労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  SETソフトウェア 
事件番号  中労委平成22年(不再)第56号 
再審査申立人  東京管理職ユニオン(「組合」) 
再審査被申立人  SETソフトウェア株式会社(「会社」) 
命令年月日  平成24年8月1日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①平成19年度の給与改定に当たって組合の組合員Xの給与の額を据え置き昇給額を0円としたこと及び20年度の給与改定において同人の昇給額を2,000円としたこと、②上記①に関する事項等についての組合の団体交渉(「団交」)の申入れに対し回答済みなどと文書回答するのみで団交に応じなかったことが不当労働行為であるとして、救済が申し立てられた事件である。
2 初審東京都労委は、②の団交に応じなかったことは、不当労働行為に当たるとして、会社に対して、組合がXの労働条件等に関して団交を申し入れたときは、文書により回答するのみでなく、対面して協議する方式での団交に誠実に応ずべきとしたが、①については組合の申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、再審査を申し立てた。  
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 組合は、会社における賃金制度は年功序列的に運用されてきたものであるにもかかわらず、会社が組合員Xの昇給額を平成19年度に0円、20年度に2,000円としたことは、同人が組合員であることや、組合活動を理由として、同年代の従業員に比べ不当に低く抑えたものであると主張する。これに対し会社は、昇給は業績考課等を中心として決定されたものであり、Xが組合の組合員であること等を理由にして不利益な取扱いをしたものではないとしている。
2 会社における人事・賃金制度についてみると、会社は17年4月に新人事制度を導入し、会社における昇級・昇格は、過去1年間の評価期間において、職務遂行能力の伸長度が良好な者、あるいは業績成果及び勤務態度が良好な者に対して原則として年1回(6月1日付け)行うこととし、職能考課、業績考課の評価が劣る場合には、降格、降給を行うこともあるとしていた。
 そして、会社におけるXと同年代の従業員の実際の給与の額の改定状況についてみると、大きく昇給する者がいる一方で、昇給額が0円の者や降給となる者もおり、また、昇給額についても大きなバラツキがみられることに加え、少なくとも40歳を超えるころからは、年齢と職能等級の正の相関関係は希薄となっており、会社においては、賃金額が毎年勤続年数に応じて上昇していくという年功序列賃金制度は採られていないことが認められる。
3 また、組合員Xの19年度の昇給額を同年代の従業員との比較でみると、相当数の昇給者がいる一方で、昇給額が0円の者や、降給した者もおり、同人の昇給額が他の従業員に比べ殊更低く抑えられていたとはいえない。
 次に、Xに対する会社の評価理由についてみると、会社は、Xの19年度の昇給額を0円としたのは、同年度の評価期間中に、Xが会社の信用、名誉を傷つける内容のメールを社内の約50人の若手社員に向けて発信し、事業場の秩序を乱したことを挙げている。
 Xが発信したメールは、個人情報に属することがらを含むほか、事実に反したり、穏当を欠く表現が用いられ、しかも、同メールはXが過去に担当した研修講師という立場を利用して、受講生であった従業員に発信したものであったことから、会社が当該年度の考課において、低く評価したことは首肯できるところであり、19年度の給与改定に当たりXの昇給額を0円としたことは不合理な評価であったとはいえない。
 さらに、Xは組合に加入する以前の給与改定時においても、昇給額が0円であったことがあり、昇給額0円は同人にとって19年度において初めてというわけではない。
4 同様に、20年度のXの昇給額が2,000円であったことについてみると、同年度においても、Xと同世代の従業員のうち、降給した者や0円の者は相当数存在し、昇給した者についても、その昇給額を比較すれば、Xの昇給額は低いものとはいえず、昇給理由として挙げた理由も不合理とはいえない。
5 さらに、当時の会社における労使関係の状況についてみると、Xの組合加入後、会社は同人の懲戒処分や昇給額が0円であったこと等について組合との団交に応じ説明を行うなど、組合の存在を認め、相応の対応をしており、また、Xがそれ以外に特段の組合活動を行っていたことを示す証拠もないこと等から、会社がXの組合活動を嫌悪していたことを推認させる事実はない。
6 以上によれば、会社においては年功序列型賃金制度は採られておらず、Xと同年代の従業員について年功序列的な昇給・昇格は行われていない。こうした中、Xの19年度及び20年度の昇給の額が0円及び2,000円であったことについては、いずれの年度においても、会社が同人の昇給額を他の従業員に比べ殊更低く抑えていたとはいえず、また、Xに対する会社の評価も不合理とは認められない。加えて、会社がXが組合員であること及び同人の組合活動を嫌悪していたと認める事情もないことから、会社がXの19年度及び20年度の昇給額を0円及び2,000円としたことは、不当労働行為には該当しない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成20年(不)第86号 一救 平成22年8月24日
 
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