労働委員会命令データベース

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概要情報
事件名  灰孝小野田レミコン 
事件番号  中労委平成23年(不再)第20号・第26号 
再審査申立人  灰孝小野田レミコン株式会社(平成23年(不再)20号) 
再審査申立人  全日本建設交運一般労働組合関西支部(平成23年(不再)26号) 
再審査被申立人  全日本建設交運一般労働組合関西支部(平成23年(不再)20号) 
再審査被申立人  灰孝小野田レミコン株式会社(平成23年(不再)26号) 
命令年月日  平成24年5月16日 
命令区分  棄却 
重要度   
事件概要  1 本件は、会社の次の行為が不当労働行為であるとして、組合が滋賀県労委に救済申立てを行った事件である。
①平成21年度賃上げに関する団体交渉において、集団交渉(京都府及び滋賀県にある生コン製造会社と別組合らとの間において合同で実施される団体交渉)の妥結を待つという態度をとったこと。
②組合と平成20年7月16日付けで締結した覚書で定められた事前協議を行うことなく、平成21年8月31日に生コンミキサー車の台数を減らしたこと。
③組合員Xの退職後に採用されるべき正社員として、組合がその組合員を推薦したにもかかわらず、速やかに内定者の選定作業(以下「組合推薦による内定者選定作業」)に入らなかったこと、及び団体交渉において同作業に入らないことについての合理的な説明を行わなかったこと。
2 滋賀県労委は、②及び③は不当労働行為に当たるとして、これらの不当労働行為を行ったことの謝罪文の手交及び掲示を命じ、①については棄却する旨の命令書(「初審命令」)を交付した。これに対し、会社及び組合は、初審命令を不服として再審査を申し立てた。  
命令主文  (1) 初審命令主文第1項ないし第3項を次のとおり変更する。
1 文書手交及び掲示
(2) 本件各再審査申立てを棄却する。  
判断の要旨  (1) 平成21年度賃上げについて
ア ①会社と組合の間では、集団交渉が妥結してから、同じ内容で妥結し、当該年度の4月に遡って精算するという状態が数年来続いていたこと、②平成21年4月16日の団体交渉において、組合が、組合側要求額として会社に提示した額は5千円であったこと等の事情を踏まえれば、平成21年4月27日の団体交渉において、平成21年度賃上げ額を月額1万円とする労使間の合意があったとは認められない。なお、組合は、平成21年4月27日付け団体交渉議事録確認は、労働協約としての要式を満たしており、労働協約は有効に成立しているから、これに「2009年度賃上げについては、1万円で4月度より遡及、処理する」と記載されているとおり、1万円の賃上げについて合意したことは間違いない旨主張する。しかしながら、同日付け団体交渉議事録確認は、労働協約として相応の手続を踏んだ上で正式に締結されたものとは到底認め難く、賃上げに関する最終的な合意形成に至るまでの途中の経過について交渉出席者の間で確認したものとみるのが相当であって、労働協約としての法的な効果を認めることはできないから、組合の上記主張は採用できない。
イ 平成21年度賃上げについて、平成21年4月27日の団体交渉において合意があったとは認められないのであるから、合意を反故にしたとする組合の主張は前提を欠き、採用できない。他方、会社が、集団交渉での妥結を待つという態度をとったことは、例年こうした対応が続いており、会社の同対応が不合理であるとまではいえないのであるから、これが組合の運営に支配介入するものであったとは認められない。したがって、会社が平成21年度賃上げについて、例年どおり集団交渉の妥結を待つというという態度をとったことは、労働組合法第7条第3号に違反する支配介入の不当労働行為に当たるとはいえないし、また、そもそも会社が賃上げの合意を反故にしたことはなかったのであるから、その理由を説明しない会社の対応が不誠実であったと評価することはできないのであって、これが労働組合法第7条第2号に違反する不当労働行為に当たるともいえない。
(2) 生コンミキサー車の減車について
会社は、平成20年7月16日付け覚書に定められた事前協議を行わないまま、生コンミキサー車を2台減らしたものであり、これは、単に組合との労働協約に違反するのにとどまらず、従前からの労使間の運営を無視し、組合の活動を阻害するものであり、かつ、組合の日々雇用従業員の就労機会を減少させ、組合組織の弱体化を招きかねないものであるから、労働組合法第7条第3号に違反する支配介入の不当労働行為に当たるというべきである。
(3) 組合員X退職後の従業員採用について
ア 組合員Xが退職した後の従業員の補充は、組合の日々雇用従業員から行われることが、協約により基本的に求められていた中にあって、平成21年5月15日及び同年6月2日の団体交渉では、同協約の合意内容に沿って、組合の組合員から補充する方向での話合いが進展してきていたと認められる。なお、同年7月29日の団体交渉においては、組合員X退職後の補充を組合員から行うことを会社が否定したことがうかがえるが、同年5月15日の時点では、組合推薦の労働者を採用しない積極的な事情があったとも認められない。以上の次第であるから、同年5月15日の団体交渉において、組合員Xの退職後の補充として、組合推薦の労働者を採用する方向での一定の合意が形成されてきていたとみるのが相当である。
イ 平成21年5月15日の団体交渉において、組合員Xの退職後、組合推薦の労働者を採用する方向での一定の合意が形成されてきていたにもかかわらず、会社は、その後の団体交渉において、これをないがしろにして、内定者選定作業に入ろうとしなかったものであり、かつ、会社は内定者選定作業に入らないことにより、組合員Xの退職後、組合員が3名から2名に減少し、組合組織の弱体化を招くことを容易に認識し得たのであるから、会社が内定者選作業に入らなかったことは、労働組合法第7条第3号に違反する支配介入の不当労働行為に当たるといわざるを得ない。
ウ 会社は、内定者選定作業に入らない理由を説明したとは認められず、会社が同作業をめぐる協議に誠実に応じる姿勢を見せていたとはいい難いから、かかる会社の対応は、労働組合法第7条第2号に違反する不誠実な団体交渉に当たるというべきである。  
掲載文献   

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顛末情報
事件番号/行訴番号 命令区分/判決区分 命令年月日/判決年月日
滋労委平成21年(不)第5号 一部救済 平成23年3月14日
 
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