労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  NTT東日本-茨城 
事件番号  中労委平成23年(不再)第41号 
再審査申立人  東日本NTT関連合同労働組合茨城支部(「組合」) 
再審査申立人  組合員X1、X2及びX3(X1らといい、「組合」と併せて「組合ら」) 
再審査被申立人  株式会社NTT東日本-茨城(「会社」) 
命令年月日  平成25年4月17日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、①会社が、組合との対面窓口交渉実施の前日である20年12月24日に、X1らに対して、「個人所有等パソコン自己点検・自主点検 確認書」及び「情報漏洩防止ツール実施結果報告書」(両者を総称して「確認書等」)の提出を求めたこと、②会社が、提出期限までに確認書等の提出がなかったとして、21年2月4日、X2に対して口頭注意を、21年2月17日、X1及びX3に対して訓告処分を行ったこと、③組合から20年12月5日付け対面窓口交渉申入れがあったにもかかわらず、確認書等の提出期限である同月17日を過ぎた同月25日まで対面窓口交渉が開かれず、同日行われた対面窓口交渉(「12.25交渉」)及び21年2月25日に開催された団体交渉(「2.25団交」)における会社の対応が不誠実であったこと、が不当労働行為であるとして救済申立てがあった事件である。
2 初審茨城県労委は、いずれも不当労働行為には該当しないとして救済申立てを棄却したところ、組合らはこれを不服として、再審査を申し立てた。 
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 X1らに対する訓告処分等は、不利益取扱い及び支配介入に当たらない。(争点①)
ア 会社の点検等命令は、NTT東日本グループ等で個人情報の漏えいが何度も繰り返された事態に対応して出され、その方法は、自宅所有パソコン(PC)に、会社指定ツールを使用して、確認させるものであった。これに対し、組合は、会社所定ツールを使用した場合の個人所有PCへの影響等を危惧し、点検の法的根拠等の疑義を述べて会社の回答を求め、この会社の回答が不十分であるとして、会社の命令を履行せず、紛争を招くに至ったものである。
 このように本件点検等命令が組合に不安と疑問を抱かせたことが認められるとしても、会社が電気通信事業を営む上で、取り扱う個人情報等の漏えいを未然に防ぐべき高度の必要性と切迫性が存在したことに照らせば、全社員に対して一律に発せられた点検等命令が不当であると言うことはできない。
イ また、確認書等の提出期限は、全社員一律に指定されたこと、会社は、NTT東日本グループ全体で確認された方針に従って手続を進めたこと、組合の組合員以外の確認書等を提出しなかった社員に対しても口頭注意を行ったことが認められることからすれば、会社は、点検等命令の履行を確保するために、命令に従わず、また、履行が遅れたX1らを、訓告処分や口頭注意の対象としたとみることができる。
ウ 他方で、会社においては、組合の疑問を解消させ、スムーズな点検の実施に漕ぎ着けるための配慮がしかるべくなされていたとは言い難い。また、第1回事情聴取の際、X1らが対面窓口交渉の結果を踏まえて、自己点検を実施するかどうか、組合として判断すると述べていたことを考えれば、会社には、12.25交渉により決着を図るべく組合を促し、また組合が述べる問題点を速やかに解消すべく柔軟に対応するなどの努力が期待されたものであるところ、その点が十分であったとは言い難い。
エ しかしながら、これらを総合して勘案しても、会社のX1らに対する訓告処分や口頭注意が、組合の組合員であることを理由として行われたものであるとまでは解することができず、また、組合を弱体化させる意図若しくは組合の運営・活動を妨害しようとする意図まで認めることはできないから、労組法第7条第1号及び第3号に該当しない。
2 20年12月24日に会社が、X1らに対して個別に事情聴取して、確認書等の提出を求めたことは支配介入に当たらない(争点②)
 会社は事情聴取とは関わりなく交渉日を設定しており、事情聴取の日程はNTT東日本グループ全体のスケジュールによったものと窺われ、さらに、事情聴取の対応も不当な態様のものでなかったことから、他に会社に事情聴取が組合の足並みを乱させる意図があったこと、若しくは実際に組合活動に支障が生じたこと等について的確な証拠のない本件においては、会社が、X1らに対して個別に事情聴取して、確認書等の提出を求めたことは労組法第7条第3号に該当しない。
3 20年12月5日付け対面窓口交渉の申入れに対して、確認書等の提出期限である同月17日までに交渉を行わず、同月25日に至るまで開催しなかったこと及び12.25交渉及び2.25団交における会社の対応は、団交拒否及び支配介入に当たらない(争点③)
ア 会社は組合に正式に確認書等の提出期限を通告していなかったものの、同年11月の時点で確認書等の提出期限が同月17日であり、提出しない場合は処分もあり得ることを上長を通じて、組合及び組合員らは了知していた。組合は、確認書等の提出期限以前に団体交渉を実施するよう会社に申し入れることができたのにこれをしていない。したがって、この点について労組法第7条第2号に該当しない。
イ 会社は点検等命令が労働条件に関わることを否定しつつも、組合からの質問には、その場で若しくは後刻、それなりに答えており、会社の団体交渉等における対応は必ずしも十分でないが、不誠実なものであったとまではいえない。なお、12.25交渉において会社側の交渉委員が終了予定時刻になってすぐに席を立ったこと、及び2.25団交において会社側の交渉委員が組合側の交渉委員に発言者の名前を尋ね、その発言を遮ったことにより交渉が妨げられたとは認められない。
ウ 以上により、会社の12.25交渉及び2.25団交における対応は、労組法第7条第2号に該当しない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
茨城県労委平成21年(不)第4号 棄却 平成23年4月21日
 
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