概要情報
事件名 |
GEヘルスケア・ジャパン |
事件番号 |
東京都労委平成20年(不)第5号
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申立人 |
東京管理職ユニオン |
被申立人 |
GEヘルスケア・ジャパン株式会社 |
命令年月日 |
平成22年 8月 3日 |
命令区分 |
棄却 |
重要度 |
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事件概要 |
申立外Xは被申立人会社のEHS室(製造本部環境・安全衛生室)室長兼スペシャリストとして勤務していたが、会社から「業務改善指摘項目」を交付され、60日間での業務改善を求められたことを契機に申立人組合に加入した。その後Xは、MRB(購入部品の検査、部品交換等を行う部門)の「トランザクションチームリーダー」に配置転換された。本件は、Xの配置転換が組合加入を理由とする不利益取扱いに当たるかを中心的争点とし、さらに会社の人事本部長の発言、Xの人事評価、評価・面談手続き、団交での会社の対応、Xに派遣社員の契約更新権限が付与されたこと、Xの座席が移動されたこと、がそれぞれ不当労働行為にあたるとして申し立てられた事件である。
東京都労委は申立てを棄却した。 |
命令主文 |
本件申立てを棄却する。 |
判断の要旨 |
1 Xの配置転換について
会社は、平成19年7月18日までにXをEHS室から異動させることを決定し、8月15日までに異動先をMRBとすることを決定していたことが認められる。一方、会社がXの組合加入を知ったのは8月22日以降と推認されるから、本件配置転換は、Xの組合加入を理由とする不利益取扱いにはあたらない。
2 Y1人事本部長の発言について
問題とされるY1の発言の状況をみると、XとY1の2名だけで話し合っているから、各人の主張を裏付ける的確な証拠はないところ、Y1の発言は組合が主張するとおりの威圧的発言をしたとまでは認められず、組合活動への支配介入にあたるとはいえない。
3 19年度EMS評価(人事評価)について
Xの19年度評価が前年度よりも低下した理由をXの組合加入に求めることはできず、会社がXを前年度より低く評価したことは、組合加入を理由とする不利益取扱い又は組合運営への支配介入に当たるとはいえない。
4 20年度EMS評価について
20年度評価における「ディベロプメント・ニーズ」の記載により、会社がXを差別的に取り扱ったとまで認めることはできないから、本件記載をもって、Xの組合加入を理由とする不利益取扱い又は組合運営への支配介入に当たるとはいえない。
5 19年度EMS評価の作成及びフィードバック面談の手続きについて
これらの手続きにおいて、Xが組合員であることによる差別的な取扱いは認められず、不当労働行為には当たらない。 6 20年度EMS評価フィードバック面談の手続きについて
(1)面談においてXは、Y2マテリアル部長からの「GEバリュー」の改善の必要があると思うかとの質問に対して「ノーコメント」と答えており、この回答についてY2が、Xは改善の必要がないと考えていると受け取ったとしてもやむを得ないところであり、この回答をもってフィードバックは終了したと考えたことは、組合員を差別した面談の打ち切りとはいえない。
また、Y2は、フィードバックが完了していないとのXの申出を受け、面談の再設定に同意している。もっとも、その後、Xが面談を忌避するなら面談は不要と判断するとの回答をしているが、これをもって組合員を差別した不利益取扱いとは認められない。
(2)会社は、Xの希望があれば追加面談を行う旨回答している。当該申出の趣旨は、仮に面談を設定することが組合の要求であれば、会社としては団交に応じるまでもなく再設定するとの意向を示したものと解することができる。しかし、これに組合が応じた様子はみられない。そうすると、組合が主張する事実が認められないから、不当労働行為を論ずる前提を欠く。
(3)人事マネジャーのY3が作成した議事録の内容がXの記憶と異なっているとしても、これをもってXが組合員であることによる不利益取扱い又は組合運営への支配介入に当たるとすることはできない。 7 第3回団交について
会社がXを配置転換するに至った経緯からすると、同人をEHS室に配置できないと判断したことには相応の理由があり、また、組合の提案を持ち帰って社内で検討しており、結果的に組合の要求を受け入れなかったとしても、これをもって直ちに会社の対応が不誠実であったとはいえない。また、組合は、会社の回答に対し、その後何らの要求も行っていないのであるから、交渉が1回で終了したことをもって不誠実であると解することもできない。
8 第4回及び第5回団交に至る経緯について
第4回及び第5回団交の実施に至る各過程で、会社が組合に要求事項の明確化を要求したことは、いずれも、正当な理由のない団交の拒否にはあたらない。
9 契約社員の契約更新権限について
人事マネジャーY3がオンサイトマネジャー(派遣元の会社内駐在人事担当者)に誤った情報を伝えたとの組合の主張は採用できず、本件が証拠ねつ造に当たるとの主張には理由がなく、不当労働行為を論ずる余地はない。
10 トランザクションチームの座席移動について
本件座席移動は業務上の必要性に基づくものであり、組合員の隔離を目的としたものとは認められないから、不利益取扱いにはあたらない。
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掲載文献 |
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