労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  GEヘルスケア・ジャパン 
事件番号  中労委平成22年(不再)第52号 
再審査申立人  東京管理職ユニオン(「組合」) 
再審査被申立人  GEヘルスケア・ジャパン株式会社(「会社」) 
命令年月日  平成24年6月20日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社が、①製造本部環境・安全衛生(「EHS」)室長であったXを平成20年1月1日付けで配置転換したこと(「本件配転」)、②本件配転等について行われた5回の団体交渉のうち、第3回団体交渉における会社の対応が誠実なものでなかったこと、第4回及び第5回団体交渉に至る過程において会社が団体交渉により解決すべき事項を明らかにするよう求めたことが不当労働行為に該当するとして救済申立てがあった事件である。
2 初審東京都労委は、本件配転は、Xの組合加入通知より前に決定されていたものであり、組合加入を理由とするものとは認められない等として、本件救済申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として、再審査を申し立てた。  
命令主文  本件再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  1 会社が、平成20年1月1日付けでXを配置転換したことは、労組法第7条第1号の不当労働行為に当たるか否か。
-本件配転が決定された時期は、Xの組合加入通知以前であった-
 Xは、18年にEHS室を本社全体を対象とした部門に移すことを提案し、会社が変更しないと決定しXに説明したにもかかわらず、これに納得せず、同じ主張を繰り返し、関係者や社長にこの件に関して上司の交代を求めるかのような内容のメールを送信した。また、EHS室の増員をめぐり、19年4月4日、上司から直接的な行動を控えるよう命じられていたにもかかわらず、上司に事前の相談もなく、関係者や社長に対し、増員要求をした。さらには、上司から本部長会に出席する必要はないと指示されたことに反発し、同年7月から2か月にわたって、会社の上層部等に自らの出席の必要性を訴えるメールを送信した。これらXの一連の言動は、管理職として組織運営の観点から許されないものであり、業務命令違反に類する言動があったと指摘されてもやむをえず、指揮命令系統を無視した不相当なものといわざるを得ない。
 このような中で、同年5月、会社がXの適性を観察した結果、EHS室長の適性を備えていないとし、同年7月18日、関係者間でXの交代を内容とするメールが送信され、同日、人事と組織について議論する会議(ミッドイヤー・セッションC)において、Xの異動が明らかにされ、同年8月15日、次年度の予算案を決定する会議(セッション2)において、Xの異動を前提に予算調整が行われたことが認められる。一方、会社がXの組合加入通知を受領して組合加入の事実を知ったのは、同年8月22日以降である。
 以上から、会社は、Xの組合加入通知前に、本件配転の意思決定をしていたことは明らかであり、本件配転はXの組合加入を理由として行われたものとは認められない。
2 ア 第3回団体交渉における会社の対応が誠実なものでなかったとして、労組法第7条第2号の不当労働行為に当たるか否か。
 会社がXをEHS室に置くことができないと判断したことには相応の理由があり、また、新たな人員によるEHS室の体制が固まって間もないことからすると、会社が第3回団体交渉を受諾するに当たって行った回答は、前職への復帰以外で希望する職務があれば検討するという趣旨であったとみることができる。加えて、会社は、EHS副室長を希望するという組合の提案に対して、交渉の席上で即座に拒絶するのではなく、一旦持ち帰って社内で検討した上で回答を行った経過からすると、結果的にEHS関連職務への復帰は困難であるとして組合の提案を受け入れなかったとしても、これをもって直ちに会社の対応が不誠実であったとまではいえない。
 また、組合は、会社の回答に対し、その後何らの要求も行っていないのであるから、交渉が1回で終了していることをもって不誠実であると解することもできない。
イ 第4回団体交渉及び第5回団体交渉に至る過程において会社が団体交渉により解決すべき事項を明らかにするよう求めたことは団体交渉を事実上拒むものであり、団体交渉の拒否に当たるか否か。
 第4回及び第5回団体交渉に至る過程において、申入れから実施までに2か月以上を要した理由は、あらかじめ団体交渉により解決すべき事項を明確にするようにとの会社の求めに対して、組合があくまで協議事項についての説明を求めたことから生じたものと認められる。また、第4回団体交渉に至る経緯をみると、会社は、組合からの申入れ等後、3日から遅くとも10日以内に回答を行っており、この点からも会社が団体交渉を故意に引き延したとはいえない。
 第4回団体交渉に至る過程において、組合は、漠然とした協議事項を挙げるのみで、協議事項ないし団体交渉により解決すべき事項を明らかにするようにとの会社の再三の求めに対して、具体的な説明を求めているとし、さらに、説明を求めるだけの団体交渉であっても会社がこれを拒否すれば不当労働行為に当たるなどと主張し、また、第5回団体交渉において、組合は会社が説明を行う度に派生的に質問を行い、これを繰り返したため、団体交渉が一向に進展しなかったことが認められる。
 このような特異な状況にあった本件においては、会社が、第4回団体交渉に至る過程において、組合に対して、団体交渉により解決すべき事項の明確化を要求したことには、無理からぬ事情があるということができる。また、組合が都労委にあっせん申請せざるを得なかったとの事情を考慮しても、第5回団体交渉に至る過程で会社が組合に団体交渉により解決すべき事項の明確化を要求したことについても、合理的な理由があったというべきであるから、これら2回の団体交渉に至る過程における会社の対応が不誠実なものとはいえず、正当な理由のない団体交渉の拒否には当たらない。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
東京都労委平成20年(不)第5号 棄却 平成22年8月3日