労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  辻興業 
事件番号  中労委平成24年(不再)第11号  
再審査申立人  全日本港湾労働組合関西地方大阪支部(以下「組合」)  
再審査被申立人  株式会社辻興業(以下「会社」)  
命令年月日  平成24年9月19日  
命令区分  棄却  
重要度   
事件概要  1 本件は、申立外D社の下記行為(以下「申立事実」)が、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たり、かかる不当労働行為に関して会社が、労組法第7条の「使用者」に当たるとして、組合から平成22年10月15日、大阪府労働委員会(以下「大阪府労委」)に申立てがあった事案である。
(1) 同年8月1日、D社との間で自主管理歩合制業務契約(以下「契約」)を締結し運送業務に従事している組合員らに対し、D社が同人らとの契約を同年9月1日付けで破棄する旨通知したこと
(2) 同年8月10日、D社を解散したこと
(3) 同月23日、車庫から組合員らが用いていた車両3台を撤去し、同月24日以降、同人らの就労を拒否したこと
2 初審大阪府労委は、会社は組合員らの労組法第7条の「使用者」に当たらないとして組合の申立てを却下したところ、組合は、これを不服として再審査を申し立てた。  
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 組合員らは、労組法上の「労働者」に当たるかについて。
 組合員らは、D社との間で、運送業務の労務を提供し賃金を受領するという雇用契約が成立し、就労を開始した。雇用契約成立後に作成された契約書には、組合員らに運送業務の管理責任を負担させ、賃金が歩合給であるなどの特約が記載されているが、契約書作成前後の業務の実態と賃金の支払に何ら変わりがないから、組合員らは、D社との関係において、労組法上の「労働者」に当たることは明らかである。
2 会社は、労組法第7条の「使用者」に当たるかについて。
ア 雇用主以外の者であっても、当該労働者の基本的な労働条件等に対して、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有しているといえる者は、労組法上にいう「使用者」に当たると解するのが相当である。
イ 組合員らにとって、雇用契約上の雇用主はD社であり、組合員らは、運送業務を行う際、会社からは指示を受けていなかった。会社とD社との間に資本関係はなく、会社が契約の締結や組合員らの賃金の決定などに関与し、現実的かつ具体的な支配力を有していたとは認められない。したがって、会社が、組合員らの基本的な労働条件等に対して、D社と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有している者とはいえない。
ウ D社の法人格は形骸化しており、同社は会社の一部門にすぎない旨の組合の主張については、事務員が会社とD社の事務を兼務し、組合員らの源泉徴収票に会社の事務所の電話番号が記載されている事情からすれば、両社は厳密に区別されることなく運営されていたことがうかがわれるが、D社は、株主総会で解散決議をしているので、形骸化しているとはいえない。
 また、①D社は、K社からの注文を受けて運送業務を行っており、他方、会社は、M社からの注文を受け梱包業務を行っていたこと、②会社の従業員が、組合員らの業務を手伝ったり、同業務の指示をしたことはなかったこと、③契約書の当事者はD社であり、組合員らの源泉徴収票の支払者欄にD社と記載されていたこと、④D社が所轄運輸局長に一般貨物自動車運送事業廃止届を提出したこと、及びD社が組合や組合員らに対し様々な申入れを行っていたことに対し、会社が何らかの申入れをした形跡はないこと、⑤組合もD社に対して団交申入れ等を行っていることからすれば、組合もD社を団交等の当事者として認識していたことなどを併せ考えると、D社が実態のない企業で、会社の一部門化しているとはいえない。
エ また、組合は、偽装解散事案である旨も主張するが、D社は、株主総会により解散を決議し、その旨登記をし、所轄運輸局長あてに一般貨物自動車運送事業廃止届を提出しているのに対して、会社がD社の業務を承継した形跡は何らうかがわれないことなどを併せ考えると、偽装解散事案ということはできない。
オ したがって、会社は、申立事実について、組合員らの労組法第7条の「使用者」には当たらない。
3 以上のとおりであるから、本件再審査申立ては理由がない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
大阪府労委平成22年(不)第64号 却下 平成24年2月13日
 
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