労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  帝産キャブ奈良  
事件番号  中労委平成24年(不再)第4号  
再審査申立人  株式会社帝産キャブ奈良(「会社」)  
再審査被申立人  帝産キャブ奈良労働組合(「組合」)  
命令年月日  平成24年10月3日  
命令区分  一部変更  
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、会社を解散し清算するとの決定を行ったとして、平成23年10月31日をもって全従業員を整理解雇すること等の通知を組合に対して行ったことをめぐって、三度にわたって組合が申し入れた団体交渉に応じなかったことが労働組合法(「労組法」)第7条第2号に規定する不当労働行為に該当するとして、奈良県労働委員会に救済申立てがあった事件である。
2 初審奈良県労働委員会は、会社が団体交渉に応じなかったことは、不当労働行為に該当するとして、組合が申し入れた会社解散に伴う従業員の解雇等にかかわって協議を求めた議題をめぐる団体交渉に応じなければならないことを命じた。会社は、これを不服として再審査を申し立てた。  
命令主文   初審命令主文第1項を次のとおり変更する。
 株式会社帝産キャブ奈良は、帝産キャブ奈良労働組合が平成23年9月13日、同月15日及び同月22日に申し入れた団体交渉の団体交渉事項のうち、会社解散に伴う組合員の雇用の継続に関する限りにおいて団体交渉に誠実に応じなければならない。  
判断の要旨  1 会社は被申立人適格を有するか、また、組合は不当労働行為救済申立ての利益を有するか
ア 会社の被申立人適格について
 会社は、本件団体交渉を行うことは清算の目的の範囲外の行為であるから、被申立人適格がないと主張するが、株式会社の清算の目的は、同会社の清算事務の遂行つまり財産関係の整理のことであるところ、労働組合との間で株式会社の解散に伴う従業員の解雇等に関する議題の団体交渉を行うに当たっては、何らかの金銭給付に関する事項が議題となるのは必定である。現に本件では、組合は、会社に対し最終的には特別退職金の支給を要求している。そうすると、会社が本件団体交渉を行うことは、会社の財産関係の整理に関係するから、これを清算の目的の範囲外の行為ということはできない。
イ 組合の救済申立ての利益について
 初審命令後に、会社の事業譲渡及び譲受が認可され、会社は、既に建物を取り壊し、事業廃止届を提出したとの事情の変動が認められるが、会社は清算株式会社として存続することは明らかであり、他に初審命令が失効したことをうかがわせる事情は何ら存在しないから、組合の救済申立ての利益が消滅したということはできない。
ウ 以上のとおり、本件救済申立てを却下すべきであるとする会社の主張はいずれも理由のないものである。
2 会社が、組合の申入れに係る団体交渉を拒否したことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当するか
ア(ア) 使用者は、労働組合から団体交渉を申し込まれた場合、全ての団体交渉の議題について、交渉に応じなければならないというわけではない。使用者が応諾しない場合に不当労働行為となるのは、議題が義務的団体交渉事項、すなわち、労働者の労働条件の維持改善その他経済的地位の向上に関連する事項や労働組合の存立と活動に関連する事項に関連し、使用者が処分可能な事項の場合に限られる。
(イ) 組合が申し入れた本件団体交渉の議題は、会社の解散決定という事態を受けて、雇用継続をめぐる組合員の労働条件に関する限度で義務的団体交渉事項に該当する。
 これら組合員の労働条件に関する議題は、会社が清算株式会社であっても、団体交渉により組合と協議して、一定の合意を形成することは可能であることはいうまでもない。
(ウ) 会社は、10月7日に団体交渉を行った旨主張するが、同日行われた話し合いを組合申し入れに係る本件団体交渉として行われたものとみることはできない。
イ 以上でみたとおり、会社が、組合が9月13日、同月15日及び同月22日に申し入れた本件団体交渉の議題は、組合員の雇用の継続に関する限りにおいて義務的団体交渉事項に当たるから、本件団体交渉を拒否したことは、労組法第7条第2号の不当労働行為に該当する。
3 救済方法について
 本件にあっては、会社は、株主総会の解散決議を経て、清算株式会社として清算手続中であり、しかも既に監督官庁の認可を得て事業を譲渡して、事業廃止届を提出し、初審命令後に事業のための施設も取り壊したことが認められるから、組合が求めた本件団体交渉議題であって義務的団体交渉事項に該当するもののうち、解散の撤回及び事業の継続は、もはや団体交渉による解決の途が閉ざされたものといえるので、救済の必要性はない。本件に関する救済の方法としては、会社解散に伴う組合員の雇用の継続に関する限りにおいて、団体交渉への誠実応諾を命ずることが相当である。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
奈良県労委平成23年(不)第3号 一部救済 平成24年1月10日
 
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