労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  西日本旅客鉄道(西労和歌山配転) 
事件番号  中労委平成23年(不再)第32号 
再審査申立人  ジェーアール西日本労働組合(以下「組合」) 
再審査申立人  ジェーアール西日本労働組合関西地域本部(以下「関西本部」) 
再審査申立人  組合員X 
再審査被申立人  西日本旅客鉄道株式会社(以下「会社」) 
命令年月日  平成25年5月15日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、和歌山支社管内の和歌山列車区所属運転士Xを、平成21年6月1日付けで、同支社管内橋本運転区の運転士に配置転換したこと(本件配転)が労組法7条1号及び3号の不当労働行為に当たるとして、組合、関西本部及びX(以下「組合ら」)が、同年11月13日、和歌山県労委に救済を申し立てた事案に関するものである。
2 初審和歌山県労委は、組合らの申立てを棄却したところ、組合らは、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  本件各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 本件配転は、Xの組合活動の故をもって行われた不利益取扱いに当たるかについて
ア 本件配転は、橋本運転区において定年退職予定の運転士1名、また、転勤前提の社内研修受講予定の運転士1名の欠員補充の一環として行われたものであり、このうち、社内研修受講予定者について、組合らは、転出まで待って欠員補充するのが自然である、Xと同時に配転となった運転士Zには配転の事前打診がされたが、Xには一切なかったとして、21年6月1日付けでの欠員補充の必要はなかった旨主張する。
 しかし、社内研修受講予定者は、同年7月2日から約1か月間にわたって不在となり、受講後は転勤が予定されていた(現に同人は同年10月15日付けで転勤している)のであり、これを前提に、中長期的な要員需給等諸般の事情を考慮して、欠員発生前に定期異動に合わせて予想される欠員の補充を行うことは、会社の人事配置上の判断として不合理なものとはいえない。また、事前打診の点については、Xの陳述書にその旨の記載があるが、伝聞にすぎず、これを裏付ける証拠の提出がないこと、Zの配転は会社基準による事前打診が行われる場合に該当しないことから、会社がZに対して事前打診をした事実を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。したがって、組合らの主張は採用できない。
イ 会社は、本件配転に際し、①橋本運転区に通勤可能な範囲に居住していること、②ベテラン社員(国鉄当時に採用された社員)であること、③電気列車(EC)の運転免許を所持していること(ディーゼル免許所持者を除く)、④指導操縦者の指定を受けていないこととの人選基準を設けて人選を行った旨、組合らは、会社の人選基準には合理性がない旨主張する。
 しかし、橋本運転区が所在する橋本市には社宅等が存在せず、同区ではECのみの運行であること、また、会社における技術等の継承、安定的な業務遂行や安全性確保の観点等からすれば、人選基準は、いずれも合理性が認められ、組合らの主張は採用できない。
ウ 組合らは、本件配転によって、Xは業務上の負担が増大し、また、組合活動に重大な支障が生じている旨主張する。しかし、本件配転後のXの通勤時間は、社員全体の中で格別に長時間であるとはいえず、通勤時間の増加によるXの運転士としての業務に影響が生じていることを認めるに足りる証拠はない。また、業務上の負担が過重であるとは認められない。さらに、組合活動の時間の制限は大幅なものとは認められない。したがって、組合らの主張は採用できない。
エ 組合らは、Xが、関西本部和歌山地方本部の行った安全闘争を陣頭指揮してビラ配布を行い、また、JR福知山線脱線事故に対するミサを主導したことを嫌悪した旨主張する。しかし、ビラ配布についての会社の対応は、従来会社が執っていたものと異なるものではなく、また、ミサに対するXの取組について、会社が知っていたとは認められないこと等からすると、会社がXの活動を嫌悪するとは考え難いから、組合らの主張は採用できない。
オ 以上のとおり、本件配転は、会社における業務上の必要性及び合理的な人選基準に基づき行われたものであること、また、本件配転によるXへの業務上及び組合活動上の影響は大きなものとは認められないこと、さらに、会社が本件配転に際してXの組合活動を嫌悪していたとは認められないことから、本件配転は、Xの組合活動の故をもって行われたとはいえず、その余の点を検討するまでもなく、労組法7条1号の不当労働行為に当たらないと判断するのが相当である。
2 本件配転は、組合の弱体化を企図して行われた支配介入に当たるかについて
 本件配転により組合運営に大きな支障が生じているとは認められず、また、会社が本件配転により組合を弱体化する意図を有していたとは認められないことから、本件配転は労組法7条3号の不当労働行為に当たらないと判断するのが相当である。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
和歌山県労委平成21年(不)第3号 棄却 平成23年4月6日
 
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