概要情報
事件名 |
帝産キャブ奈良 |
事件番号 |
奈労委平成23年(不)第3号 |
申立人 |
帝産キャブ奈良労働組合 |
被申立人 |
株式会社帝産キャブ奈良 |
命令年月日 |
平成24年1月10日 |
命令区分 |
一部救済 |
重要度 |
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事件概要 |
被申立人会社が申立人組合に対し会社解散の通知をした後、組合から申入れのあった従業員の雇用継続等に関する団交に応じなかったことは不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
奈良県労委は、会社に対し誠実団交応諾を命じ、その余の申立てを棄却した。
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命令主文 |
1 被申立人は、会社解散に伴う従業員の解雇等に関わって申立人が協議を求める議題に関し、申立人と誠実に団体交渉しなければならない。
2 申立人のその余の申立ては棄却する。
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判断の要旨 |
1 団交開催要求に対する被申立人会社の対応について
申立人組合が被申立人会社に対し申し入れた団交の議題・要求事項は、①解散決定の撤回・事業の存続・全従業員の雇用の継続に係る要求、②事業廃止を回避すべく努力したことの痕跡がないことについての説明、③今回の解散決議に至る経過・その理由、事業の停止・全員の整理解雇の必要性・合理性等についての詳細説明、団体交渉に先立って過去3年間の財務諸表を開示することの要求などであり、組合員の雇用及び労働条件に関する事項であるから、義務的団交事項である。
会社は、団交拒否の理由として、「臨時株主総会の会社解散・清算決議の撤回を求める団体交渉には応諾できないこと、株主総会の専権事項につき、取締役会及び代表取締役にはこれに立ち入る権限がない」旨主張する。しかし、確かに会社解散・清算決議は株主総会の専権事項に属するものではあるが、それらに伴う従業員の解雇等については労働関係の変更や終了に当たるものであり、これらについては使用者に団交義務がある。
会社は、上記以外の主張をしていないこともあり、会社が主張する理由では団交を拒否する正当な理由があるとは認められない。したがって、組合の団交開催要求に対する会社の対応は労組法7条2号の団交拒否に該当する。
2 会社解散・清算決議後の救済利益
会社は、会社が清算法人に移行した場合、会社と社員との関係では財産上の処理が中心であって、団交は清算の目的の範囲外である旨主張する。しかし、従業員対策等も清算人の職務であり、会社解散に伴う従業員の解雇等に係る団交に応じることも清算人の清算事務に該当する。また、組合の求める救済のうち、会社解散に伴う解雇等にかかわる団交の議題は、法令上又は事実上実現することが不可能(労働委員会規則33条1項6号)なものとは言えず、会社が救済命令を履行することは可能であることから、本件申立てに係る救済利益が存在すると判断する。
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掲載文献 |
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