労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  パナソニックプラズマディスプレイ  
事件番号  中労委平成23年(不再)第42号  
再審査申立人  なかまユニオン(「組合」)  
再審査申立人  組合員X  
再審査被申立人  パナソニックプラズマディスプレイ株式会社(「会社」)  
命令年月日  平成24年10月17日  
命令区分  棄却  
重要度   
事件概要  1 本件は、会社の次の行為が不当労働行為であるとして、組合が大阪府労委に救済申立てを行った事件である。
① 会社が、平成18年1月31日に組合員Xを雇止め(以下「本件雇止め」という。)としたこと等、組合員Xの雇用に関して行った一連の行為(労働組合法第7条第1号・第3号関係)
② 会社が、組合が平成22年1月12日に申し入れた団体交渉(以下、団体交渉を「団交」といい、この団交申入れを「本件団交申入れ」という。)に応じなかったこと(同条第2号関係)
2 大阪府労委は、①については、組合及び組合員Xの救済申立ては申立期間を徒過しているとして却下し、②については、組合員Xの救済申立ては申立人適格がないとして却下し、組合の救済申立ては不当労働行為に当たらないとして棄却する旨の命令書(「初審命令」)を交付した。これに対し、組合及び組合員Xは、初審命令を不服として再審査を申し立てた。  
命令主文  本件各再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 組合員Xの雇用に関する会社の行為について
ア 本件雇止めは平成18年1月31日に、本件救済申立ては平成22年3月1日になされているから、本件救済申立てが本件雇止めから1年を超えてなされたものであることは明らかである。そして、仮に、会社が、組合員Xに対し、一貫した不当労働行為意思に基づき、リペア作業を命じ、本件雇止めを行い、あるいは、同組合員には期間社員制度への応募を勧めず、同制度に基づき会社に雇い入れようとしなかったと評価できるとしても、本件雇止めとその他の上記行為とは、その内容に照らしてそれぞれ別個の独立した行為とみるのが相当であるから、これらの行為を労働組合法第27条第2項の定める「継続する行為」とみて、本件雇止めについて申立期間が未だ経過していないとする組合の主張は採用することができない。したがって、本件雇止めに係る救済申立ては、申立期間を徒過しており、適法になされたものとは認められない。
イ 平成22年1月12日の本件団交申入れの要求事項には、その文言からみても、それ以前の組合ないし組合員Xの対応からみても、期間社員制度に基づく雇用契約の申込みの趣旨が含まれていたと認めることはできず、本件団交申入れに対する同月15日の会社回答をもって、会社が、組合員Xを期間社員制度に基づいて雇用しない旨の意思表示など、労働組合法第7条第1号又は同条第3号の不当労働行為の対象となり得る行為をしたものとみることはできない。
2 本件団交申入れに会社が応じなかったことについて
ア 組合員Xは、会社の「雇用する労働者」に該当するか。
 本件においては、別件訴訟の最高裁判決により、組合員Xと会社の雇用契約関係が、平成18年1月31日の本件雇止めをもって終了したことが法律上確定しているから、雇用契約の終了から約4年を経て行われた本件団交申入れの時点において、同組合員は、会社が現に「雇用する労働者」であったとはいえない。ただし、本件団交申入れにおいて組合が要求した事項には、組合員Xが会社に雇用されていた時の業務内容に係る問題といった、雇用関係継続中に既に紛争が顕在化していた事項等も含まれており、仮に、これらの事項が最高裁判決によっても解決済みでないとすれば、組合員Xが労働組合法第7条第2号の「雇用する労働者」に当たり得る余地があると考えられるので、以下検討する。
イ 本件団交申入れの要求事項に、なお団交によって解決すべきものがあるか。
 本件団交申入れにおける組合の要求事項は、①リペア作業を強いるなど組合員Xに対して行った人権侵害について謝罪すること、②組合員Xを本件雇止めとしたことを謝罪すること、③本件雇止めを撤回し、パナソニックの正社員として組合員Xを雇用し、封着工程に復帰させること、④復職に当たっては、有給休暇その他の労働条件は、労働組合との協議の上決定すること、⑤賠償金については、将来に向けて会社が積極的に責任を果たしていくという位置づけで取扱いを決定することの5項目であった。
 仮に、本件団交申入れにおける組合の要求事項が、別件訴訟の手続において判断対象とされなかった事項を含み、これが、なお団交によって解決すべきものと判断される場合には、会社には、団交に応じるべき義務が存する余地があると考えられるので、以下、各要求事項について、この観点から検討する。
(ア) 要求事項①及び②について
 リペア作業に係る業務命令や本件雇止め及びこれに至る会社の行為に関する法的責任については、会社が別件訴訟の最高裁判決に従って履行を提供したことにより、既に決着済みといえる。したがって、組合が、これらについて謝罪を求めている点については、終局的な紛争解決が図られた事項の蒸し返しとみるほかなく、会社が団交に応じなければならない義務はないというべきである。
(イ) 要求事項③について
 別件訴訟の最高裁判決により、組合員Xと会社の間の雇用契約関係が終了していることが法律上確定し、本件雇止めに関する紛争は決着しているのであるから、この点について、会社が団交に応じなければならない義務はないというべきである。
(ウ) 要求事項④について
 要求事項③に関して会社に団交応諾義務があることを前提とする要求事項④についても、会社が団交に応じなければならない義務はないというべきである。
(エ) 要求事項⑤について
 組合が団交において、慰謝料に関する取扱いを判決から変更することを求めたとしても、会社が応じるべき義務はないというべきである。
ウ 以上検討してきたとおり、本件団交申入れの要求事項の中に、会社が組合との団交に応じるべき事項がなお存在するとは認められず、本件団交申入れ時点において、組合員Xが会社の「雇用する労働者」に当たるとはいえないのであるから、その余を判断するまでもなく、会社が組合の本件団交申入れに応じなかったことが、労働組合法第7条第2号の不当労働行為に該当するとはいえない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成22年(不)第8号 棄却 平成23年5月24日
 
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