2は、申立外請負会社Aに雇用され、被申立人会社の一事業場で勤務していた。本件は、組合が会社とAら請負会社との関係は請負ではなく労働者派遣であるとして、会社にX2の直接雇用その他の事項を議題とする団体交渉を申し入れたのに対し、同社が、使用者には当たらないとして応じない旨回答したことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 滋賀県労委は、会社に対し、X2に対する雇用契約の申込み及び会社が同人を違法に長時間残業させていたことについての責任問題を交渉事項とする団体交渉に応じるよう命じ、その余の申立てを棄却した。
命令主文  1 被申立人は、申立人に対し、平成20年12月15日付け「貴社の下請け、請負会社(株)リクオーに雇用されるX2氏の直接雇用の申し入れならびに団体交渉申し入れ」と題した書面による団体交渉申入れのうち、被申立人のX2氏に対する雇用契約の申込および被申立人が同人を協定・協約もなく労働基準法に違反し長時間残業をさせていたことについての責任問題を交渉事項とする団体交渉に応じなければならない。
2 申立人のその余の申立は棄却する。 
判断の要旨  1 被申立人会社は、本件団体交渉申入れのうち組合員X2の会社及び申立外会社Bへの直接雇用を求めたことについて、労組法7条2号における団体交渉応諾義務を負う「使用者」に当たるか。
 X2が勤務していた工程においてAら請負会社は自己の雇用する労働者を会社の指揮命令を受けて労働に従事させていたといえるので、会社とA、X2の3者間の関係は労働者派遣に該当すると解される。そして、会社及びBは偽装請負であることを知りながら派遣受入可能期間を超えてX2の労務提供を受け続けていたものであり、かつ、X2は派遣先での雇用を希望するものと認められることから、会社らのX2に対する雇用契約の申込み義務が発生し、本件団体交渉申入れ時まで存続していたと認められる。
 雇用契約の申込み義務が具体的に発生し、その対象たる派遣労働者との間で労働条件について誠実に交渉しなければならない段階においては、派遣先は当該派遣労働者との雇用契約が成立する可能性が現実的かつ具体的に存する者というべきであるから、「雇用主に準ずる者」として、労組法7条2号の「使用者」に当たるというべきである。また、この場合の雇用契約の申込みは、既に使用していた派遣労働者を継続して使用しようとするものであるから、その申込み義務の履行やその場合の労働条件は、一般に義務的団体交渉事項と解されている「労働者の労働条件その他の待遇」に当たるというべきである。したがって、会社は団体交渉義務を負う「使用者」に当たり、X2に対する雇用契約の申込みは義務的団交事項と認められるから、会社が本件団交を拒否したことは不当労働行為に該当する。
2 被申立人会社は、本件団体交渉申入れのうち上記1以外の交渉事項について、労組法7条2号における団体交渉応諾義務を負う「使用者」に当たるか。
 X2らの労働・社会保険への加入に関しては、団交応諾義務を負う「使用者」は原則として雇用主である各請負会社であり、また、会社が当該加入に関し雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったと認めるに足る事情は認められないから、会社を「使用者」と認めることはできない。
 労基法に違反する長時間残業に関しては、会社はX2の派遣先として同人に対し、派遣元であるAとの間での三六協定もなく労基法に違反して長時間残業をさせてはならない義務を負っている。したがって、かかる義務違反の責任及び是正措置の方針を明らかにすることについては、会社は「使用者」であると解される。
3 組合は、会社が本件団体交渉申入れに応じないことについて、救済申立てを行う利益があるか。
 X2は本件申立て時以前にAから解雇されているが、派遣先の雇用契約の申込み義務の問題と派遣元との雇用の問題は全く別問題であり、派遣元との雇用が終了したとしても雇用契約の申込み義務が消滅するものではないから、組合の被救済利益は失われないと解するのが相当である。
 また、違法に長時間残業させていることの責任等については、X2がもはやその事業場で就労していない以上、「是正措置の方針を 明らかにすること」については被救済利益はないが、長時間残業に係る責任の取り方については、なお交渉によって解決させる必要がなくなったとは認められないので、被救済利益は失われていないと解するのが相当である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
中労委平成22年(不再)第67号 一部変更 平成25年7月3日
 
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