労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  岡本技研 
事件番号  中労委平成23年(不再)第36号・37号 
36号再審査申立人  ゼネラルユニオン(以下「組合」) 
37号再審査申立人  株式会社岡本技研(以下「会社」 
36号再審査被申立人  株式会社岡本技研 
37号再審査被申立人  ゼネラルユニオン 
命令年月日  平成25年3月21日 
命令区分  一部変更 
重要度   
事件概要  1 本件は、①会社次長らがX1組合員に組合のリーダーかなどと尋ねたこと、会社が、②X1組合員らに対し時間外労働を命じなかったこと、③組合の会社門前での抗議活動(以下「組合活動」)をビデオで撮影するなどしたこと、④X2組合員を就労させなかったこと、⑤会社次長が朝礼で組合非難の発言をしたこと、会社が、⑥X1組合員に対し、賃下げを伴う職種変更提案を拒否したことを理由に就労させなかったこと、⑦X3組合員の解雇撤回等を議題とする団体交渉申入れに誠実に対応しなかったこと、⑧X1組合員らに対し、指導証明書への署名拒否を理由に就労を認めなかったこと、⑨X1組合員らに対し三交代制勤務を命じたこと等が労組法第7条各号の不当労働行為に当たるとして、組合から、21年4月16日外に大阪府労委に申立てがあった事案である。
2 初審大阪府労委は、上記1の申立事実のうち、①、②、④ないし⑥、⑧及び⑨について労組法第7条1号及び同条3号の不当労働行為に当たるとして、会社に対し、時間外労働に関する差別禁止、時間外労働及び就労部分の賃金差額の支払い、文書手交を命じ、③及び⑦等については救済申立てを棄却したところ、組合及び会社は、これを不服として再審査を申し立てた。 
命令主文  I 本件初審命令主文第5項を取り消し、同項に係る救済申立てを棄却する(上記申立事実⑨)。
II 本件初審命令主文第1項ないし第4項、及び第6項を次のとおり変更する。
1 会社は、外国人現業従業員に時間外労働を命じるに当たって、組合の組合員に対し、他の外国人現業従業員と同等に取り扱わなければならない(上記申立事実②)。
2 会社は、X1組合員、X3組合員、X4組合員及びX2組合員に対し、時間外労働に従事していたならば支払われたであろう時間外手当相当額と既支払額との差額相当額を支払わなければならない。この場合において時間外手当相当額は、当該期間における上記組合員以外の外国人現業従業員の平均時間外労働時間数を基礎に算出するものとする(上記申立事実②)。
3 会社は、X2組合員に対し、就労していたならば得られたであろう賃金相当額と既支払額との差額相当額を支払わなければならない(上記申立事実④)。
4 会社は、X1組合員に対し、休業とされた日について、就労していたならば得られたであろう賃金相当額と既支払額との差額相当額を支払わなければならない(上記申立事実⑥)。
5 会社は、X1組合員、X4組合員、X3組合員に対し、指導証明書への署名拒否を理由として欠勤扱いとした期間について、就労していたならば得られたであろう賃金相当額と既支払額との差額相当額を支払わなければならない(上記申立事実⑧)。
6 文書手交(上記申立事実①、②、④ないし⑥、及び⑧)
III その余の本件各再審査申立てを棄却する。 
判断の要旨  1 会社の労組法上の使用者性
 M社は、会社社長が設立し、役員全てが会社と共通するほか、会社工場で部品製造を行い会社以外の取引先がなく、M社所属従業員の採用を含む労務管理、作業指示等を会社が行い、賃金や労働条件も会社と同一であり、M社は会社の一部門にすぎないものであって、独立の使用者の実態を有せず、M社の従業員の採用は会社による振り分けにすぎず、賃金額も会社が実質的に決定していたといえ、これらによれば、会社は、M社所属の従業員である組合員らの労組法第7条の使用者に当たる。
2 時間外労働を命じなかったこと(上記申立事実②)
ア 会社の売上げや組合員らの担当ラインの受注量は減少しているが、非組合員の従業員は時間外労働を行っていたことから、組合員らだけに時間外労働を命じない必要性があったとは考え難い。入社以来、出勤日の大半時間外労働を行っていた組合員らに、組合公然化以後、時間外労働を命じておらず、同人らの時間外労働時間には顕著な減少がみられる。
イ 加えて、会社が、組合公然化当初から組合を嫌悪していたと認められることも併せ考えれば、会社が組合員らに時間外労働を行わせなかったことは、労組法第7条1号の不当労働行為に当たる。
3 職種変更の提案拒否を理由に就労させなかったこと(上記申立事実⑥)
ア 会社の受注量は減少していたが、大半の現業従業員は時間外労働を行っており、減給を含む職種変更を提案された者がいなかったことからすれば、会社はX1組合員に賃金減額を伴う職種変更を提案する必要は乏しかったと言わざるを得ない。
イ 加えて、会社が、組合活動以後、組合嫌悪の意図を明らかにしていたことも併せ考えれば、会社が、X1組合員に賃下げを伴う職種変更を提案し、拒否を理由に同人の就労を拒否したことは、労組法第7条1号及び3号の不当労働行為に当たる。
4 指導証明書への署名拒否を理由に就労を認めなかったこと(上記申立事実⑧)
ア 会社が指導証明書に署名を求めることに問題はなく、組合員らが会社の指示に従わなかったことは、形式的には会社の秩序を乱すおそれのあるものに該当するといえるが、会社と組合との間で指導証明書の内容を協議している段階であったこと、指導証明書を導入しないと会社の生産性が落ちる事情もないことなどの諸事情を考慮すれば、指導証明書に署名しなかった者に対し、直ちに出勤停止とする必要があったとはいえず、不当に重い処分と言わざるを得ない。
イ 加えて、会社が、組合活動以後、組合嫌悪の意図を明らかにしていたことも併せ考えれば、かかる会社の行為は、労組法第7条1号の不当労働行為に当たる。
5 三交代制勤務を命じたこと(上記申立事実⑨)
ア 三交代制勤務は賃金の減額を伴い、二交代制勤務と併存し二交代制勤務者が多かったことから、三交代制勤務を導入する必要性があったかは疑わしい。しかし、会社は、導入前に、組合に対し、受注量減少により一部の者だけが残業する体制の中で不公平感をなくすため三交代制勤務を導入する旨説明し、会社の売上げが大きく落ち込んでいることから時間外労働を削減する必要があったことはうかがえ、三交代制勤務導入の必要性を完全に否定することはできず、三交代制勤務者の多数が非組合員であり、X2組合員は従前どおり二交替制勤務であったことも併せ考えると、X1組合員とX4組合員を組合員であるが故に三交代制勤務に配属したとはいえない。
イ したがって、この点に関する会社の再審査申立てには理由があり、組合の救済申立ては棄却を免れない。 
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成21年(不)第25・76号 一部救済 平成23年5月6日
 
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